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ディグ・モードvol.53「ヘルムシュテット(HELMSTEDT)」

ヘルムシュテット(HELMSTEDT)は、2018年にコペンハーゲンで生まれ育ったデザイナーのエミリー・ヘルムシュテット(Emilie Helmstedt)が設立したデンマークのファッションブランド。昼間にナイトウェアを着る遊び心が好きな彼女は、型にはまらない思考を持ち、服だけにとどまらない形で自身のアイデアを作品化している。


アートとデザインを組み合わせたい

(Courtesy of HELMSTEDT)

エミリーは常に自分の夢に突き動かされてきたデザイナーだ。小さなころ、彼女は数学と文法が苦手で、手芸と裁縫を学ぶことで勉強から自身を解放していた。彼女が自分の手を使って自己表現するようになったのは、帽子職人の曾祖母、ゴブラン織アーティストと裁縫師の祖母という家族の影響がある。

また、エミリーは子どもの頃に通っていた「レジャー クラブ」(デンマークの子どもたちが放課後に通う、美術や工芸などのキッズ クラブ)にも大きな影響を受けた。高校を卒業すると仕立てを学び、ベルギー人デザイナーのもとでインターンをした。彼女にとってその経験は価値あるものだったが、ファッションだけに集中するのでは満足できないとすぐに気づいた。

2022年秋冬コレクション(Courtesy of HELMSTEDT)

そこで、彼女はファッションから離れて美術学校に通い、たくさん絵を描き始めた。そして数か月後、自分が本当にやりたかったことは、 アートとデザインを組み合わせることにあると気づいた。エミリーは学校がアートとデザインの間に障壁を設けているように感じたため、そこを中退した。学校からは自分の直感に従わないように言われたが、それはできなかった。

日々芸術に夢中になっているエミリーは、アトリエは実用的な目的で市内に移したものの、住まいはデンマーク最大の芸術家コミューンと見なされている、クリスチャニアにある。そこはマリファナが合法で、住民は税金を払っておらず、多くの人が自分の家を建て、食べ物や衣服をトレードで購入している、コペンハーゲンの「フリータウン」だ。

昼間にナイトウェアを着る遊び心が好き

2020年秋コレクション(Courtesy of HELMSTEDT)

デザイナーは、常に1950年代と60年代のラウンジウェアに大きなインスピレーションを得てきた。それらは、自分のために贅沢なものを着ることを意味し、デザインに重きが置かれ、豪華さや快適さを醸し出しているものだ。自分らしく着こなすことが大事だと考える彼女は、昼間にナイトウェアを着る遊び心を好んでいる。

自身のデザイン アプローチについて、「いつも考え、ブレインストーミングし、歩くことからコレクションを始めます。それから自分のアトリエに戻り、自分が夢見ているものを描きます。その後、生地を選び、私のアートを着心地が良く、どんな場面でも着用できる衣服に変えます」とエミリーは『VOGUE』で語っている。

創造性と型破りな思考のためのスペース作り

(Instagram / @helmstedt_)

2018年、エミリーはデンマークのメアリー皇太子妃から、マガザン・デュ・ノール・ファッション賞(Magasin du Nord Fashion Prize)を贈られた。その後、2019年秋のコペンハーゲン ファッション ウィークで、最初の公式ランウェイ ショーを開催した。

そのコレクションは、ハンス・クリスチャン・アンデルセン(Hans Christian Andersen)の『エンドウ豆の上に寝たお姫さま(The Princess and The Pea)』から部分的にインスピレーションを得たものだ。彼女はずっと、物語の幻想や、その深い眠りから生まれる夢のアイデアが大好きだった。

物語に登場するプリンセスにインスパイアされた金色のヘッドピースは、彼女のボーイフレンドの母親であり、有名なデンマークのジュエリー デザイナーであるゲルダ・モニーズ(Gerda Monies)と共同で作られた。

エミリー・ヘルムシュテット(Courtesy of Sarah Stenfeldt)

ブランドのビジョンは、2018年の設立当初から変わらず、クリエイティビティと型破りな思考のためのスペースを作ることにある。デザイナーは、服などのひとつの媒体にとどまらず、ヘルムシュテットはそれ以上のもの、ブランド以上のものだと考えている。

「ヘルムシュテットは、『エンドウ豆の上に寝たお姫さま』にインスパイアされて、ランウェイショー用に作った巨大なベッドなど、陶器、アート、家庭用品をさまざまな形で扱うことができる場所です。私はヘルムシュテットに物語を語ってもらい、人々に何かを感じてもらいたいと思っています。それが私にとって最も重要なことです」と彼女は『LAFM』で語っている。

この記事は、フリーランスで翻訳や海外アパレルブランドの日本向けPRをしている𝐡𝐢𝐫𝐨𝐤𝐨が、自身のファッション業界に対する見識を広める目的で書いたものです。

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