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初めての転職ついでに人生観まで決まった

私にとって初めての転職は、仕事以上に人生観を決める体験になりました。むしろ、人生観を決めた結果、転職に至ったと言うべきかもしれません。この「決め」が今の自分にとって一番の財産になっていると感じます。

今回の投稿企画「#転職体験記」の読者の方には、今新しい環境に一歩踏み出そうとされている方が多いと思います。私が転職にどのような意味づけをしたのか振り返る中で、読者の方へも何かしらに思いを馳せるキッカケになったら嬉しいです。


仕事以上に人生観を決める体験

私は新卒入社したIT系企業で、アカウント営業という職種に就いていました。担当のお客様は大口の得意先1社のみ。自社製品を持たず他社の商材を代理販売する業態です。顧客をよく知りニーズを満たす商材を見つけてくる、営業というよりパートナーのような立ち位置でした。

そんな中、私が転職をぼんやりと考え始めたのは27歳の頃。当時、お客様からの評価や成長実感もあってやりがいを感じていましたし、何をどう頑張ればステップアップできるのかも見通せてきました。

一方、それはあくまで自社の中でのものであり、本質的な成長ではないのではという迷いもありました。明確に「これをやりたい」というものはないけど、今後のキャリアに違和感だけは確かにあったのです。

「ありたい自分」が決まった

そんな中、『転職の思考法』という一冊がキッカケで、私の考えは解像度を上げます。

本書で特に印象に残ったのは以下の内容でした。

  • 世の中の大多数の人は、夢や人生の目標に繋がるような「心から好きなこと」ではなく、ずっとやってても苦にならないような「ある程度好きなこと」を持っている。

  • 「何をするか」「何をしたいか」で迷うなら、「どんな人でありたいか」「どんな状態でいたいか」を考えよう。

  • その考え方はいたって普通なことであり、妥協でもなんでもない。ただ、そういう価値観というだけ。

「やりたいこと」でなく「ありたい自分」を考える。この考え方は、私がキャリアを考える上で大きなヒントをくれました。やりたいことが直ぐに思い浮かばずとも、目指したい自己像は描けたのです。もしかしたら、それまでは見栄えのするキャリア像を描こうと背伸びしていたのかもしれません。

そこから私は、「ありたい自分」像として以下を設定しました。

自分自身が心から意義を感じていることを言動に表し続けており、そこには他者への敬意と理屈がある。そんな信念を持ち続ける、カッコいい人物であり続ける。

詳細な経緯は別の機会にしますが、幼少期からの様々な体験や、良いなと思った人の話や本からの学びが混ざり合い、この表現に落ち着きました。その中でも、以下の書籍からは、かなり大きく影響を受けています。

そして、この価値観を忘れずに持ち続けたいと思い、「ありたい自分」像を目指し続けることを「誠を表す」というキャッチコピーに落とし込みました。「心から意義を感じていること」が「誠」です。圧倒的に自己満足ですが、短いフレーズにしたことで自分で振り返りしやすくなりました。

さて、差しあたっての私の「誠を表す」は、「営業として自分の言葉で自社のプロダクトを提案し、顧客に価値を感じてもらうこと」でした。当時代理販売に従事していた私は、自社プロダクトを提案する仕事がしたかったのです。

そうした経緯もあって、私は、とあるSaaS企業へ転職するに至ります。プロダクト一つだけの飾り気なく実直な感じが、直感的に自分の肌に合いそうだと感じたのです。前職での営業活動は、社内のエンジニアや製品メーカーの支援なしには成り立ちませんでしたが、現職では自分がどう提案するかの創意工夫の余地がとても大きく、望んだ通りの仕事ができていると感じました。

「生きる態度」が決まった

上記が私の初めての転職です。ここで出会った「ありたい自分」という発想は、私にとってもう一つの側面でも助けになりました。というのも、初めての転職で、手放すことで自分の人生に覚悟を決める体験ができたのです。

前職では自分の居場所はあったし、一定の評価や期待も頂いてました。でも、必ずしも手放す必要のなかったそれらを、自ら手放したのです。

また、今回の転職は、同じ営業職といっても前職との差分が大きく、これまでの経験を活かしにくい挑戦でした。私自身、採用に携わらせて頂いて実感したのですが、当時の私の経歴は採用に相当慎重になるべきものでした。実際、キャリアアドバイザーの方からも、オファー面談の場で上司となる方からも「本当に大丈夫ですか?」と問われました。当時の私に門戸が開かれたのは本当に幸運だったと思います。

つまりこの転職は、客観的に見て分が悪い、どう転んでも100%自分のせいだと明確に思える決断だったのです。だからこそ、そこに覚悟が生まれました。それが世間的な成功になるかはわからないけども、わかった上でやるんだと。

このことを通して、自分が決めた「ありたい自分」に向き合い続けられているかが、私にとって重要な価値基準になりました。この考え方は、『嫌われる勇気』を読んで、確信に近いものとなります。

世の中には「人生には立派な目標や成し遂げるべき何かが必要であり、そこに向かうことこそ人生」という考え方があります。別におかしくはないですよね。しかし、本書では、そういった考え方は、そこに至るまでの人生を「途上・道半ば・不完全」なものにしてしまう、と指摘しています。

