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ディグ・モードvol.69「サダエルス(SADAELS)」

サダエルス(SADAELS)は、アルゼンチン出身のホアン・エルナンデス・ダールス(Juan Hernandez Daels)がアーティスティック ディレクターを務めるパリ拠点のファッション ブランド。ホアンは自身の生まれ育ったアルゼンチンとファッションを学んだベルギーを着想源とし、服でストーリーを語っている。


ファッションの実験的な面に興味津々

2020年春夏コレクション(Photography by Ivan Resnik)

ホアンはアルゼンチンのブエノスアイレスで生まれ育った。母親はベルギー人で、母方の家族は全員オランダ語を話していた。幼いとき、ホアンは彼らの話す言語が分からなかったが、のちにアントワープでデザインを学ぶことになったため、それが自身の大学選びに影響を与えたと振り返っている。

両親が建築家で、建築の道に進むことが当然の選択だと思ったホアンは、最初ブエノスアイレスでインダストリアル デザインを学んだ。デザインのあらゆる分野を探求するためにさまざまな機関を探したところ、彼はアントワープ王立芸術アカデミーにたどり着いた。そこではファッションのキャリアに芸術的な方向性があることに気づき、とくに実験的な面に興味を持った。

そこで、ホアンはベルギーに飛び立ち入学試験を受けた。しかし結果は不合格だったため、ファッション科に入る前に1年間アートを学ぶことにした。在学中、ドリス・ヴァン・ノッテン(Dries Van Noten)やウォルター・ヴァン・ベイレンドンク(Walter Van Beirendonck)のもとでインターンシップをおこない、卒業後に自身の名を冠したブランドを設立した。

ラグジュアリーブランドの開発に携わる

2020年春夏コレクション(Photography by Ivan Resnik)

卒業後すぐ、ホアンはアン ドゥムルメステール(ANN DEMEULEMEESTER)の仕立てを担当していたダニエル・ヤンセン(Daniel Jansen)と仕事を始めた。ダニエルは、ホアンが他のプロジェクトに取り組んでいたとき、彼を応援し、服のパターン作成や技術的な面で助けてくれていた。

そして、ホアンはアン・ドゥムルメステール(Ann Demeulemeester)がかつて所有していたパブを舞台に、ふたりのパートナーと一緒にメンズウェア ラインを立ち上げた。

その2年後、彼はベルギーを離れ、カタールのステファン・ローランド(Stéphane Roland)と一緒に仕事するようになった。そこでは、女王のための開発および教育プログラムの一環として、クチュール、プレタポルテなどさまざまなラインを持つラグジュアリーブランドの開発に携わった。

強みはテーラリング

2020年春夏コレクション(Courtesy of SADAELS)

ホアンの強みはテーラリングだ。最初は主に古典的な形や構造を開発していたが、彼はいま形態学的研究に最も関心を抱いており、テキスタイルの使用方法を変更したり、新しい縫製を導入したりするなど、新しい言語の作成に努めている。

また、彼は国際的な視点から考えることを好み、特定の市場向けにデザインしたり、住んでいる場所に影響されたりはしないという美学を持っている。自身のインスピレーション源については、「現在の気分や心の状態がどうであれ、それらが私の主なインスピレーションの源です」とデザイナーはイタリア版『VOGUE』で語っている。

多文化的なバックグラウンドから服で物語を語る

ホアン・エルナンデス・ダールス(Juan Hernandez Daels)

2017年以来、ブランドはパリに拠点を置き、アンスティチュ フランセ ドゥ ラ モード(Institut Français de la Mode)のコンサルティング プログラムに則っている。デザイナーの多文化的なバックグラウンドは着想源であり、彼は生まれ育ったアルゼンチンとファッションを勉強したベルギーを組み合わせ、服でストーリーを語っている。

2022年春夏シーズンに、サダエルスはクンビアンケッタ コレクションを発表した。90年代のラテンアメリカ文化を定義したトロピカル ミュージック、クンビアにインスパイアされたコレクションで、アルゼンチンの経済が崩壊する前の、夢のような喜びの時間がベースとなった。

2022年春夏コレクション(Courtesy of SADAELS)

崩壊する経済の現実に気づかなかったアルゼンチンの人々の消費主義は、ファッションショーで半分食べかけの大量のケーキやアルコールを通して描いた。安っぽさを愛するライフスタイルにインスパイアされ、90年代のラテンアメリカのポップカルチャーから強い影響を受けたネオンカラーが多用された。

ホアンはアントワープで学んだコンセプチュアルなアンチファッションの実験と、ラテンアメリカの直感的な官能の中間地点でコレクションを制作している。

この記事は、フリーランスで翻訳や海外アパレルブランドの日本向けPRをしている𝐡𝐢𝐫𝐨𝐤𝐨が、自身のファッション業界に対する見識を広める目的で書いたものです。

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