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ディグ・モードvol.43「シモーネ ロシャ(SIMONE ROCHA)」

シモーネ ロシャ(SIMONE ROCHA)は、2010年にアイルランド出身のシモーネ・ロシャ(Simone Rocha)が設立したファッション ブランド。コレクションはアイルランドの自然やカトリックの儀式の装いが着想源となることが多い。2022年、自身で初めてキュレーションした展覧会を開催した彼女は、アーティストの作品からデザイナーとしての影響を受けている。


洗礼式から葬式まで、カトリックの装いに着目

2023年秋冬コレクション バックステージ(Photography by Christina Fragkou)

シモーネは、ファッションデザイナーの中国人の父と、彼のビジネスをマネジメントしていたアイルランド人の母の間に生まれ、アイルランドで育った。彼女はアイルランドの自然に作品のインスピレーションを得ているほか、カトリックの儀式の装いにも目を向けることが多い。

2010年に発表したセントラル セント マーチンズ修士課程の卒業コレクションは、アイルランド西海岸沖にあるアラン諸島の葬式の装いが着想源だ。以来、洗礼式から結婚式に至るまで、彼女はカトリックの儀式の装いをコレクションに取り入れてきた。「それはアイルランドで育ったことと、通夜のようなものの重みから来ていると思います」と彼女は『ELLE』で語っている。

コレクションに広がる母性

2022年春夏コレクション(Photography by Jacob Lillis)

シモーネはふたりの娘を持つ母親であり、その母性は彼女のコレクションにも広がっている。2022年春夏シーズンは、おくるみやマタニティブラを連想させるコレクションを作成し、産科病棟という閉ざされた世界の衣服に光を当てた。スポットが当てられていないものを探求する衝動に駆られた彼女は、ランウェイに値する魅力をこれらの衣服に与えることにしたのだ。

子どもの誕生は、シモーネにある種の再生をもたらした。 娘たちのために強くなり、自分ができることを彼女たちに示したいと思ったシモーネは、自身の仕事に誇りを持ち、より真剣に取り組むようになったからだ。娘たちの無邪気さや素朴さもまた、デザイナーに刺激を与えている。

展覧会で女性アーティスト間の会話を促進

2023年春夏コレクション バックステージ(Photography by Kasia Bobula / WWD)

2022年、シモーネは自身がキュレーションした初のエキシビション『ガールズ・ガールズ・ガールズ(girls girls girls)』を開催した。アイルランドのリズモア キャッスル アーツ(Lismore Castle Arts)が会場となり、彼女は現代の女性らしさに破壊的なビジョンをもたらす作品をキュレートした。

アーティストのリストには、シンディ・シャーマン(Cindy Sherman)、ロニ・ホーン(Roni Horn)、フランチェスカ・ウッドマン(Francesca Woodman)などの広く知られているアーティストもいれば、ハーレー・ウィアー(Harley Weir)、ペトラ・コリンズ(Petra Collins)、シャーナ・オズボーン(Sharna Osborne)などの新鋭アーティストもいた。

2022年春夏コレクション(Photography by Jacob Lillis)

幅広い世代のアーティストの作品を展示した背景には、「何十年にもわたる女性アーティスト間の会話を促進する」というシモーネの指針があった。若者として年長者を尊重すると同時に、自己を確立させた者として新しいものや若者にオープンになることが重要だとデザイナーは考えている。

「私にとって面白いのは、確立されたアーティストには若さを感じる一種のいたずっぽさがあることです。だから、ちょっと挑発的な感じもありますが、『ガールズ ガールズ ガールズ』というタイトルにしたかったんです」と彼女は『VOGUE』のインタビューで語っている。

アーティストの精神がコレクションに染み込む

シモーネ・ロシャ(Photography by Joanne O’Brien)

キュレートしたアーティストの作品はシモーネにインスピレーションを与えており、展覧会の仕事はデザイナーとしての彼女に影響を及ぼしている。「彼らの作品は、伝統的であると同時に現代的でもあります。それをおこなう精神が、実際にコレクションに染み込んでいると思います」とデザイナーは『AnOther Magazine』で語っている。

この記事は、フリーランスで翻訳や海外アパレルブランドの日本向けPRをしている𝐡𝐢𝐫𝐨𝐤𝐨が、自身のファッション業界に対する見識を広める目的で書いたものです。

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