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若い世代こそ、社会保障政策に関心を向けよう

選挙が近づいてきました。自分も含めて若い世代には、「ボリュームの多い高齢者の意見が通るしな」と消極的になりがちです。

とはいえ、誰に投票すべきか考えることは、「国」に興味がなくても大事なことだと思います。深く(SNSで流れたものを見てイラつくといった反射的なものではなく)考えることで自分のスタンスが明確化すると考えるからです。

今回は多くの論点があります。コロナ関連、選択的夫婦別姓、子ども庁、デジタル改革、入管問題をはじめとする移民難民問題などでしょうか。
いずれも重要です。

そこにもうひとつ、ポイントを加えることを提案します。
特に若い世代にとっては重要だと思います。それは、「社会保障」です。

ちなみに、以下において社会保障はコロナ関連を含めておりません。



なぜいま社会保障なのか


コロナ関係で、歳出(国の支出)は増大しています。もともと財政が健全とは言えない状態です。コロナが落ちていてきたタイミングで、ほぼ必ず穴埋めの動きが出てくると思います。
具体的には、増税・歳出抑制です。
税にもたくさんの種類があり、どれを財源として考えるのかも重要です。しかし、今回強調したいのは、後者の歳出抑制の方です。

歳出の中で、社会保障は1/4強を占める最大のボリュームゾーンです。しかも少子高齢化に目処が立っていない(あまり対処するつもりがないようにすら思える)現状では、医療介護費は増大すると思われ、結果として現行のままであれば、社会保障費はしばらく増加すると思われます。

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なお、社会保障関係費全体のグラフでは現れないですが、医療・年金・介護・少子化対策費は増額傾向である一方で、それ以外の項目は年によって増減しています。



手をつけやすい社会保障費


国としては、何としででも増やしたくない、なんなら減らしたいと考えても不思議ではありません。なんせ割合が最大です。(自分ならどれを削るか考えるのも面白いですよね。地方交付金って減らせるのか、減らしたとして都道府県の議員選挙に影響が出るのか。今の世界情勢で防衛費は、などなど)

高齢者の医療費負担割合や介護費は、選挙のボリュームゾーンを刺激するので避けると思います。一方で、高齢者向けではないものなら手をつけやすいでしょう。
実際に、増税は政権へのダメージを覚悟するほど反発が出ますが、支出削減はあまり話題になりません。

そしてもう一つ手をつけやすいと思う理由は、効果が出るのが遅いからです。例えば、コロナ対策は比較的早く結果が出ますよね。
社会保障関連は結果が見えるまで年の単位がかかります。その頃には忘れてますし、他の要因も影響するので、「政策のせいではない!」と誤魔化すのも容易です。



社会保障は生活に大きく関わる


自分は経済の専門家ではなく、公衆衛生関連の分析ができるわけでもありません。
故に、ここからはこちらの本を参考に記述しました。


この本によると、社会保障費を減らすと人命が失われます。
過去の経済危機の際に財政支出を抑制した国と増大させた国に分かれた、という自然実験を用いて分析した結果です。

医療費や公衆衛生関連費、失業補償などを抑制すると、有意に経済状況が悪化し、アルコールや違法ドラッグの使用が増え、自殺率が増加します。アルコールやストレスに関係した疾患が増え、自殺と病気により死亡者が増加します。
この傾向は、特に生産年齢人口、そしてより若い世代で顕著だったようです。


「とはいえ、財政難だから減らさざるを得ない。破綻したらより悲惨になるのでは?」と感じないでしょうか。

その判断の基準として、「政府支出乗数」という概念があります。これは、政府支出がどれだけのGDPを生むかという比率です。1より大きいほど、支出を上回るGDPを生み出すことを示します。逆に1より小さければ、支出がGDPに結びつかないことを意味します。

あくまでアイルランドにおける計算ですが、教育や保健医療分野が最も高く、3を超えていたそうです。これは雇用や投資につながるのが理由だそうです。逆に小さいのは防衛と銀行救済措置関連で、1を下回るとのことでした。

これらの理由から、社会保障関連の支出を減らすことは、増やした場合に比べ、結果として高くつくことになります。


まとめ

詳しくは「経済政策で人は死ぬか?」を読んでみてください。実例を用いて解説しているので、とてもわかりやすいと思います。

こちらの財務省の資料も一読に値します。


好調な時代ではないからこそ、自分の意見を持っておくことは大事だと思います。この選挙の時期に、多方面から考えてみるのはいかがでしょうか。

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