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「2023年1月の珈琲 Kenya:鱗がはねる」

海ではねたサカナの鱗のように、透明なまろやかさがきらりとはねた。

Kenya:鱗がはねる
手すりに寄りかかり
そっと、まぶたを閉じた
間隔が狭まる振動にあわせて
まぶたの裏を光がはねる
あれは鱗
海ではねたサカナの鱗だ
透明なまろやかさがきらりとはねる

Kenyaを口にした瞬間、光がきらりとはねたことを感じた。

これは、あれだ。
電車のなかで見たサカナの鱗だ。

都会で用事を済ませ、帰りの電車に飛び乗った。

ボリュームのあるダウンジャケットを着た男性と買い物袋を抱えた女性の間に空席を見つけ、疲れた体を滑り込ませる。

身体の両側からぎゅうっと締めつけられる感覚を覚えた。

一駅が過ぎ、二駅目を迎えようとしたところで、その窮屈さに耐えきれなくなって、席を立ち、ドアの手すりをつかんだ。

電車の揺れと心地よい温度の空調が相まって、まぶたが勝手に閉じる。

立っていることを忘れそうになりながら、手すりに寄りかかった。

三駅目に向かう電車は速度を増していき、振動の間隔は狭まっていった。

きらり、きらり。

閉じたまぶたの裏に、光が現れては去っていく。
重いまぶたを開いて、その光を探した。

きらり、きらり。

線路沿いの家の窓が、夕日に照らされ、光っていた。

きらり、きらり。

鱗のようだと思った。

あれは、海ではねたサカナの鱗。

1月の珈琲Kenyaのまろやかさにきらりと光る酸味は、まさしく、電車のなかで見たサカナの鱗だった。

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