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読書記録 │ 推し、燃ゆ/宇佐見りん

推し、燃ゆ / 宇佐見りん

第164回(2020年下半期)芥川賞受賞の
「推し、燃ゆ」が文庫化しましたね。
本屋大賞にもノミネートされた1冊。
当時コロナが流行り始めた頃で、その頃、就活を本格的に始めた私は、文芸本を読む余裕が無く。。
そのまま表紙や受賞作という話題性に興味はあったものの買うことなく、年月が経ちました。
そして今回文庫化。私、文庫本の方が好きなんですよね。読みやすくて。なので速攻買ってしまいました。



そんなことはさておき、
読書感想文をなるべくネタバレ無しで…

あらすじは、
家族にも学校にも馴染めずにいる、主人公・あかり。そんな彼女にとって、唯一の救いが推しの存在だった。推しを"解釈"することに心血を注ぐあかりだったが、ある日推しが炎上し。。
炎上した推しと、そして自分の抱えている生きづらさとどう向き合うか、、
というお話です。


読み終わって素直に一言いうのであれば
思ってたんと違う。




主人公・あかりは、発達障害・精神疾患を持っているのではないかなと。おそらく が付くのは、はっきり明記はされていないからです。

保健室で病院の受診を勧められ、ふたつほど診断名がついた。

推し、燃ゆ(文庫版) 14pより

ここで、ついた診断名が、いわゆる発達障害や精神疾患なのではないかなと。

それゆえ、現実の「当たり前」に生きづらさを感じ、「推し」を追いかけている時間だけは楽しい。
という、主人公とその環境描写がリアルでした。

…正直、推しが炎上して絶望みたいな話かなと思ってたんですよね。
前々回のnoteでも触れた、小説紹介のけんご氏が「救いの無い話です」と紹介していたのを、自己解釈で、推しがどうしようも無い話なのかなと勝手に思ってたこので。
なので、思ってたのとは違うなと。
他者理解という点では、すごく考えさせられるお話だったなと思います。
「推し」「現代の若者文化」の話だと思って読んじゃうと、ギャップがある気がします。
でも、現代だからこそ書けた物語でもある。うーん。

あと、「光あるところに闇あり」みたいな感じでもないです。全体的に最後まで薄暗い感じ。その点では、けんご氏の「救いのない話」という紹介もぶんぶん頷けます。


打って変わって、文体の話なのですが、
サラッとした文体で物語が進みます。
これが読みやすくて。
サラッとしてるのに、表現の仕方が上手なのか、心にグチョリとくるというか。。
あと、個人的には、比喩表現・言葉選びに文才を感じます。宇佐見さんの別作品も読んでみようかなと思いました。

さて、書店員らしく、どんなお客様に勧めるか。。
・生きにくさを感じたことがある人
・発達障害について知りたい人
・人生を捧げる推しがいる人

「共感」できるポイントが欲しい人にはオススメしません。万人が共感は出来ないと思います。
あと、明るい希望のある話、や推し(アイドル)の話自体を期待している方にもおすすめ出来ません。
どんな人に勧めるかって言ってるのに、勧めない人の具体例ばっかり出てきてる。笑

個人的には、宇佐見さんの言葉選びがすごい好きで。こちらは2作目と聞いてるので、別作品も読んでみようかなと思いました!
あと、「推し、燃ゆ」がノミネートされた2021年の本屋大賞ノミネート作品たちを、実は1冊も読めてないのでめちゃくちゃ気になってて…8月中にもう1作品は読みたいなと思いました。(オススメあれば教えてください)

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