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メゾンとミーム ヴァージル・アブロー著『ダイアローグ』について


ヴァージル・アブロー 著,平岩 壮悟 訳『ダイアローグ』を読了。2021年に41歳で早逝してしまったヴァージルの思想と言葉は、プラットフォーム資本主義の現在において預言のようにすら思える。
Off-White™の根幹はトロイの木馬のようなミーム、つまりインターネット的な想像力がベースにある。

p.43「オフーホワイトはまっさらなキャンバスです。無数のアーティストがそれぞれの価値と意味を書き加えることができる生成り(オフホワイト)の素材なんです。オフーホワイトは現代的なファッションブランドのありかたであり、私にとってのトロイの木馬なんです。」

ヴァージル・アブロー 著,平岩 壮悟 訳『ダイアローグ』,アダチプレス,p.43,2022

という言葉は、極めてミーム的。

p.54「斜線は無印ですよね。私は句読点もブランドを差別化するためのツールとしてよく使いますが、根幹にあるののは無印性を受け入れるという考えかたです。匿名性についても同様に捉えています。アノニマスデザインです。」

ヴァージル・アブロー 著,平岩 壮悟 訳『ダイアローグ』,p.54,アダチプレス,2022

社会に偏在する自明のアイコンを、ブランドのイメージとして書き換えること。

ジャック・セルフ「『朝に撃たれたいですか、それとも夜に撃たれたいですか?』というような、答える側に権限がない質問に対して、適当な答えはありません。そうした状況下において権力を弱体化させる唯一の方法は笑いだ (中略)。ユーモアとロジックはいずれも知性の一形式ですが、相反するものとして考える(中略)。ユーモアとロジックはいずれも知性の一形式ですが、相反するものとして考えることが重要だと思います」

ヴァージル・アブロー 著,平岩 壮悟 訳『ダイアローグ』,アダチプレス,p.106,2022

これは、サッチャーが唱えていたTINA(There is no alternatives)=「この道しかない」を想起させる。選択肢という隘路が絶たれる時、ユーモアを持って図式そのものを脱臼することの重要性。

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