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Remember Me

クリスマスに仲のいい先輩と勤務先近くの雑貨屋さんに行った。可愛い雑貨が並ぶなか、「このお香いい匂いじゃない?」と金木犀のお香の匂いを嗅がせてくれた。私は金木犀の香りが大好きなので、「とてもいい匂いです!」と伝えた。

自分の買い物を済ませて、二人で帰ろうとしたときに、「メリークリスマス!」と私に金木犀のお香をプレゼントしてくれた。突然のサプライズだったので、私は本当に嬉しくて、だけど自分は先輩にプレゼントを買っていなくて、自分のことしか考えていない自分がのすごく恥ずかしくなった。(次の日改めて雑貨屋さんに行って、先輩にプレゼントを買った。)

そのお香は、マッチ型のもので、マッチをすればお香に火がついて、そのままいい匂いが10分くらい続くというもの。金木犀の香りが部屋中に広がって、寝る前の癒しになった。5本入りのそのマッチはすぐ終わってしまって、私は何度も足繁くその雑貨屋さんに通って、お香を買った。ついには30本入りのものがあったので、それを購入した。そして、昨日その30本が終わった。

金木犀の香りは、どこかセンチメンタルな気持ちにさせる。秋口に香ってくるその香りを毎年楽しみにしているのだが、去年の秋は気候のせいなのか、私の運が悪いのか、なかなか遭遇できなかったなと思う。だから、余計冬になってもお香から香る金木犀の香りに頼ってしまうのだ。



金木犀の匂いを嗅ぐと思い出す人がいる。仕事でものすごくお世話になったおばあちゃんがいて、2020年の秋口に訪問したときに、「金木犀の香りがしますね。」と言ったら、足腰が物凄く悪くなっていたのに、わざわざ外にでて、金木犀の枝を折って私にくれたことがあった。「今の子は、花を見たり、花の匂いで季節を感じることがあるんだね。」と少し感動してくれた。私は少し照れくさかった。

それから金木犀の香りがすると、そのおばあちゃんを思い出すようになった。元気かな、足腰がこれ以上悪くなっていないといいな、そういえばあんなことやこんなこと話したいことたくさんあるな、なんて。でも、去年の夏におばあちゃんは脳出血で亡くなってしまった。私が新入社員の時から、いろんな話をしたし、相談もしたし、辛い時はそのおばあちゃんのところに行って泣いてたっけ。お線香をあげに行った時も、実感はわかなかったけど、息子さんに「母はあなたをとにかく信頼していました。」と言われて、帰りの車で泣いた。



毎日寝る前の時間に、マッチを擦り、10分間匂いが続くその間は、爪にオイルを塗ったり、ハンドクリームを塗ったり、自分を大切にする時間に充てるようにした。1日の終わりに、自分と向き合って、今日を振り返る。とても大事な時間になった。

そして、少しばかりかそのおばあちゃんのことを思い出す。自分とは血がつながっていないけど、それ以上の絆があったと思う。旦那さんのことを愛していて、どこか子どものようなあどけなさがあったなあ。

金木犀の花言葉は「謙虚」「気高い人」なんだって。そのおばあちゃんにぴったりな花言葉だ。


今日は、ストックを買っていなかったので、金木犀のお香がない。明日買いに行こう。そして今日は少しではなくて、おばあちゃんのことをたくさん思い出す日にしてみようかな。会話の内容を隅々まで思い出すことはできないけど、おばあちゃんの笑顔を思い浮かべて、今の私のことたくさん伝えたい。ちゃんとできていないかもしれないけど、おばあちゃんの前で「辛いです」と泣きじゃくっていた自分よりは遥かに強くなりました。いつまでも恩は忘れたくない。映画「リメンバーミー」では死んだ人のことを忘れない限り、死者の国でその人は生き続けるって言ってたっけ。きっと、おばあちゃんは生き続けているね。そしてわがままかもしれないけど、私のことも忘れないでほしいな。ありがとう。


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