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ふらり旅#8(愛媛)

吹き荒れる風によって、オイルでオールバックにした髪の毛が右へ左へ踊り狂う。2月中旬、日中は暖かくなるといっていたのに、ずいぶんと冷たい風だった。この旅行最後の場所、愛媛県大洲市にある「臥龍山荘」の庭園にて私は寒さに震えていた。

来る前のニュースでは、四国は暖かくなると言っていたけれど、上陸してみると冷たい風と曇り空で凍えることになった。途中休憩を何度か挟みながら、4時間ほどかけて目的地に到着した。古民家をリフォームしてお店をしているところが目立つ、大洲市は昔と現代が入り混じる町だった。今回の旅で泊まった宿もまた、同じように昔と今が支え合うような場所だった。NIPPONIA HOTEL 大洲 城下町は、なんとも美しい佇まいの宿で、滞在中はその空間を存分に堪能することができた。

大洲城下町の街並み

行ってみたいお食事処があったのだが、どうやら私が訪れる予定の日は定休日のようで、下調べの重要性を知った。また大洲へ訪れる理由ができた、と自分を説得し、結局朝晩とHOTELで食事をした。どちらも美味しく、食後はしばし余韻に浸った。食べ物に執着はない方なのだが、旅をする上での食事も大事なのだと思い直した。夜に食事をしたLE UN(ルアン)は、宿泊者以外でも食事をとることは可能なようなので、少し値段もするけれど、近くへ寄った際はおすすめの場所である。佇まいも美しく、料理も美味しくそして見た目から魅力的だった。

宵のうちのLE UN(ルアン)

今回の旅の最後の場所にして一番の目的の一つ「臥龍山荘」は、繊細で工夫が散りばめられた場所だった。複数ある部屋のどの部屋もそれぞれの工夫が施されていたが、中でも「霞月の間」が私には響いた。ろうそくと丸窓で表現される月と、霞のような違い棚。宵の入りだからと蝙蝠があしらわれた襖の取っ手。どの場面を切り取っても、学びに溢れる空間だった。

花頭窓にある鳳凰の透かし彫り

冷たい風が荒れ狂う中、帰路に就いた私は久しぶりの旅の余韻に浸っていた。慣れない土地と慣れないイントネーション、知らないことを知ることの面白さ。旅をすることの面白さを、再確認した旅でもあった。

今後はもう少し旅をすることも、気軽になってくるだろうか。
次の旅に早く出たい気持ちが、心の隅で小躍りを続けている。


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