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Tokyoという片隅で - 大学の同期が入籍した日に思ったこと

大学の同期が先日、入籍した。

仕事から帰ってきて晩ご飯を食べて、好きなアーティストのMVを聞きながらお風呂に入って、SNSで漁った口コミを頼りに購入した化粧品で入念にスキンケアをして髪の毛を乾かして、さあ明日も仕事だから寝るか・・と思っていた時だった。

ピコン、とLINEの新規メッセージを知らせる通知が鳴る音がして。通知画面に浮き出た文字を見て、目を見開いた。

「先日、入籍しました!突然の報告でごめんね」

送られた宛先は大学同期のトークグループで、すぐに他の同期からお祝いの言葉のメッセージが送られた。ピコンピコン。その度わたしのスマホから音が鳴った。「わたしもお祝いしなきゃ、」と思ったがメッセージを送る気持ちになれなかった。置いて行かれた気分がした。

彼女は1年ほど前にマッチングアプリで出会った男性とお付き合いをはじめていた。それは2月くらいに食事をした際に聞かされていた。付き合っているんだから、入籍することは別に想像できないことではなかった。彼との進展を逐一報告してほしかったわけでもないし、婚約したことを教えてほしかったわけでもなくて。ただただ、置いて行かれた気がした。ただそれだけだった。

彼女と足並みを揃えて生きていこうね、と約束したわけじゃない。ただ、同じ年に生まれて、同じ性別で、同じ大学・学部に入って、4年間勉学を共にし、時には一緒に泣いたり、笑ったり、どこかに出かけたりしただけなのに。わたしと彼女の違うところはどこだろう、と考えてみたけど言葉には出来ないな、と思った。もう出会ってから10年近く経つのにそこまで深く何かを話したことがなかったと気づいた。きっと機械があれば話してくれていただろうけど、わたしが腹を割って話せていなかったかもと気づいた。

わたしは他人に自分のことを明かすのが得意じゃない。恋愛をするときも、困ったことがあったときも、一人で抱え込むことが多くて。そういう生き方を今までずっとしてきて、どうやって話せばいいか正直良くわからないし、そうやって心の内を明かすことがちょっとだけ怖い。幻滅されたらどうしよう、嫌われたらどうしよう。そんな恐怖から逃げて来たら、こんなところまで来てしまった。わたしと彼女は生きてる世界が違う、そうも思える。

もうすぐ30歳、そんな年齢になって。大学の同期は結婚して、家族や会社の上司からは「結婚の予定は?」「彼氏はいないの?」と聞かれて。その度にへらへらしながらやんわり答えて流したりして。いろんな本やブログ、SNSを見てひとりで生きていくのもありだな、って思ったりもしている。

でも、正直に、正直に言うと入籍した彼女がうらやましかった。

愛してくれる人がして、愛する人がいて。何かあったら心配してくれて、生活を共にして、困ったことがあれば助け合って。「ひとりじゃない」という事実が、現実がとても羨ましいと思った。わたしも、そうなりたいと思った。悲しいことがあったら抱きしめあって、嬉しいことがあったら一緒に喜ぶ、誰かが隣にいる生活をわたしも送りたい。

そう思ってから、そんな生活が送れるように自炊する機会を増やしてみたりこまめに家事をこなすようにしてみたり、来るのかもわからない未来に備えて行動するようになった。あまりに出会いのない人生なので、マッチングアプリに登録してみようかな、とか社内にはどんな人がいたかな、と考えるようになった。

大学の同期が入籍して、少しだけ前向きになったかもしれない。ほんの少しだけだけど、相手を探すためにマッチングアプリに登録する人の気持ちがわかる気がする。今までは理解しようなんて思いもしてなくて。数年前の自分に言ったらビックリされちゃうかもしれないけど。

いつか、入籍した同期宛てにLINEのメッセージで送った言葉を、わたしももらえる日がくるかもしれない、そう思いながら。6.5畳の狭い部屋の片隅で今日もわたしは生きている。

入籍おめでとう!

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