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ふらり旅

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ふらりと旅した時の一瞬を、切り取って綴っています。
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#旅

ふらり旅#11(名古屋)

久しぶりに潜る新幹線の改札に、テンションが上がった。お弁当は何にしよう、お土産は何を買って行こう。あれこれ迷うには、新幹線の出発時間が迫っていたため、結局お弁当ではなくコンビニのおにぎりを握りしめ、五個入りのもみじ饅頭を買った。 よく旅をしていた頃とは新幹線の車両も変わり、乗り込んでみると以前より車内が明るい気がした、まだ新しい鮮やかな青色のシート。適度に固くスリムになった座席。コンセントは窓側の壁ではなく、肘掛けの下。20代の頃に何度も乗った新幹線の記憶も、だんだんと薄ら

ふらり旅♯9(東京)

急流に飲み込まれるように人の波にさらわれて、あれよあれよと流されるうちに、自分でもわからない所まできた。掲げられるサインは複雑で、向かう場所は東か西か、はたまた北か南か。行きたい道がどこにあったのか、私にはもうわからない。 ふらり旅♯9(東京) 新幹線のアナウンスが終点を告げて、車窓から見える景色は少し前から乱立するビルで溢れかえっている。見える空はずいぶんと狭くなっていた。 到着した駅に溢れかえったコインロッカーはどれも赤いランプ、訪れる人の多さを物語っている。だれが

ふらり旅#8(愛媛)

吹き荒れる風によって、オイルでオールバックにした髪の毛が右へ左へ踊り狂う。2月中旬、日中は暖かくなるといっていたのに、ずいぶんと冷たい風だった。この旅行最後の場所、愛媛県大洲市にある「臥龍山荘」の庭園にて私は寒さに震えていた。 来る前のニュースでは、四国は暖かくなると言っていたけれど、上陸してみると冷たい風と曇り空で凍えることになった。途中休憩を何度か挟みながら、4時間ほどかけて目的地に到着した。古民家をリフォームしてお店をしているところが目立つ、大洲市は昔と現代が入り混じ

ふらり旅#6(島根)

塩素の匂いがした。 備え付けのシャワーで髪を洗おうと、蛇口をひねった。勢いよく飛び出してきた水は、肌に痛みを残し床に向かって流れ落ちていった。 桶を床に置く「かこん」という軽快な音が、湯けむりで少し霞んだお風呂場全体に響き渡る。 真夜中近くの露天風呂は、あかりに照らされた湯気がその向こうに広がる闇によく映えて、別の世界のようだった。 吹き付ける風に連れられて、水面を滑るように進む湯気。 無色透明なお湯に、たっぷりと浸かる。不意に触れた肩が、いつもよりつるりとして

ふらり旅#5(栃木)

 拭っても拭っても、額や首にジワリと汗が滲む。夏の駅のホームは、これからどこかへ出かける人たちの熱気やら、異常なほど高い気温によって蒸されていた。  『大変混雑しております』  北千住から特急に乗ろうと、チケットを買いに券売機へ向かうと手前に赤字で大きく書かれていた。  「そうか、世の中は今日からお盆だったか」  頭の片隅にあったはずなのに忘れてしまっていた事実に、思わず声がでた。  全席指定の列車は、午後まで空きがないというので駅構内で2時間ほど時間を潰すこととなった。コー

ふらり旅#3-4(山口)

5月1日 熱烈な太陽の日差しが、その日も朝から降り注いでいた。 青い海を背景にして、新緑美しい木々が生い茂り、その中を赤い鳥居がいくつも列なり続いている。 ずっと行ってみたいと望んだ「元乃隅稲成神社」は遠くで見る分には美しかった。 離れた場所にぽつんと一つだけ置かれている大きな鳥居は、上に賽銭箱がついており、そこにお金を投げ入れることができたらご利益があるとか、ないとか。 GWで集まった家族連れが投げるお賽銭が、箱の中に吸い込まれるたびに周りから歓声が上がっていた。 そ

ふらり旅#3-3(広島)

続4月30日 快晴の広島は、太陽が夏の熱を持って照らす。 本日の宿へ移動するため、広島駅から白島を目指す。 ほどなくして、和風建築でありながら可愛さを残す、ゲストハウス碌にたどり着いた。 住み込みのスタッフも多く、一人で切盛りされていた京都のゲストハウスとは打って変わった空間に異なる居心地の良さを覚えた。 縁あって、ここ数年で何度か広島を訪れるようになった。 宮島へは3回ほど足を運んだが、なぜか毎回干潮で、あの海に浸かった朱色の鳥居を見ることがなかなかできない。 (干潮満

ふらり旅#3-2(京都-広島)

4月30日 目が醒めるとそこは真っ暗で、外の明るさを感じなかった。 隣から聞こえてくるかすかなイビキに「ああ、 家じゃないんだった」と手探りでメガネを探す。 京都でよくお世話になる「IMAYA Hostel」は布団の寝心地も、洗面所の綺麗さも最高で、中でもオーナーが入れる珈琲の美味しさが人を惹きつける。 リビングスペースはカフェと併設されているので、朝も夜も近所の常連さんが、代わる代わる顔を出す。 ゲストハウスの常連になれば、ご近所さんとも知り合いになれるわけだ。 「よお眠

ふらり旅#3-1(京都)

4月28日 急に目が覚めた。 カーテンの向こうで、登り始めた朝日が輝いているのが布団の中に居てもぼんやりと確認できた。 日中は夏のような日差しに初夏を感じるが、やはり朝方はまだ寒いようで、首に巻いたストールとカーデガンの隙間から、冷たい空気が肌に触れた。 前日に慌てて詰め込んだバッグを連れて、私は旅にでた。 地元の小さな駅からでもキャリーバッグをひいて電車に乗る人が目につく。 世はゴールデンウィークの初日だった。 太陽が熱烈な視線を送る中、京都にて2つのお寺をみて回った。