見出し画像

ディグ・モードvol.54「ベター(BETTTER)」

ベター(BETTTER)は、2020年にウクライナ版『VOGUE』の元ファッション ディレクターであるジュリー・ペリパス(Julie Pelipas)が設立したファッション ブランド。服づくりではデッドストックを有効活用し、テクノロジーを利用した製品のカスタマイズをおこなっている。彼女の願いは、ベターが世界の生産を変えることができるシステムになることだ。


過剰生産を止めるためのプラットフォーム

(Courtesy of BETTTER)

ジュリーはベターをファッション ブランドではなく、アップサイクルのアイデアに基づく多面的なプラットフォームであると認識している。ウクライナ版『VOGUE』のファッション ディレクターとして、服の過剰生産を目にしてきた彼女は、どの服も似ていてデッドストックが大量にあり、必要なすべての衣服はすでに生産されていると感じていた。

そこで、どうすれば生産量を減らしながら、親世代が持っていたような、時代を越える品質を誇る美しい服を作ることができるかについて考え始めた。それは彼女のアップサイクルシステムに関するアイデアの始まりであり、『VOGUE』の仕事を辞めて自分のことに取り掛かろうと決心するまで、3年にわたって彼女の頭の中を占めていた。

drop 09(Photography by Andrew Grey)

そして、彼女はメンズ スーツやアスレチック ウェア、ビーチ タオルなどのデッドストックやヴィンテージ テキスタイルを、品質、カッティング、製造にこだわって、現代的な美しい服に再利用する手段としてベターを設立。「サステナビリティについてグリーンウォッシュを使わずに、本当に正直な方法で話したかったのです」と彼女は『Denizen Magazine』で語っている。

命あるヴィンテージを着用可能な状態に

drop 00(Courtesy of BETTTER)

ベターでは無駄を無くすために、持続可能な方法で服を作っている。地元ウクライナの中古市場や工場のデッドストックから生地や古着を調達し、製造もウクライナでおこなう。最初のコレクションである「ドロップ 00(drop 00)」では、アップサイクルされた46のルックが登場した。

ジュリーにとって、ヴィンテージを扱うことは服づくりで最もロマンチックな部分だ。ヴィンテージには命があり、実際に着用できる状態まで修理することが、ベターがおこなっていることである。

「祖父のクリーム色のスーツを着て、初めて学校に足を踏み入れたときの気持ちが大好きでした。それがベターでやりたいことです。服はランダムに購入するものではなく、祖父のジャケットのように、ずっと一緒にいるものであると感じてもらいたいです」と彼女は英国版『VOGUE』で語っている。

テクノロジーを活用した持続可能な生産

(Courtesy of Andrew Grey)

ジュリーは、2019年にLVMH イノベーション アワードを受賞したウクライナのスタートアップ、3DLookと提携している。シリコン バレーにオフィスを構える同社の技術は、体をスキャンして体型の詳細な測定値を出し、オーダーメイドのスーツを仮想的に作成することができる。このパートナーシップは、過剰生産を生みださないという意味で持続可能性につながっている。

「何かをカスタマイズするのは、本当に複雑なプロセスです。しかし、私たちの場合、人々が必要としないものを作らないため、最適化されています。人々が欲しいときだけ、生産します」とジュリーは『VOGUE』で語っている。

ウクライナのクリエイティブ コミュニティに世界の関心を集める

drop 00(Courtesy of BETTTER)

ロシアがウクライナへの攻撃を始めたことをきっかけに、彼女はベターの使命を転換することを決意した。そして、ウクライナのクリエイティブ コミュニティに、世界の関心を向けるためのオンライン プラットフォーム「bettter.community」を立ち上げた。

ウクライナのファッション コミュニティを知っており、グローバルなファッション業界の一員として仕事をしていたジュリーは、ウクライナと世界の他の地域とを結びつけるシステムを構築し、ウクライナのクリエイティブ コミュニティに属するメンバーが、仕事にアクセスできるようにする必要性を理解していた。

ジュリー・ペリパス(Courtesy of BETTTER)

「bettter.community」の設立からほぼ1年後、ウクライナのオンライン コミュニティであるGIVEN NAMEとペアを組み、「GIVEN NAME.community」を形成し、規模を拡大して活動を続けている。2022年、ジュリーはファッション アワードを受賞し、ファッション業界に変化をもたらすリーダーのひとりとして認められた。

「ウクライナのクリエイターが単なる犠牲者としてではなく、真の才能として見られるようにしたいです。私たちはデザイナーやアーティスト、スタイリストなど、他の人と同じようにクリエイティブです。私たちはアートとファッションを愛する人々です」と彼女は『i-D』で語っている。

この記事は、フリーランスで翻訳や海外アパレルブランドの日本向けPRをしている𝐡𝐢𝐫𝐨𝐤𝐨が、自身のファッション業界に対する見識を広める目的で書いたものです。

いつも読んでくださってありがとうございます☺︎いただいたサポートは、記事のクオリティ向上に活用させていただきます。応援よろしくお願いします❦