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得意なことと出来ること

20年ほど前から一世を風靡した、「プロフィール帳」(今の小中学生は知らないのかなあ)。

みんなで交換して友だちのプロフに自分のことを書いていくとき、いつもえんぴつが止まる場所がありました。名前を書いて、血液型や誕生日、星座、それに呼ばれたこともない謎のニックネームを書き・・・

「私の長所は_____で、特技は_____だよ☆」

え・・・長所・・・?特技・・・?

もう、なにそれ美味しいの状態で。

自分の出来ることやポジティブな面について、初めて考えたのがこの時でした。

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ご存じの通り、かの有名なパンサーカメレオンは、生理的・精神的な要因によりその体表の色を変化させます。例えば、気温が変化した時、求愛行動をしている時、そして威嚇している時や怯えている時。自分の身を守るために色を変えることが出来るんですね。

人間も同じだと思います。

身を置く環境によって自分の立場や発言を変えることが出来る。

変えざるを得ない状況に置かれてしまったら、自分に期待したい思いや自分を褒めてあげたい気持ち、喜ぶ胸の内を、消し去り殺すことが出来る

少なくとも私はそうでした。

自分自身の捉え方がねじ曲がってしまうほどに。

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図工の授業で、絵を描きました。絵を描くのが大好きで、得意だと自分では思っていた私は、絵の具と筆を使って、母の日に贈るお母さんとカーネーションの絵を、それはもう丹精込めて一所懸命。授業時間内で描きあがらなくて、先生にお願いして放課後残って完成させました。

やっと出来た!と先生に見せると、

「こんなに時間がかかるなんて・・・先生だって暇じゃないんだから、もっと時間配分考えなさい」

と言われました。

ちょっと待て教育者よ。

現在の私からの最も言いたいツッコミです。この先生もなかなか激しくて支配欲のあるヤバい先生でしたが、兎にも角にも私は長時間かけ完成させた絵を、意気揚々と家に持って帰りました。

「なんて言ってくれるかな」
「喜んでくれるかな」

頭の中は、お母さんが喜んでくれるたくさんの反応で溢れかえっていました。


実際はどうだったか?

絵を見た母は、たった一言、

「私花とかあんまり好きじゃないんだけど」、と。

そして、

「いらない。あんた絵下手すぎる、なんにも得意なことないんだね」。

現実は甘くないんですね、どれだけ愛をこめて絵を描いても、受け手の好みに合わなければ捨てられるんです。どれだけ頑張って描いても、下手だと処理されて相手にしてもらえないんです。

メンタルは強かったはずの私でしたが、そのひと言で心がへし折られました。

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「なんにも得意なことないんだね」

「何ひとつ人並みに出来ないね」

そう言われ続けた私は、自分の長所や特技を人前で発表したり考えたりすることが出来ないようになっていました。気が付けば、プロフのあんな狭い欄にも何も書けない子どもが完成していて。

大学生になった今でも、長所や特技を書くのにはとても時間がかかります。


【刷り込み?】【呪縛?】

なんにせよこの出来事は、私の生き方と考え方、そして人格形成の基盤を大きく揺るがすものとなりました。

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