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ディグ・モードvol.13「メゾン ジー シモーヌ(MAISON J.SIMONE)」

メゾン ジー シモーヌ(MAISON J.SIMONE)は、2019年にパリ在住のデザイナー、ジュード・フェラーリ(Jude Ferrari)が設立したファッション ブランド。自身の美学を「クロナッツ」と表現する彼女は、着用した人が大胆不敵だと感じられることを目的として、不条理をエレガントにするコレクションを製作している。


生まれてきた目的はファッション

2021年春夏コレクション(Courtesy of MAISON J.SIMONE)

ジュードは、フランスのパリ西部近郊に位置する街ヌイイ=シュル=セーヌ (Neuilly-sur-Seine)で7人兄弟の末っ子として生まれた。子どものころからの趣味は、アートと服作り。いつでもクリエイティブな彼女は、高校時代「変な格好をした女の子」と呼ばれていて、自分でも目立つスタイルが気に入っていた。

ファッションが好きだったが、彼女は最初からファッションデザイナーを目指していたわけではない。もともとジャーナリストになりたいと思っていたが、ある日、ハーバード大学を卒業した父からこう聞かれた。「趣味でファッションをしているのに、なんでファッションの仕事をしないのか」。

当時の彼女にはファッションは趣味であり、仕事にする考えは思いつきすらしなかった。父の言葉は、彼女に生まれてきた目的を果たすためのパワーを与えた。その目的とは、ファッションだ。その後、ロンドンのセントラル セント マーチンズ(Central Saint Martins以下、CSM)で学士号を取得するために、まずパリのリザア(LISAA)で準備コースを受講した。

2021年春夏コレクション(Courtesy of MAISON J.SIMONE)

CSM在学中、彼女は2年生と3年生の間にジャックムス(JACQUEMUS)とザラ(ZARA)、日本ではリトゥンアフターワーズ(WRITTENAFTERWARDS)でインターンを経験。最終コレクションを発表した際に、スワロフスキー(SWAROVSKI)からのスポンサーとインディテックス(INDITEX)の賞を獲得した。

卒業してパリに戻ったジュードは、アンディズ(UNDIZ)で働いた後、自身のブランドを設立。彼女にとって、すべての経験はブランドの立ち上げに不可欠なものであった。

クロワッサンのエレガンスと、きらめくドーナツの奇抜さのミックス

2022年6月に渋谷で開催したポップアップショップ(Photography by 𝐡𝐢𝐫𝐨𝐤𝐨)

ブランド名のメゾン ジー シモーヌは、ジュードがティーンエイジャーの頃に好きだったミュージシャン、Simone elle est bonneに由来している。デザイナーは「キッチュ」「シック」「カラフル」「キラキラ」「メイド・イン・フランス」をブランドのキーワードに掲げている。

ジュードは人間からインスピレーションを受けることが多く、カフェテラスでの人間観察が大好きだ。英国の写真家マーティン・パー(Martin Parr)の作品も大好きで、無意識のうちに多くの影響を受けていると彼女は説明している。

2022年春夏コレクション(Courtesy of MAISON J.SIMONE)

デザイナーが「クロナッツ」と表現する自身の美学は、パリのクロワッサンのエレガンスと、きらめくドーナツの奇抜さをミックスしたものだ。ジュードは、ファッションに不条理とユーモアをもたらす一方でエレガントさを残し、メゾン ジー シモーヌを身に着けた人に大胆不敵だと感じてもらうことを目的としている。

エレガンスについて語るとき、彼女にとって必ずしもフェミニンで美しいことを示す必要はない。「イヴ・サンローランは女性をスーツに着せることで、地球上で最もセクシーであることを見事に表現しました。実際、私がやろうとしているのはサンローランのジー シモーヌ版です。まさに、不条理なシックです」とジュードはフランス版『NYLON』で語っている。

彼女は女性をマッチョにしたいと考えており、コレクションでカウボーイに触れている。イメージはタバコを加えていて力強く、人に見られることを恐れない女性だ。メゾン ジー シモーヌの服を着たときに、新しいプレイリストを聴きながら通りを歩いているときのような強さを感じてもらうことがデザイナーの願いだ。

地球を尊重し、革新する役割を果たすために

2021年春夏コレクション(Courtesy of MAISON J.SIMONE)

メゾン ジー シモーヌは、積極的にアップサイクルに取り組んでいる。それはファッション業界において若手デザイナーは地球を尊重する考え方を創造し、革新する役割を担っているという彼女の考えに基づいており、コレクションは30~40%がアップサイクルされた作品だ。彼女は独自に開発したスモッキング技術で、すべてのコレクションで無駄のないパターンにしている。

生地は、ハイブランドの残布を扱いその利益を他の団体に寄付するアソシエーションLa Réserve des artsから仕入れ、ボタンとジッパーはすべてエマウス(慈善団体が運営するリサイクルショップ)で見つけたものだ。クリスタルは、スポンサーのスワロフスキーから余りものを提供してもらっている。

究極の夢はグッチのクリエイティブ ディレクターとの両立

ジュード・フェラーリ(Photography by 𝐡𝐢𝐫𝐨𝐤𝐨)

デザイナーの目標は、自分のブランドをジャックムスやマリーン セル(MARRINE SERRE)などと同じくらい有名にすること。そして究極の夢は、ヘッドハンティングされてグッチ(GUCCI)のクリエイティブ ディレクターになり、メゾン ジー シモーヌと両立することである。

この記事は、フリーランスで翻訳や海外アパレルブランドの日本向けPRをしている𝐡𝐢𝐫𝐨𝐤𝐨が、自身のファッション業界に対する見識を広める目的で書いたものです。

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