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夜に沈む

冬の夜に落ちた。

躓いた足先に、記憶がずっしりと纏わりつく。
息をはく音が冷え切った耳に酷く響いて、
青鈍色に染まっていた視界は白く霞んだ。
見上げた先で漂う寒月に、鼻先がつんと痛む。

くっきりと地面に映し出されたはずの影は、
暗闇と混じりあって溶け込んで、
境目が無くなっていく。

ああ、この夜に落ちたのはいつのことだったか。
昨日なのか、
ほんの数日前なのか、

それとも遠い昔のことなのか。

暁は未だ来ず、それぞれの真夜中を泳く人の息遣いを微かに感じるている。
いずれ訪れる朝焼けに背を向けて、私は北へ向かって歩みを進めた。

今はまだ、この日々に溺れていたいから。

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