この視点は、キャリアを考えるときにも役に立ちます。私たちの多くは、スキルや給与アップ、望む仕事や役割を担うために、毎日に力を尽くします。ですが、それらはあくまで結果でありコントロールはできない。全力で取り組んだ結果、当初目指していた場所にたどり着かないこともある。その場合、それまでの人生は失敗なのか。目標を達成するまでの人生は仮のものでしかないのか。そんなことはないですよね。

アドラーによれば、人生は目的地があってそこに到達することがゴール…といった「線」のようなものではなく、「いま、この瞬間」という小さな「点」の連続であるとしています。その一瞬一瞬が人生であり、そのときの自分がどうであったかが大切なのです。だとしたら、人生の価値基準は「何を得るか」「何をやるか」ではなく「自分がどうあるか」におくべきだと。「決め」の問題だと。ここが私の中で、心から腹落ちしたのです。

それ以降、私はキャリアとは人の生き様のようなものだと捉えています。自分自身まだまだ未熟ですが、「ありたい自分」を忘れずに毎日に向き合いたいと心底思います。

生き方に腹を括って復活力が上がった

転職してからの私はというと、信念を胸に急成長、、、というシンデレラストーリーとはなりませんでした。その後も、順当に失敗を経験し、右往左往し、三歩進んで二歩下がるの繰り返しです。

ですが、自分が何のために仕事をしているのかは見失わなくなりました。苦しい時も、思い通りにならないことに執着するのではなく、「ありたい自分」に立ち戻れるのです。自分に対する信仰のようなものです。

フラッシュバックする決意の瞬間

転職活動中のことは、今でもはっきり思い出せます。面接を受けに、緊張してオフィスの階段を昇ったあの感覚。オファー面談で覚悟を問われたときの感覚。転職活動当時、大好きな「Verge」という曲をヘビロテしてました。

「Verge」とは「端、淵、境界線」という意味です。「out on the verge」という歌詞の通り、この曲は今いる世界から思い切って境界線を飛び出す人たちの希望と情熱を歌っています。PVでは、それぞれの進路へ羽ばたく前夜の大学生たちが描かれていますね。

この曲を聴きながら出社すると、当時の感覚がフラッシュバックします。コロナ禍で出社できなかった時期があったのも大きかったと思います。今も私の会社はリモートメインですが、あるとき私のパフォーマンスが明らかに落ちていたころ、上司に言われました。

○○さんは、なんでこの会社に来たんだっけ?
出社も解禁されたし、気分転換にオフィスにでも行ってみたら?

説教するでもなく、ただ問いかけてくれた、当時の上司に感謝!

この言葉を受けて、騙されたと思って出社してみました。「Verge」を聴きながら。そしたら、これがぶっ刺さったんですね。思い出したんです。「ありたい自分」に近づくために、腹を括ったじゃないかと。実現したいことも、それに伴う苦しみも、すべては自分で選んだこと。それなのに何を被害者面をしているんだと。

信仰を高める場所としてのオフィス

それ以来、私にとってオフィスは、教会や寺、モスクのような場所になりました。習慣的に足を運び、信仰を高める場所です。

信仰とは何に対するものか?

会社に対する忠誠心とかそんなんじゃない。

他でもなく、自分に対する信仰です。

私にとって転職は、「ありたい自分」があって、そこに向かい続けるための決断だったんです。新しい挑戦だから苦しいこともあって当たり前。というより、苦しいことばっかりだった。

でも、今も続けている。「ありたい自分」に近づけると思っているから。

他にもっと望ましい選択肢が出てきたら環境を変えると思う。

でも、今は続けている。自分が決めた今のベストな選択肢なのだから。

オフィス出社の、それを思い出せる感覚が好きなんです。
特によく晴れた朝、人のいない静かなオフィスは最高ですね。

挑戦する全ての人たちに自分を信じる勇気を

私が転職してから4年以上経ちました。現職での様々な経験を通して、私の「心から意義を感じていること=誠」にもアップデートがあります。それを日々の行動に落とし込もうと努力することで、自分なりに人生において仕事に時間を注ぐ意義を見出しています。「ありたい自分」に近づくために一瞬一瞬に誠実に向き合いたいと思います。

今回の投稿で私がお伝えしたかったのは、転職が自分の人生観を決める体験になったということでした。

改めて、ハッシュタグ「#転職体験記」をご覧の皆さんは、新しい一歩を踏み出すタイミングの方が多いのではないかと思います。最後に、皆さんへ「Verge」の歌詞から私が大好きな一節を引用して終わります。

From now on
(これからは)
There's no looking back
(振り返りはしない)
Full steam ahead
(全速力で行くんだ)
On this one way track
(この一本道を)
From this day forward
(今日からは)
I will make promise
(約束するよ)
To be true to myself
(自分に嘘をつかず)
And always be honest
(常に誠実でいるんだって)
For the rest of my life
(この先の人生)
I will do what's right
(正しいことをするんだ)
I will do what's right
(正しいことを)
When I step out on the verge
(飛び出すんだ)

Owl City ft. Aloe Blacc / Verge

新しい環境に一歩踏み出す全ての人へ。

自分を信じる勇気があり続けますように。

ではまた!

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