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ディグ・モードvol.47「ジェニー ファックス(JENNY FAX)」

ジェニー ファックス(JENNY FAX)は、2011年に台湾出身デザイナーのシュエ・ジェンファン(Jen-Fang Shueh)が立ち上げた、東京拠点のファッション ブランド。彼女は幼少期の思い出や80年代のアメリカのポップカルチャー、日本のサブカルチャーにインスピレーションを得ながら、10代の心を持ってコレクションを生み出している。


人とは違う、特別になりたい

2021年春夏コレクション(Courtesy of JENNY FAX)

ジェンファンは幼いとき、たくさんの服を着るのが夢だったが、実際には叶わなかったため、自分で小さなバッグを手作りしたり、リボン刺しゅうしたり、服の一部を切り取って違うものを作ったりするようになった。「人とは違う、特別になりたいと思っていました」と彼女は『Hype Zine』で語っている。ファッションの道に進みたいと思ったのは、その頃だった。

高校生のとき、彼女はファッション雑誌で見たものを真似て、初めて自身のドレスを作った。当時アントワープシックスが人気で、アン ドゥムルメステール(ANN DEMEULEMEESTER)のドレスが好きだったはジェンファンは、前面の写真しかなかったが似たようなものを作った。 

19歳まで台湾で過ごした後、ヨーロッパに留学。パリのエスモード(École Supérieure des Arts et Techniques de la Mode)でパターンメイキングを勉強した後、ブリュッセルに移りラ・カンブル国立美術学校(La Cambre)で学んだ。ヨーロッパではさまざまな国から来た多くの人々と出会い、彼女は多くの刺激を得た。

2016年秋冬コレクション(Courtesy of JENNY FAX)

学生時代、ジェンファンはアンジェロ・フィギュス(Angelo Figus)のショーに感銘を受けており、ラフ・シモンズ(Raf Simons)も彼女に影響を与えたデザイナーのひとりだ。彼のミニマムなメンズウェアのデザインと、人を感動させる若々しいスピリットに彼女はいつも憧れを抱いている。

2010年、彼女は自身のブランドを設立。当時、彼女の美学は「デコラ」や「ゴシックロリータ」のような原宿のサブカルチャーに大きく傾倒していた。「日本のサブカルチャーは、アニメ映画やアイドル カルチャーの大ファンである夫(デザイナーの坂部三樹郎) が、私にインスピレーションを与えてくれます」とジェンファンはシンガポール版『L'OFFICIEL』で語っている。

思い出が最大のインスピレーション

2020年秋冬コレクション(Courtesy of JENNY FAX)

台湾で幼少期を過ごしたジェンファンにとって、当時の思い出もインスピレーションの源だ。そのころ母は働いていて非常に忙しかったため、ビデオ屋に前払いしてくれて、ジェンファンは兄弟たちと映画をたくさん観ながら、のびのび自由に育った。当時、ジェンファンはアメリカのカルチャーに影響を受け、80年代の漫画やドラマを多く観ていた。

子ども時代の友人や家族、初恋の思い出など、彼女の思い出は最大のインスピレーションであり、クリエイティブなプロセスにも通じている。記憶を掘り出すことは、デザイナーが気に入っているクリエイティブな工程だ。

彼女は自身を世界から切り離す方法として、同じ曲を何度も繰り返し聴くことでプロセスを始めることが多い。例えば、スターバックスやスーパーマーケットで流れているような音楽を聴きながら、ひとりで作業しているとジェンファンは説明している。

10代の女の子は最強

シュエ・ジェンファン(Photography by Fumiko Imano)

ジェニー ファックスのコレクションは毎シーズン、いつも女の子が存在する。その女の子は常に同じ子であり、彼女がシーズンごとに大きくなるために、ジェンファンは別のレイヤーで自身がティーンエイジャーだった頃の記憶を振り返っている。

デザイナーにとって、10代の女の子は最強の存在だ。「年を重ねたとき、危ないかもしれない、難しいかもしれないと恐れて、新しいことを試すことはありません。しかし、ティーンエイジャーは多くのことを気にしません。それが彼らを最も強力にします」と『GARAGE』で語っている。ジェンファンは10代の感覚を持ち続け、コレクションを作り続けている。

この記事は、フリーランスで翻訳や海外アパレルブランドの日本向けPRをしている𝐡𝐢𝐫𝐨𝐤𝐨が、自身のファッション業界に対する見識を広める目的で書いたものです。

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