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「モンクバッグ(monk bag)」製作日誌:ウッドリング編02-木と生活と

こんにちは、イトウでございます。
今回はウッドリング編Part2として木育カンパニー酒井産業株式会社さんについてお送りしてまいります!

▼是より木曽路

千曲市から乗った高速道路を下り、国道19号線をひた走ると
「是より南 木曽路」の看板と石碑が見えてきます。

京と江戸を繋ぐ街道で、太平洋側を通るルートだった東海道に対して
内陸経由の中山道は木曽を通ることから「木曽路」とも呼ばれ古くから交通の要所として栄えました。

そんな木曽路を暫く走ったところに酒井産業さんがあります。

ウッドリング編01でもお話した通り、
木のリングをカバンに使用したいと思った私たちは
木のことなら木曽の方面に違いない!と
塩尻市の南部、木曽路にある酒井産業さんに相談をすることに。

「木でつり革の輪っかのようなものを作っていただけないでしょうか?」
という突然のお願いでしたが、私たちco:doの考え方や目指す部分に共感いただき快くお引き受けいただくことができました。

針葉樹と広葉樹という基本的なワードさえ社会科の授業で聞いて久しいレベルだった私ですが、今回酒井産業さんにお邪魔して木曽のことや会社の歴史など教えていただいたことをお話してまいりますね。

ウッドリングの製作手配はもちろん木のこと、森のことを教えていただいた酒井産業さんにはこの場をお借りして改めて感謝申し上げます。

▼水の分かれ道 大分水嶺

大分水嶺(だいぶんすいれい)という言葉をご存じですか?
登山に親しい方であれば聞いたことがあるかもしれません。

文字通り、水を分かつ嶺。
雨水や雪解け水が、異なる方向に流れ出す境界のことを指します。

そんな分水嶺が木曽と塩尻の間にかかる鳥居峠にあるそうなんです。
片方は、木曽川として太平洋に流れ出し、
もう一方は、最終的には信濃川として日本海に流れ出ます。

昔から、峠の南側はその地形や気候から特に木材の育成に適していて、
木曽川の川の流れを利用して切り出してきた大きな材木を運搬することができました。

しかし北側に大きな材木を運ぶには、峠を越える必要があります。
昔は車なんてない時代ですから、人力でも馬で引くにしてもこれは大変な仕事です。

そこで、北側には漆塗りをした櫛やかんざしなど、持ち運びに簡単でより付加価値をつけた木工品が運ばれることになりました。
人の往来のある土地柄、お土産品としてそれはよく売れたんだそうです。
(私も江戸時代の女子だったら買ってしまうなあ、、)

同じ木曽地域でもこのような背景から峠を境に、特色ある産業が栄えてきたんですね。

ルーツをたどれば江戸時代に木曽福島ではじまったとされる漆器の文化も、伝統工芸士を多数要する産地として現在までその歴史を紡ぎ続けています。

▼木育カンパニー酒井産業株式会社さん

そんな水の通れを分かつ峠の北側に位置する酒井産業さん。
会社のドアを開けるとマスク越しにも木のいい香りが。
社内にあるショールームにはおもちゃや日用品などたくさんの木工製品が並んでいます。

-漆塗りの工程の展示-



01)酒井産業さんいまむかし

その創業は今から86年前の1935年。
漆器に始まり、現在では時代に合わせた生活用品を手掛けている三代続く産地問屋さんです。
「自然のぬくもりをくらしの中に」を社是に掲げ、木、竹、籐製のおもちゃや日用品を扱っていらっしゃいます。
生協でも販売されているので、知らず知らずのうちに酒井産業さんの商品を目にしたことのある方も多いかもしれません。

お店に行けば海外製の安価な木製品に溢れているこの頃ですが、
そこは森林大国日本、材料・加工をとっても古くから続く産業の担い手さんが大勢いらっしゃいます。

そんな作り手の方々をこの先の未来に繋いでいくために、酒井産業さんでは国産にこだわったものづくりを行っているんです。

国産って安心だけど、値が張るという印象を持たれている方も多いのではないでしょうか?

酒井産業さんでは、良いものでも値段が高すぎれば家庭で使ってはもらえない。という考えから、多様化するニーズに応えられるよう、全国150の提携工場を産地や設備などによって使い分けながら適正価格の商品を日々送り出しています。
地域の特性や設備を理解、吟味し見極めるプロの目線があるから、私たちの食卓や生活にぬくもりある器や雑貨が届いているんですね。

酒井産業さんの商品はオンラインでもご覧いただけますよ。
おもちゃから日用品も取り扱っているのでもう見だしたら止まりません。

02)いま、これから

ウッドリング序章でお話した通り、国内の木材自給率は近年上昇傾向にあるといえどもまだまだ低いというのが現状。

国内の需要の縮小は、作り手の減少につながるだけでなく
物を作っていくための材料不足の問題も抱えているんだそうです。

あれ、木を使っていないならたくさん余っていそうな気がしますよね?
ふと見る山にも木はたくさん生えているような気が…

しかし、ここで重要なのは連動して循環していく、ということ。


生活用品などの小さな木製品を作るには「がわた」という部分を使用するそうです。このがわた、というのは木の幹の中心を柱用に四角く切り出した周辺にあるかまぼこのような形のパーツを指します。

今問題になっているのはこのがわたが手に入りにくくなっていること。
少子化に伴い建築需要も減り、国産の木材の使用も少ない今、柱の生産が減少したことで、この「がわた」という原料がまわってこなくなっているそうです。
がわたが欲しいからといって、使う予定のない柱を切り出すというわけにもいきません。

以前は、必要だから柱をつくる。
建材には小さくて利用できない周囲のがわたを上手に雑貨等の生産に活用する。
余すところなく上手に活用、循環していた一本の木。

その流れの中で何かが変わってしまうと、
私たち消費者には思いもよらない部分にも影響がでています。


「安さ」だけにとらわれず、私たちの選択が引き起こすその先の影響について目を向けていかないとなと考えさせられます。

木のない生活ってあまりにも無機質で寂しいと私は思います。

そしてさらに、私たちだけに留まらずこの先を担う子供たちにも木のぬくもりや楽しさを感じてもらうことも大切です。
酒井産業さんでは子供たちに向けて木育(もくいく)にも力を入れて取り組んでいらっしゃいます。

木育ってなに?どんなことをするの?
このことについては、詳しくはまた次回お送り致しますね。

それでは、

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