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ディグ・モードvol.96「アルワリア(AHLUWALIA)」

アルワリア(AHLUWALIA)は、2018年にプリヤ・アルワリア(Priya Ahluwalia)が設立したロンドン拠点のブランド。母からインスピレーションを得てファッションの道に進んだデザイナーは、ロンドンの男性のワードローブにラゴスの活気とインドの職人技をプラスして、暗黙のルールがあるメンズウェアの限界を押し広げようとしている。


母の影響でファッションを好きになる

2023年秋冬コレクション バックステージ(Photography by Cris Fragkou)

プリヤはロンドン南西部でナイジェリア系の父親とインド出身の母親の間に生まれ、多文化家庭で育った。スタイリッシュな母の影響でファッションが好きになり、物心ついたときから自分のスタイルを模索し続けてきた彼女は、学生時代にナイキ(NIKE)の小さなバッグをカスタマイズしたり、2週間ごとに髪型を変えたりしていた。

「私はとても大きくてキラキラした竹のイヤリングをつけて、いつも制服を変えていて、スカートは短すぎました」とプリヤは『AnOther Magazine』で語っている。ロンドンのトゥーティング ブロードウェイ(Tooting Broadway)は、彼女が昔からネイルや眉毛を整えるために通い続けているコンゴのサロンがある、お気に入りの場所だ。

メンズウェアの限界を押し広げたい

2023年春夏コレクション(Photography via Fucking Young!

母からインスピレーションを受け、いつもファッション業界に進みたいと思っていたプリヤは、まずクリエイティブアーツ大学(UCA)エプソムで学士号を取得した後、UCAウェストミンスターで修士号を取得し、自身の名を冠したレーベルをスタートさせた。

学士課程での最初のプロジェクトはウィメンズウェアだったが、メンズウェアを試してみたらどうかと周りから提案されたことをきっかけに、方向転換。女性はさまざまな服を着る傾向があり、ウィメンズウェア シーンでは多くのことが起こっている一方、男性は昔から同じものを着てきたため、メンズウェアは挑戦的で先が長いとデザイナーは説明している。

2020年秋冬コレクション(Photography by Dominika Scheibinger)

「メンズウェアには暗黙のルールがあるので、私は限界を押し広げて、男性に色を着てもらい、少しリラックスしてもらいたいと考えています」とプリヤは『GQ』で語っている。

デザイナーはロンドンの男性がスーツやトラックススーツをミックスさせるワードローブを好んでおり、そこにラゴスの活気とインドの職人技を組み合わせている。たとえば、彼女はラゴスの砂の色を思い出させるバーントオレンジをいつも使用し、インドの染色やビーズ、刺繍がお気に入りの手法だ。

アップサイクルがビジネスの柱

2021年秋冬コレクション(Photography by Laurence Ellis)

アルワリアは既存の素材、デッドストック、ヴィンテージの衣類を使用して、デザインのディテールや特徴を作り出すことを試みている。それはプリヤの卒業コレクションから始まったものだ。

2017年にラゴスを訪れた後、当時学生だった彼女は、英国のチャリティーショップの残った寄付金で市内の古着市場から購入した、明らかにイギリスらしい格好をした露天商に出会った。彼女は好奇心に駆られて、デリーから80マイル離れたパニーパットに行き、「脱ぎ捨てられた首都」と呼ばれるその街に捨てられた衣服の山を記録した写真集『Sweet Lassi』を作成した。

『Sweet Lassi』(Photography by Priya Ahluwalia)

彼女はサステナブルな精神を今日のコレクションでも貫いているが、「サステナブルなデザイナー」というレッテルを貼られることは好んでいない。「私は環境活動家ではありませんし、今も学んでいますが、できる限りのことをしようとしているだけです」とプリヤは『GQ』で語っている。

毎シーズン、ブランドを進化させ続けたい

2021年ファッションアワードでのプリヤ・アルワリア(Photography by Gareth Cattermole/BFC // Getty Images)

2020年、デザイナーはLVMHプライズのファイナリストに選出された。その翌年には、英国ファッション協議会(BFC)が選出するクイーンエリザベス2世賞とBFC/GQデザイナー ファンドを獲得し、 ファッションアワードでは環境変革のリーダーに選ばれた。

今ではずっと自信が持てるようになったと説明するプリヤは、「毎シーズン、ブランドが進化し続けるのを見たいと思っています。私の周りには素晴らしいチームがいますし、今の業界には私の専門外のことをできる人たちがいます。これは数年前にはなかった贅沢です」と『10 Magazine』のインタビューで語っている。

この記事は、フリーランスで翻訳や海外アパレルブランドの日本向けPRをしている𝐡𝐢𝐫𝐨𝐤𝐨が、自身のファッション業界に対する見識を広める目的で書いたものです。

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