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「モンクバッグ(monk bag)」製作日誌:ウッドリング編03-木育って?

みなさまこんにちは、イトウでございます。

本日は、モンクバッグ(monk bag)に使用するウッドリングの製作でお世話になった木育カンパニー酒井産業株式会社さんのご紹介後編となります。

前回触れた「木育(もくいく)」についてお送りしてまいりますね。


▼木づかい運動

木育についてご説明させていただく前に、まず「木づかい運動」についてお話させてください。
お察しの通り、木を使っていこう!という活動です。

その背景にあるのは、地球温暖化の問題でした。
1997年に結ばれた京都議定書で、日本はCO2 の排出量を-6%とすることを目標に掲げ、-3.9%は森林の吸収能力からの削減を目標にしていました。

そのために、重要なのは間伐です。
木にCO2を吸ってもらいたいのに切ってしまうの?
そんな疑問が湧いてきますよね。

実は、無間伐の森林と、間伐した森林、
長期的にみたとき間伐した森林の方が二酸化炭素の吸収量は増えると言われています。

それは間伐した方が、残された木がよく成長するから。
間伐された木の分を差し引いても、残りの木を成長させたほうがCO2を吸収してくれるとは、これは目から鱗でした。


しかし、間伐した材はそのまま放置すると朽ち果てて二酸化炭素として放出されてしまいます。ですので、”間伐材を活用する”ということが非常に重要です。


必ずしも、木を切る=悪ということではないんです。
二酸化炭素を吸収してくれるだけでなく、ウッドリング編01でもお話した通り、適切な間伐は森林を自然災害に強い土壌にしてくれ、森に光が差し込むことで多様な生態系を生み出し、健康な土壌は水の源として川や海にも栄養を与えてくれます。

「伐って、使って、植えて、育てる」
森のサイクルを整えて、その上で上手に活用していくために
木材を使用していくことの後押しとして木づかい運動は展開されています。

この気づかい運動の一環としてはじまったのが「木育」です。


▼木育って?

木育とは
世代を問わず木材に親しみ、木の文化への理解を深めるために、森林の役割や木の魅力、木材を利用することの意義を学ぶことです。
(酒井産業株式会社 HPより)

具体的な内容としては3つのステップに分けられます。

Step1木材に「触れ、感じる」
木製玩具での遊び、木で囲まれた環境での遊び、生活用品での木製品の利用等、五感を通じた楽しい活動を経験する

Step2 木材を用いて「創り、楽しみ、学ぶ」
木工、彫刻、積み木等ものを創ることを経験する

Step3 木材と環境について「知り、理解し、行動する」
木材と環境の関係について、科学的な知見を基にした知識を習得する
(木育.jpより)



この木育の取り組みを林野庁で推進することになった際に
木のおもちゃの生産供給日本一を誇る酒井産業さんのもとに声がかかりました。
そして、先々代の社長がオブザーバーとして参加し木育のはじまりから携わってきた酒井産業さん。

特に、スギやヒノキに含まれる木の香りは刺激の強い香りでもあるので、
七歳ごろまでの、楽しい体験が重要らしいのです。
この木の香り×楽しい経験というのがないと、大人になっても木の香りを心地よいものとして感じることができません。

そこで、まず身近に子供たちに木を感じてもらうため、
酒井産業さんでは遊具や施設の木質化に力を入れています。


ここで酒井産業さんのオリジナルブランドの一部をご紹介させていただきますね。

「buchi」

「本当にいいものをこども達に届けたい。」という思いから、良質で長く楽しめるおもちゃとして誕生したのがbuchi。

プロダクトデザインは無印良品の「体にフィットするソファ」等々、著名な作品を手掛けてきた柴田文江氏によるもの。
縁のカラーリングがなんともかわいらしく、お子さんがおもちゃを卒業してもインテリアとして飾っておきたくなるデザインです。

もちろん、国内の職人技を感じさせる丁寧なつくりは、
日本国内の150の工房とのかかわりをもつ酒井産業さんならではの作品であるとこを感じさせます。


その他にも、カラマツの集成材を使用した家具ブランドの
「LAYERED WOOD」



丸みのあるフォルムのかわいらしい
「木具-mokugu-」


などなど、日常にスタイリッシュに木のものを取り入れられるようなものづくりも行ってらっしゃいます。

▼塩尻と木育

酒井産業さんのある塩尻市。
ここでは、市を挙げて木育に力を入れて取り組んでいます。

そのきっかけになったのは、酒井産業さんの先々代の社長でした。
木育とは何ぞやということが認知される前から、その重要性を訴えてきたことが後に、木育フェスティバル、塩尻市のウッドスタート宣言に繋がります。

2011年にはじまった「木育フェスティバルinしおじり」は、木に触れて、学んで楽しめるイベントです。
過去の企画を見てみたら、漆の展示や、マイはしつくり、マイそろばんづくりなどなど興味をそそられるものばかり!

私も小学生低学年の時に、自治体のDIY体験で木のプランターを作ったのをよく覚えています。親をひやひやさせながらも、自分で木を切ったり削ったりした達成感はひとしおで今でも記憶に残っています。
きっと塩尻の木育フェスティバルでも、こんな風に子供たちにとってかけがえのない体験になっているのかな、とあたたかい気持ちになりました。

更に、2015年には塩尻市は「ウッドスタート宣言」をし、
その活動の一部として新生児に木のおもちゃをプレゼントしています。

このような取り組みのほかにも、塩尻市の一部の学校の給食には漆器が使われていたり…

無意識に、でも自然に木のものがそこにある暮らし。
それが、作り手を支え、森も、生き物も、海も潤していく
そんな風に綺麗な循環のサイクルが再び描けたらいいなと思います。

「自然のぬくもりをくらしの中に」
という軸はぶらさず、時代時代に合わせて何ができるかということに向き合い続けてきた酒井産業さん。

木工品という一つのかたちを超えて、その向こうにある森林やその関わり方について考えるきっかけを与えてくださいました。



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