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「4月の珈琲 Tanzania:かくれんぼの続き」

かくれるのは得意だった。

Tanzania:かくれんぼの続き
もういいかい まあだだよ
もういいかい もういいよ
思いやりからはじまる
追う者と追われる者のかけひき
見つからないように隠れるけれど
見つからないとおわりはこない
これからも続くコクと酸味

雨の日。

校舎の3階の一角にある柱の前で、10から1まで数えおわったオニが言った。
もういいかい?

かくれる場所を懸命に探しながら、わたしたちは答えた。
まぁだだよ。

少し経って、オニがまた問うた。
もういいいかい?

それに対して、誰かが答えた。
もういいよ。

廊下にななめに立てかけられた折りたたみ机の隙間に隠れながら、わたしも答えた。
もういいよ。

ここに隠れているなんて、誰も思わない。
そんな場所を見つけて、かくれるのが得意だった。

ひとりふたりと、オニが誰かを見つけては、柱にタッチし、かくれている人がどんどん減っていく。

まだ、見つからない。

折りたたみ机の隙間で息をひそめながら、オニが柱から遠ざかる瞬間を待った。

まだ、見つからない。

そうこうしているうちに、昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴った。

ゲームオーバー。

机の隙間から姿をあらわした私に、みんなが驚いたのがわかった。

誰かをあっと言わせたくて、見つからないようにかくれるかくれんぼ。
見つかってはいけないけれど、オニに見つかるか柱をタッチしないとおわらないかくれんぼ。

雨の日の校舎の3階で、友達と熱中したかくれんぼは、大人になった今も続いている。

4月の珈琲Tanzania:かくれんぼの続きが、コクと酸味の余韻を残し続けるように。

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