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浪漫



生きるって少しのいい思い出を抱えて、つらい日々を耐えることなのかな。
悲観的だし、残酷な話だわ。

否定はできないけど、私は小さな幸せを感じられる今が好きよ。
あんたたちと話すだけでもすごく楽しい。

「恋愛体質〜30歳になれば大丈夫〜」第二話





水曜日

高校時代のソウルメイトのような友達に会った。体調不良になっている間に、桜は満開を迎えていて、体調が良くなっていざ花見をしようと思ったら、すでに散り始めていて、葉桜になっているところもあった。でも、どうしても春を感じたくて、友達と城跡公園へ花見に行った。桜を見るために行ったのに、数枚写真を撮って満足し、魅力的な屋台すら目に留めず、いつもの内容があるようでない、重要性があるようでない、とりとめのない話をしながら歩いた。

愛想がないこと、プレゼントを渡されるとどんな反応をしたらいいかわからないような、そんな人間であること。世間から見たら、冷たく見られてしまう、そんな性格が辛い時があるっていう話をした。わたしも友達も人間を二種類に分けた時に、どちらかというと「陰」の方に分類されるみたいだ。無駄に人に合わせて、苦しい思いをし、ただ返事をしただけなのに、思ってないだろと言われ、愛想がいい子の隣にいると比較されて卑下され、この世界はなんて生きづらいんだ。でも君と2人でいると無敵になるよね。だってその全てのことを気にしなくていいんだもの。そんな話をした。高校3年生の国語の授業の中でなんでも好きなことを原稿用紙に書いていいっていう課題があったらしい。わたしはそんなことすっかり忘れていた。しかもその授業で私は物語を書いて、その友達と交換していたらしく。話していたら思い出してきて、恥ずかしくなった。大学の学部も、今の職業も、どちらかというと現実的で堅実的な道を選んだわたし。「才能があるのに、なんで自分の首を絞めるような道に進んだの?」と、その友達はわたしの高校時代に書いた物語を思い出しながら言った。「もっと早く言ってよ」ってわたしは言ったけど、内心めちゃくちゃ嬉しかった。この友達と一緒にいる自分は、1番自分らしくいれて誇らしい。



金曜日

幼馴染の男友達に会った。久しぶりに2人でご飯に行った。定期的に会って近況報告をする、人間が好きな幼馴染と人間が苦手なわたし。「恋愛」「仕事」「人間関係」主に3つの話題で、ひたすら会話、もはや議論を展開させた4時間だった。途切れることなく議題が発生する2人の会話。わかるところはわかるよ、でも違うと思うことは違うと言ってくれる、そんな会話が心地よく、人生何周目なのか?と思うような達観した幼馴染の考えにとても感心した。保育園の時から知ってるから、もはや恋愛になんか発展するわけもない関係。自分の日常を赤裸々に語り、意見を言い合う、時代を語らう、地元を語らう。

晴れの日に憂鬱になること、雷雨のとき稲妻をずっと見ていたくなること、全然わかってくれなかったし、もはや心配されたけど、「そんなお前が面白い」と言ってくれてありがたい。雨は見るんじゃなくて音を聞くものだと言った幼馴染。全然理解できなかったけど、「面白いね」と伝えたわたし。少し前にあった先輩との恋の話も、真剣に聞いてくれて、彼なりの意見をくれてありがたかった。3歳の時に友達になって、もう今年27歳。20年来の友情は伊達じゃない。男女の友情を信じない人に、わたしたちの関係を見せつけたい。「こんな時間経ってたんだ、楽しかったな。」そうやって呟いた幼馴染に微笑みかけた自分は少しキモかったな、なんて思ったりもして。また定期的に会って議論しよう、どっちかが恋をしていても結婚しても、友情は続くんだから。



土曜日

去年恋が終わった先輩とご飯に行った。自分の中では完全に終わりにしていたから、数日前に本当にいきなり連絡が来た時はびっくりしたけど、特に行かない理由もないし、過去に固執せず未来を楽しみにしようと決意したわたしは、先輩とどうなりたいっていう願望も特になかったから、その誘いに応じることにした。

本当に不思議。この人に好かれようという感情がなくなった瞬間、自分らしさを振りまくことができてしまうのだから。少し色気があった方がいいかしら…なんて悩んでいた数ヶ月前、昨日は自分の好きな服装で、好きなメイクをして、心も身体も楽ちんだった。色々あったあの数ヶ月に会った時間より、昨日の数時間のほうが何百倍も楽しくてたくさん喋ることが出てきちゃって困った。先輩も心なしか楽しそうだったし、わたしもものすごく楽しかった。今更どうすることもできないけど、過去の話より未来の話をたくさんして、少し希望も持てた気がした。この先2人がどういう関係になろうと、今日が楽しかったという事実は曲がらない事実であって、自分の感情や先輩の感情がどうであれ、過去がどうであれ、起きている事実に感謝しよう。帰った後に、そうは言っても喋りすぎたなあ〜って少し反省して、ラインで謝ったら、「楽しかったからいいよ」と返信が来て、純粋に嬉しかった。いい気持ちで眠りについた。




今日は日曜日。水曜日に会った友達から「今日仕事で愛想がないことを注意されたけど、あんたとの会話を思い出したら全然どうってことなかったよ」っていうラインが来た。冒頭に書いた「生きるって少しのいい思い出を抱えて、つらい日々を耐えることなのかな」ってセリフを思い出した。少なくとも、今週は3人の友達と幼馴染と先輩に、とりとめのないありふれた会話の中で、辛い日々を耐える幸福のエッセンスをもらった気がする。「悲劇も遠くから見ると喜劇」とでも言うように、好きな人と好き勝手喋って、辛い日々を楽しいものに変えていこう。そんな希望を持てた1週間だった。





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