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Henry Cowの『Unrest(不安)』を聴いてみた編

こんばんは、内山結愛です。

イギリスの独立系レーベルRecommended Records系(レコメン系)シリーズ!

今回は Henry Cow の『Unrest(不安)』を聴いてみた編をお届けします。

ストイックな構築美とポップで自由奔放な即興のバランス。変拍子と興奮入り乱れるフリーキーな演奏。

緊張感途切れない、優雅に不穏な一枚。

ぜひ、読んでみて聴いてみてください!

1.Bittern Storm Over Ulm

ベースが怪しげな音…とか思っているうちにドラムもなかなか暴れているし、サックス、ギターが自由に伸び伸び動き回っていて冒頭から忙しい。忙しないけどポップ。2:11〜終わりよければすべて良し!みたいな綺麗な回収の仕方でポップに平和に終わっていく。なんだか感動的ですらある。

2.Half Asleep; Half Awake

突然現れる甘美なピアノフレーズにうっとり。早くも二曲目で色んな表情を見られてその振り幅に驚く。1:17〜曲変わったかと思ったら変わっていなかった。次々と景色が、印象が変わる。知らない街を歩いている感覚になる。2:06〜楽しげで、なんとなく夕方な感じ。2:42〜自由と思いきや、音をしっかりはめてくるパート好き。統制の取れた自由。3:39〜ルンルンな感じだったのに、急にストイックな一面を見せられるとキュン…♡ドラム忙しそうで応援したい。ベース喋ってる…?4:58〜ベースと管楽器たちで討論してる…?気づけば動物園になっていた。6:16〜ヤバい世界への入り口が静かに開いていく。6:45〜そして現れる、ミステリアスになって帰ってきたピアノ。飽きない構成。

3.Ruins

耳鳴り、モスキート音みたいな神々しい音。勢いよく弾かれるショッキングなピアノの音色ビックリする。1:08〜不思議の国の住人になってしまう。1:50〜全てが変拍子みたいなのに、よく息を揃えた演奏ができるな…凄い。ベースが雄弁。2:22〜ギターが急にノイジーに狂い出す。みんなの情緒が掴めない。ポップに学級崩壊していく。ピアノだけが冷静。3:26〜ブリブリ鳴っていてノイズミュージック。3:45〜…と思ってたら急に鈴の音?がなって全員成仏した。怪しげな旋律を奏でるバイオリン登場。管楽器たちと弦楽器たちの対話。時々鳴る鈴の音で自分も成仏しそうになる、危ない。5:30〜マリンバとドラムのコンビネーションが楽しい。終始人間にはわからない言葉で楽器たちが話している感じ。7:20〜話がまとまったらしい。でもその後も不穏にガヤガヤしている。何の音だかわからないけど、とにかく不穏な空気。9:10〜不思議の国の牧歌。突然陽気。不穏に陽気。馬。9:49〜超ロックになって、ヤバい、展開早すぎて置いていかれる。予測不可能な展開。静けさを取り戻して終わっていく。

4.Solemn Music

管楽器たちが危なげに美しい旋律を奏でている。とても悲しげ、寂しげで心配。短い曲と長い曲との差が凄い!!!!

5.Linguaphonie

即興曲。全く何も準備せずにスタジオ入りしたらしい。本当に…!?テーマ「不穏」だ。絶対そうだ。0:40〜突然男女の謎掛け声が始まって恐怖。掛け声だけ決めて、演奏がフリーってことなのかな。マズイ所に迷い込んでしまったんじゃないか…?という恐怖との戦い。2:40〜ずっとピコピコノイジーな謎の音が鳴り響く中、暑苦しめの男性たちによる「ア゛ッ!」とか「イ゛!!!」とかの掛け声が入ってくる。どういう世界観なんだ。3:47〜この接続不良みたいなブリブリノイズ音は誰のどこの音なの。急に何もわからなくなって不安になる。4:23〜気まぐれそうな女性の怪しげなハミングと急に暴れるドラム。ずっと目隠しされながら「箱の中身は何でしょう!」みたいな怖さを抱えて聴いている。最後!!!怒 ビックリしちゃったじゃん!!

6.Upon Entering the Hotel Adlon

ギャ〜〜!!!!!!?叫び声にまたビックリ。ドラム、落ち着いて。どうしたの。ベースも低く暴れている。後半に並ぶ曲、「今って即興?」って思う瞬間が何度もある。調べたらB面になる4曲目からはほとんど即興の曲らしい。1:22〜女性ボーカルが楽器の音を真似した声を出していてカオス。演奏が無法地帯になってとんでもないカオスが広がる。焼け野原。ベースが格好良くて助かる。2:28〜ドラム、壊れちゃう…!ドラムがハードコア。また終わりよければすべて良しな終わり方をしてずるい。

7.Arcades

鍵が擦れ合うみたいな音と、楽器たちによる威嚇。サックスとかホーンとかピアノがいる気がする。暗闇の藪からひょいひょいと悪戯してくる感じで音が鳴らされてヒヤヒヤドキドキする。お化け屋敷…!?

8.Deluge

クール。研ぎ澄まされている。集中力を感じる。ドラムの挙動から耳を離せない。どんな気持ちなんだろう。みんなどんな気持ち…?1:42〜水と油みたいに混じり合わなそうで、溶け合う瞬間もある。基本的に不穏な空気が流れているけど、サックス?が度々ひょうきんな音をだしてくれる。後ろの方でオーロラのような美しい弦楽器の音たちが迫って、いつの間にか全てを飲み込む勢い。3:42〜管楽器打楽器チーム飲み込まれそう…負けるな…!3:57〜サックスの叫びも虚しく飲み込まれてしまった。暗く、美しい。4:40〜!?!ピアノと感情込めて歌う男性の声。

この靴下デザインのジャケットは他にも2作あり、「靴下三部作」と呼ばれているんだとか!

Henry Cowは、1968年に結成されたイギリスのグループ。本作は1974年にリリースされた2ndアルバム。リリース当時のメンバーはTim Hodgkinson(アルトサックス、クラリネット、ピアノ、オルガン)、Fred Frith(ギター、バイオリン、シロフォン)、John Greaves(ベース、ピアノ)、Chris Cutler(ドラム)、Lindsay Cooper(オーボエ、ファゴット)。

●Recommended Records:1978に設立されたイギリスの独立系レコード、レーベル。主に「Rock in Opposition(反対派ロックや異端のロックという意味)」に分類されるような音楽を特集しているのが特徴。日本では、ここでリリースしたミュージシャンやバンド、こかでリリースされるような類の音源を「レコメンディッド系」や「レコメン系」と呼ぶことがある。


前半は緻密に構成された曲が並ぶのに、後半は即興演奏を中心に構成された曲が並んでいるアルバムの流れが面白い…!

両極端が統一感を持って共存している、聴く芸術でした。

しかもその即興演奏も、調べたら「スタジオ時間の制約があって即興演奏を余儀なくされた」ということが書かれていて「そんなことある!?」って驚きました。驚いたというか面白すぎる。

時間に追われているというだけで、あんな暴れ倒して焼け野原にしちゃう演奏ができるのが凄い。

やろうと思ってできることではないのでプロフェッショナルだ…!

オーケストラばりの楽器の種類、アンサンブルで狂気に迫力があったな…その狂気や興奮の中にもエレガントさやポップさがあったので、そのバランス感覚も好きでした!


お次もイギリスの独立系レーベルRecommended Records系(「レコメン系」)シリーズ!

次回は Slapp Happy の 『Sort Of』を聴いてみた編をお届けする予定です。お楽しみに!

最後まで読んでくださり、有難うございました。


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