言葉と写真と日々のこと。

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最近の記事

揺れる

夢で君は、「海に行こう」とぼくに言った。 何も喋らない車の中で君が吸う煙草の煙がゆらゆら揺れていた。 日が昇りかける朝の海へ。君の目に映る海がきれいだと思った。 ぼくらは何も言わないまま手を繋いでいた。 ー あれからどれくらい時間が経ったんだろう。 ぼくはまだ、君と過ごす夢を繰り返しみている。 全然君の顔は思い出せなくて、ぼやけたままだけど。 君はどんなふうに笑っていただろうか。 君が吸っていた煙草はどんな匂いだっただろうか。 君と最後に話したのはいつだった? だ

    • 「春のさみしさを、何が埋めてくれる?」

      電話越しに きみは 泣いているんだろうと思った。 都会の生活に少しだけ慣れてきた。 相変わらず電車の乗り換えはうまくできないけど 人ごみのかわし方はうまくなったと思う。 違和感を感じる標準語も少しうつってきた。 この街の人間になりつつある。 この街はすべてが明るい。 明るいというより、まぶしい。 自分が持っている光は、 誰かの光で消されてしまう。 街の光に埋もれてしまう。 せめて、影ができると思ったいたのに 影は光に照らされて消えてしまう。 ここには、影を落とす

      • カノープス

        ただ、日々を残したいわけじゃない。 「君に近づきたい」と思ったのが最初だった。 - ぼくは何をやっても自分に自信がなかった。 成功してもこころから喜べることなんてなくて いつも誰かに指を差されている気がしていた。 だからぼくはひとりでいた。 誰かに傷つけられないように。 自分を傷つけないように。 できるだけ、この世界で場所を取らないように。 できるだけ、この世界から離れられるように。 いつも真っ暗な空ばかり見ていた。 いつも真っ暗な空ばかり写していた。 ぼくの日々も

        • 君の夢を見る

            「この街を離れることにした」  と、君は言った。  君がいない日々が当たり前になってきているけど  ふとしたときに、そっか、いないんだ。  と思い出させる。  すぐ会える距離にいたのに  ぼくらは、なんとなく、たまにしか会わなかった。  いつでも会えたけど、たまにしか会えなかった。  が正しいのか。  君はいつも、ぼくのだめなところを叱ってくれた。  君が言うことはなんとなく、正しいと思っていた。  そして君に何かあったときのために  僕は存在していると思っていた。

        揺れる

          日々の記憶

          毎日生きていると 少しずつ昔のことは忘れていく。 たぶん今日も、いつかのことを忘れていって 今日の記憶も、いつか忘れてしまう。 そういう繰り返しなんだけど、 そういう繰り返しの中に忘れないこともある。 家族と過ごした時間、友達と過ごした時間、 すきなひとと過ごした時間、 会いたかったひとに会えたとき 遠くへ旅行に出かけたとき 自分の夢が叶ったとき、 うれしかったこと、こわかったこと 驚いたこと、嫌だったこと、辛かったこと どれもこれも、もう断片的でしかないけど なんとな

          日々の記憶