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ディグ・モードvol.88「レナータ ブレナ(RENATA BRENHA)」

レナータ ブレナ(RENATA BRENHA)は、2019年にロンドンを拠点とするブラジル出身デザイナーのレナータ・ブレナ(Renata Brenha)が設立したウィメンズウェア ブランド。自身のルーツであるブラジルの即興手法を服作りの基本とし、職人技に重点を置く彼女は、ファッション、食べ物、精神性の間の境界を歪め続けることに興味を抱いている。


素材や身体を実験することで声を発する

(Photography via London Fashion Week

2018年に英国王立芸術大学(Royal College of Art)でウィメンズウェア・ファッションの修士号を取得したレナータにとって、そこでの勉強はデザイナーとして独立するために不可欠だった。自身が興味を持つ分野をより深く掘り下げ、実験のプロセスを拡張し、デザインを通じて意見を発信していくことを後押ししてくれたからだ。

彼女にとってファッションとは創造する機会であり、素材や身体を実験することで声を発することを意味する。デザイナーの使命は、ラテンアメリカのルーツと「先住民族の生きた経験や重要な社会文化的運動」との関係を探ることだ。

(Photography by Auriane Defert)

たとえば、彼女の修士コレクション『Materialising Spirit』はメキシコに住む古代コミュニティの細やかな分析に基づいており、彼女が滞在中に出会った「食べ物のテクスチャと儀式」が着想源だ。

レナータはラテンアメリカのコミュニティにおけるテキスタイルを「テキスト」と定義する。その理由は、テキスタイルが着る人の身体の周囲に一種の「テキスト」を構築することにあり、それはコレクションにとって最も重要な要素のひとつだと彼女は説明している。彼女にとって素材とは、色や表面の状態を通じて物語を語り、儀式を実行し、歴史を追体験する手段なのだ。

ブラジルの即興手法が作品づくりの基本

(Photography by @asiawerbel

レナータのルーツであるブラジルは、作品にさまざまな影響を与えている。特徴のひとつは「ジャンビアーラ(Giambiarra)」と呼ばれる、周囲にある既存の素材から新しいオブジェクトや意味を作り出すブラジルの即興手法だ。彼女の作品にはその過程が目に見える形で残されており、それが衣服に独特の人間味を与えている。

人の手に大きく依存するテクニックを使用しているデザイナーは、生地に手を加えるプロセスを好む。たとえば、デヴォレ(生地に透かし模様を入れる際の代表的な加工法)のように生地を傷めたり、スモッキングのように生地を強化したりする方法である。

彼女はゴムや廃材など時間の経過がはっきりとわかる自然の素材を好んでおり、作品づくりのメイン素材として用いている。周りに廃棄物が溢れているため、必然的にアップサイクルをおこなっている状態だと彼女は説明する。また、レナータ ブレナは職人技に重点を置いている点も特徴だ。それはデザイナーと職人たちを結びつけ、コミュニティの発展に役立っている。

ファッション、食べ物、精神性の境界を歪め続ける

(Photography by Auriane Defert)

デザイナーはヴィーガンメニューを提供するレストランのコシナ ショーディッチ(Cocina Shoreditch)とアトリエを共有し、作業をおこなっている。彼女たちは協力して、創造的なプロセスに携わるすべての人々のための環境を構築しようと努めている。

レナータにとって食文化は主なインスピレーション源のひとつであり、 食べ物が研究のプロセスに影響を及ぼしている。その背景には、彼女がデザイナーの仕事と並行してパートナーと一緒に実行している、植物のみを使用した実験的な南米料理の食品プロジェクトがある。キッチンでの彼女の実験は、テキスタイルの選択や実験に影響を与えているのだ。

レナータ・ブレナ(Photography by Auriane Defert)

食とファッションは、質感、形、色、温度の点で非常に関連しているとデザイナーは説明する。バランスの取れたメニュー作りとコレクションのストーリーライン作成はよく似たプロセスであり、彼女にとって食べ物はファッションと同じほど文化やアイデンティティに関係している。

ブランドの今後について、クリエイティブ面ではファッションを探求し続け、作品にインスピレーションを与えてくれるコミュニティの声を伝える手段として利用したいとデザイナーは考えている。「私は特に、ファッション、食べ物、精神性の間の境界を歪め続けることに興味があります」と『PAPER JOURNAL』で語っている。

この記事は、フリーランスで翻訳や海外アパレルブランドの日本向けPRをしている𝐡𝐢𝐫𝐨𝐤𝐨が、自身のファッション業界に対する見識を広める目的で書いたものです。

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