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ディグ・モードvol.41「チェット ロー(CHET LO)」

チェット ロー(CHET LO)は、2020年に中国系アメリカ人デザイナーのチェット・ロー(Chet Lo)が設立したロンドン拠点のニットウェア ブランド。革新的なテクニックを使用した独特の尖ったニットがブランドのシグネチャー。90年代の日本アニメにインスパイアされたデザインを通して、彼はコンセプト、色、素材の衝突を楽しんでいる。


パンデミックの最中にCSMを卒業

2023年春夏コレクション(Courtesy of Chris Daw and the British Fashion Council)

チェット・ローは、ニューヨークで生まれ育った。ニューヨークのファッション工科大学とパーソンズ スクール オブ デザインで大学入学前のコースを受講した後、友人からロンドンのセントラル セント マーチンズ(Central Saint Martins以下、CSM)に出願するよう勧められた。高校を卒業後、彼はロンドンに移りCSMに入学。そこでニットウェア デザインを学んだ。

CSM在学中、彼はプロエンザ スクーラー(PROENZA SCHOULER)やメゾン マルジェラ(MAISON MARGIELA)などの有名ファッション ブランドでインターンを経験。「プロエンザにいる間、自己主張やテクニック、業界情報や専門性の重要性を学びました」とチェットは英国版『VOGUE』のインタビューで語っている。

パンデミックの真っ只中に卒業した彼は、すぐには仕事を見つけることができなかった。家賃を払うお金が必要で、やむを得ず自分のブランドを立ち上げなければならない状況に陥り、そこからチェット ローは始まったのだ。

やむを得ず始めたブランドが成功

(Courtesy of CHET LO)

学生の頃、チェットはシルエットやテクニックをはじめとするクレイジーなもの全般に夢中だった。しかし、これらは日常着とはまったく関係がなく、そのせいで人々が共鳴できていないように感じられた。実際、彼が卒業後に自身の作品を見たとき、使用したテクニックは気に入っていたものの、ショーとコンセプトだけを考えて製作していたため、日常で着用できなかった。

作った服を着られるようになりたいと思った彼は、自分でジャンパーをデザインして、少し遊んでみることにした。しばらく実験した後、ウェブサイトで販売をスタート。すると多くの注目を集め、ブランドの成長を後押しした。彼が得た反応は、最初に予想していたよりもはるかに大きかったのだ。

その後、デザイナーはロンドン拠点のインキュベーターであるファッション イースト(Fashion East)と協力し始めた。現在チェット ローは、ロサンゼルスのセルフリッジズ(Selfridges)やエイチ ロレンゾ(H. Lorenzo)、エッセンス(SSENSE)などで取り扱われている。

ニットウェアは数学的

2022年春夏コレクション(Courtesy of CHET LO)

CSMでニットウェアのデザインを学んだチェットにとって、その魅力はとても数学的だという点にある。ニットウェアといえば、アーガイルやケーブル ニットのプルオーバーがイメージされがちだが、テクニックを学べば今まで思いもよらなかったことでも設計できるようになる。そこにデザイナーは惹かれたのだ。

ブランドの代名詞となっている独特の尖ったニット デザインは、開発に大変な苦労があった。チェットは工業用ニットマシンを何か月も習った後、2年目に技術を覚えた。それは非常に難しいテクニックで、成功するにはかなりの計算が必要だった。自身が見つけた最も難しい糸で編んでみた結果、それが成功し、今日の象徴的なデザインにつながっている。

コンセプト、色、素材の衝突を楽しむ

『2nd Generation』(Courtesy of CHET LO)

チェットのデザインは、ノスタルジックな日本のアニメにインスピレーションを得ている。パンデミックの最中に作成されたコレクション『2nd Generation』は、彼が夢中になっていた『新世紀エヴァンゲリオン』の色使いやグラデーションにとても感銘を受け、ニットに再解釈したものである。

「私のデザインは、90年代のアニメや80年代のレトロフューチャー アート ムーブメントにかなりインスパイアされています。デザインを通して、コンセプト、色、素材の衝突を楽しんでいます」とデザイナーは『10 Magazine』のインタビューで語っている。

作品に使用するテクニックが大好き

チェット・ロー(Photography by Hidhir Badaruddin)

実のところ、チェットがニューヨークからロンドンに移った理由は、物価の高さだった。ロンドンは学費が安くても格式は高く、とくに彼はCSMの卒業生たちに共感した。その後、ロンドンが大好きになり、そこに留まる必要性を感じて以来、彼はロンドンを拠点に活動を続けている。

デザイナーは自分の作品を通して、臆することのない強さとエンパワーメントを植え付けたいと願い、本当に欲しい人のために作品を編むことに大きなやりがいを見出している。「自分の作品に使用しているテクニックが大好きです」と彼は『GRAZIA』のインタビューで語っている。

この記事は、フリーランスで翻訳や海外アパレルブランドの日本向けPRをしている𝐡𝐢𝐫𝐨𝐤𝐨が、自身のファッション業界に対する見識を広める目的で書いたものです。

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