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どうしようもなく寂しくなったその時は


会社を長期で休むことになった。巷でよく聞く心の風邪。まさか私も。少し頑張りすぎてしまったみたい。病院で「数ヶ月休んでください。」と診断書を出されたとき、今残っている大量の仕事や担当しているお客さんのことを考えて焦るよりも、やっと休めると安堵した気持ちの方が大きかった。

でも数時間も経てば、私なんでこんな風になってしまったんだろう。早く治して復帰しなくては迷惑をかけてしまうと、迫り来る焦燥感に胸が苦しくなった。

会社だけでなく、家族や大切な友達に言うのも躊躇い、心が本当に苦しくて、大好きな本を読んでいても仕事のことが浮かぶし、自分にとっての棘になってしまうかもしれないと歌詞がある音楽は聴けなくなった。悲しかった。

長い人生として捉えれば、たったの数ヶ月、ほんの一瞬の休暇だとしても、焦りは大きい。変にプライドが高くて、なかなか自分を褒めてあげられない私は、病気になった自分のことを物凄く責めた。




絶望的な日々が始まったと落胆していたある時、ふとテレビを見ると歌手のゆずが出ていた。合間合間にライブ映像が流れている。私と私のソウルメイトが大好きな『いつか』も流れてきた。「そういえば、あの子にも話してなかったなあ。」ソウルメイトをふと思い出して、「色々あって会社休むことになっちゃったんだよね〜。」とメッセージを送った。


“やっと休めたのか!良かった!”


拍子抜けした。たったの一文だったけど、びっくりするくらい、あの子からの返答に救われてしまった。私休んで良いのか、少し肩の荷が降りるようだった。

会社やお客さんに休むことを伝えた時に、「最近痩せたと思ってたんだよ。」「心配だったんだよ。」「だってあなた頑張り屋さんだもんね、頑張り過ぎちゃったんだね。」「早く良くしてね、待ってるよ。」と言葉をもらった。有難いことなのに、私のことを励ましてかけてくれる言葉が、胸に針のように突き刺さって苦しかった。

あの子はいつも「君は何事にも最大限努力して、最高のパフォーマンスをする。そんなこと本当はしなくてもいいのに。」と諭すように言葉をかけてくれる。

仕事の愚痴をこぼすたび、「頑張りすぎだよ。」といつも注意報を出してくれるあの子は、絶望の淵にいた私に唯一無二のメッセージをくれた。私が欲しかったのは、「休むことに対する肯定」だったんだなあ。あの子はたまたまそう言ったのかもしれないけど、病院で処方された薬を飲むより、心が安らぐ言葉だった。




ゆずの『いつか』は私とソウルメイトのあの子が、初めてカラオケでハモった曲だった。味をしめたようにゆずの他の曲もハモったし、弾き語りの練習までした。それだけ夢中になって、何度も2人で歌った曲。

病気になって歌詞のある曲を聴けなくなっていたけど、あの子のメッセージを受け取ったあと、久しぶりに『いつか』を聴いた。なんだ、しっかり聴いてみれば、私とあの子の曲じゃんか。そう思ったらなんだか笑えてきた。

いつかまた どうしようもなく 寂しくなったその時は
どこにいても 何をしていても 駆けつけてあげるから
ありふれている言葉なんて 捨て去ってしまおう
何もいらない あなたがいる それだけが僕の全て
ゆず「いつか」

「人に愛想がないと言われる。」と悩むあの子の話を失礼にも笑い飛ばして、「でも私といるときはそんなこと気にしなくていい。」と言った私に、「今日も職場で愛想がないって言われたけど、君との会話を思い出したら、どうってことない。」って言ったあの子。

自分を大切に出来なくて体を壊した私に「やっと休めたんだ!良かった!」とメッセージをくれたあの子。

お互いにお互いの存在を「大切だよね。」「いなきゃ困るよね。」なんて確認したこともないけど、でもどれだけ救い救われているか。そしてまさか、ゆずの『いつか』が私を救うきっかけになるとは。人生って面白い。伏線だらけだ。



「気分転換にカラオケでも行くか!」。私が考えていることの全てが伝わってしまっているかのように、あの子は私をカラオケに誘ってくれた。また『いつか』を一緒に歌おう。今度は少し胸が詰まって歌えなくなるかもしれない。そうなったとしても、あの子はそれを知らないフリするだろう。そんなところが良い。

その後はいつものようにファミレスでくだらない話をしよう。くだらないと思ってたら、実は物凄く深い!みたいな話もしよう。ない方がいいけど、もしあの子が大きな波に連れ去られようとしたら、今度は私が救ってあげられるように。

いつもすぐそばにいてくれて、ありがとう、これからもよろしく。








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