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ディグ・モードvol.7「ロイシン ピアス(RÓISÍN PIERCE)」

ロイシン ピアス(RÓISÍN PIERCE)は、デザイナーのロイシン・ピアス(Róisín Pierce)が設立したアイルランド拠点のウィメンズウェア ブランド。ゼロ・ウェイストに焦点を当てながら、アイルランドの伝統的なレースや刺繍を施したコレクションはオールホワイトで甘美だが、彼女が作品を通して発信する深いメッセージは決して甘くはない。


起点は女性に課せられた困難への怒り

「TWO FOR JOY」コレクション(Photography by Andrew Nuding)

ダブリン拠点のデザイナー、ロイシン・ピアスのデザイン プロセスは、スケッチやムードボードからではなく、生地そのものからスタートする。彼女はダブリンのナショナル カレッジ オブ アート アンド デザインでテキスタイル デザインを学び、2019年に卒業。学校では服の量産よりも生地の加工や処理が優先されたため、彼女はサンプルで何度も実験を繰り返した。

彫刻とテキスタイルを融合させるという究極の目的を持っているデザイナーは、過去と現在の両方でアイルランドの女性に課せられた困難や、女性の生殖に関する権利について、作品を通して触れている。

たとえば、デビュー コレクション「MNÁ I BLÁTH(ゲール語で、花咲く女性の意)」の起点は、マグダレン ランドリー(Magdalene Laundries:カトリック教会によって国家資金で運営され、1990年代に完全閉鎖されたシングルマザーの強制労働施設)に対する怒りだった。

衣服は深いメッセージのシンボル

「MNÁ I BLÁTH」コレクション(Courtesy of RÓISÍN PIERCE)

ロイシンは、そこで耐え忍んだ女性たちが製作した複雑な刺繍やレース細工を世に知らせるため、その方法を見つけようとした。そこでの出来事を調べれば調べるほど、テキスタイルと関連があることに気づいた彼女は、認知向上を目指して、かつて女性たちが製作してきた伝統技法をデビュー コレクションに取り入れた。

「衣服は単に着用するもの以上であるという考えが好きです。それはつまり、深いメッセージの目に見えるシンボルになり得るということです」と『i-D』のインタビューでデザイナーは語っている。

彼女は才能ある若手デザイナーやクリエイターの登竜門として知られる、第34回イエール国際モード・アクセサリー・写真フェスティバルに選ばれ、地元住民の投票によるイエール市民賞と、シャネルが協賛するメティエ ダール賞をダブル受賞した。

持続可能性は新しいラグジュアリー

(Photography by Deo Suveera)

アイルランドの歴史とは別に、ロイシンのコレクションには持続可能性という重要なテーマがある。デザイナーはゼロ・ウェイストにフォーカスしており、生地を隅々まで使用するように努め、切れ端でさえも飾りに使用する。服は少量ずつアイルランドで手作りされ、彼女はこのプロセスをアンチ ファスト ファッションと見なしている。

ロイシンはサステナビリティに関して、「それは現在、教えられ、実践され、期待されていますが、持続可能でないデザイナーはすぐに困難になると思います。バイヤーや消費者は、業界が生み出している過剰な廃棄物を認識しています。この姿勢により、サステナビリティは新たなラグジュアリーとなるでしょう」と『THE LAST MAGAZINE』で語っている。

ロイシン・ピアス(Photography by Ellius Grace)

2022年、彼女は『フォーブス(Forbes)』誌が毎年発表している、30歳未満の特筆すべき人物「フォーブス・サーティ・アンダー・サーティ(Forbes 30 Under 30)」に選出された。また、若手デザイナーの支援を目的とするLVMHプライズのファイナリストに選ばれている。作品を通した女性の権利の啓蒙やサステナビリティへのアプローチは、今後も注目に値する。

この記事は、フリーランスで翻訳や海外アパレルブランドの日本向けPRをしている𝐡𝐢𝐫𝐨𝐤𝐨が、自身のファッション業界に対する見識を広める目的で書いたものです。

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