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大好きを貰う、あげる

あれは社会人一年目の冬。帰りの電車で一緒になった職場の先輩から、モロゾフのりんごのチョコレートを貰ったことがある。

「大好きなチョコなんだ、あげる」と言って私に一粒渡した先輩は、普段は寡黙であまり話したことがなかった。

銀の小包を開き、チョコを手に取る。変わった形だなと思いつつ先輩と一緒に食べたりんごのチョコレートは、ジュワッと口の中で甘さが広がり、私を幸せな気持ちにさせていく。私が「とっても美味しいです…!」と感動しながら言うと、よかったらと二つ目を私に渡して、電車から降りて行った。

次の休みの日に、私はさっそくモロゾフに足を運び、りんごのチョコレートを探しに行った。その後も、その後も。いつの間にか、私もりんごのチョコレートが大好きになっていたらしい。

この日を境に、お出かけするときの手土産や、ちょっとしたバレンタインデーのプレゼントとして、りんごのチョコレートを友人にあげるようになった。


あの日私は、人から「大好きなもの」を貰った。人の大好きなものを貰うということは、こんなにも素晴らしいことなんだ。

大好きなもの、大好きな食べ物、大好きな場所、大好きな言葉、大好きな考え方、大好きな曲、大好きな人、大好きな時間。

大好きを貰うということは、奇跡のようなことでとってもありがたいこと。私にとっての大好きが、一つ増えたことがとっても嬉しかった。

地元を離れて一人暮らしをしているとき、全く土地がわからなかった私に、お気に入りのお店や場所をたくさん教えてくれた友人がいた。もちろん、1人で素敵なお店や景色を調べて足を運ぶことはできる。けれども、なんとなくネットで調べて知った場所よりも、大好きな場所なんだと教えてもらって知った場所の方が、その後何度も足を運ぶことになった。

人から大好きを貰うことの素晴らしさを知り、私も大好きをあげるようになった。

自分だけ知っておきたいと思うこともあるけれども、その思いを置いて私に余すことなく大好きを教えてきてくれた、先人(友人)たちのように。

昨日の夜、朝からふたご座流星群を楽しみしていた私は、眠たい目を擦りながらなんとか玄関を出た。あまり興味なさそうな母に、流星群は夜の10時、東の方角にたくさん見れるらしいよと声をかけ一緒に外を出ると、キラッ。母と私は流星群を見ることができた。

冬の夜、しんとした空気の中で「あっ、流れた!」とちょっと遠慮気味にはしゃぐ2人の声が重なったのがなんだか嬉しくて。母が遠く離れた父に流星群見れたよ、とすぐに連絡を入れていたのが嬉しくて。

大好きは連鎖する。
日々の幸せを、口に出していこう。

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