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ふらり旅#3-2(京都-広島)

4月30日
目が醒めるとそこは真っ暗で、外の明るさを感じなかった。
隣から聞こえてくるかすかなイビキに「ああ、 家じゃないんだった」と手探りでメガネを探す。
京都でよくお世話になる「IMAYA Hostel」は布団の寝心地も、洗面所の綺麗さも最高で、中でもオーナーが入れる珈琲の美味しさが人を惹きつける。
リビングスペースはカフェと併設されているので、朝も夜も近所の常連さんが、代わる代わる顔を出す。
ゲストハウスの常連になれば、ご近所さんとも知り合いになれるわけだ。

「よお眠れました?」
毎朝起きる度に、オーナーのナオトさんが挨拶のように確認してくれる。
「めっちゃ良く寝れました。朝ごはん、もらってもいいですか?」
「もちろん!」
 そう言って出してもらう朝ごはんも、これまた美味しくて、ホットサンドとシリアルとヨーグルト、それに好きな硬さで出してくれるゆで卵。
至福の時間に浸りながらご飯を食べていたら、常連さんだという近所のおばあちゃんが話しかけてくれた。
最近の京都旅行者事情や京都市長のこと、それと男は膝小僧を出してると体によくないということ。
世の短パンの男性方、おばあちゃんたちは心配そうな目で見守ってるみたいですよ。

たくさんお話してくれたおばあちゃんに別れを告げて、
私は次の場所へ旅立つためのパッキングを始めた。
もともとが大雑把なこともあり、とりあえず詰め込みつつも苦戦し、やっとのことでパッキングし終えた頃には、10時近い時間だった。
「じゃあナオトさん、また来ます」
「よろしくお願いします!」
そう明るく送り出してくれるのが、ナオトさんなのだ。

出かけに一緒になったアメリカ人の男性と、近くの地下鉄まで歩いて向かう。
これから写真中心の芸術祭を見に行くと言った彼は、写真を撮るのが趣味らしい。今後に活かせる何かを盗んでくるつもりのようだった。

曇り空でじっとりとした空気を纏う京都での、キャリーケースをひきながらの移動では、身体を随分と疲れさせた。
新幹線の座席についた頃には、まだ午前中だというのにどっと疲れを感じていた。

車窓から流れる景色が、鈍色から青く抜けた色へと変わっていく。
広島についた頃には、外は既に快晴だった。

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