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この恋を存在させたかった


久しぶりに会う友人はバイト終わりなのに笑顔を見せてくれた
本当はご飯屋さんでのんびりしたかったが想像以上の混み具合
「金晩なの忘れてた」
すっかり春休みに毒されている
曜日感覚がない

結局ラーメンでササッとご飯を済ませて、スタバでのんびりすることした


席に着いて、各々ドリンクを頼んで、話したいことがありすぎるなあなんて思いながら
「え、ねぇ、結局あの時言ってた人とはどうなったん??」
そうやって話はスタートした
そこから身長ってやっぱり見ちゃうよねとか雰囲気って大事だよねとかよくある話をした

どんな流れだったろうか
「私、実は高校の時好きな人いたしな〜」
なんて零してしまった
圧倒的な馬鹿である

当然、向こうは
「え!?誰!?!?」
になるわけで

「理系?」
「うん」
「何組?どっち?同じクラス?」
「同じクラス」
「えー!当てたい!!」
「大丈夫、絶対当てられへんから」
「1人候補いるかも、A君?」
「違う」


「当てるまで帰られへん!!」
そう言われてクラス写真を見ながら質問攻めに遭う
「好きな人がいちばん盛れてるやつにしよー」
この辺までは余裕
「Bくん?」「違う」
「Cくん?」「違う」
「このままじゃ虱潰しで当てられるからあと3人ね」
「えー!外せへん!!Dくんとかは盛れてないもんな」
「あーDくんどこや?見てもなかった」
「じゃあDくんも違うー」
「Eくん」「違う」
「Fくん」「違う」
「Gくん」「違う」
「はい、終わりー!」
と言っているのに
「え、ねぇ高二何組?」
とか言ってまだ攻めてくる彼女の問に素直に答えてしまう私ったら優しいね〜

「違う人はほんまに違うって言ってる??」
「うん、てか私嘘下手やから反応でわかると思う」
「えー男子ほとんど言ったで?もしかして女子?」
「んー?どうかなー??」
「○○ちゃん?」
「違う」
「いつ知り合った?」
「高二。記憶ないだけで演習被ってたかも、、」

「女子やったら1人確信あるかも」
「えー当てられたら困る」
この辺からボロが出始める
男子にはそんなの言わなかったもんね
「その人には彼氏いるからさー」
なんてもうバラしたようなもんじゃん
テンパリすぎ

私から逆質問が始まる
数人の女子の名前を挙げて「違う」と言われ降参
「多分ね、合ってるよ」「なんでわかったの?」
「女子?で濁したから女子に焦点当てて探したら盛れてたからこの子かなって」

「あ、誰か言わん方がいい??」

「もういいよ、だって合ってるもん」

突然の告白に彼女は共感を示してくれた


「はあああ言うつもりなかったのに!back numberなんて聴いてるから!!言っちゃったよ!!!」
back numberに対しあまりにもとばっちり過ぎる発言をして顔を覆い隠す

「初めて言った、墓場まで持ってくつもりやったのに〜〜!」
「えぇ!初めてが私でよかったん?」
「そんなん言うたらまずい人に好きな人おるなんて言わんよ」
彼女は踏み込みすぎたと言うけれど、異性同性関係なく好きな人の話をすることがびっくりするぐらい恥ずかしかった

「やばい、耳熱い」
「ほんまや笑 水和ちゃん耳まで真っ赤」

恥ずかしい
恥ずかしくてたまらない
世の片想い中の人ってみんなこんな思いしながら「好きぴがさ〜」とか言ってるの?信じられない尊敬する

多分、自ら好きな人の話をするのって数年ぶりだ

本気で片想いしたのって多分小学生以来な気がする
その男の子のことは4年ぐらい好きだった

「えぇ、まって、ほんまに恥ずかしい」
熱くなる頬の感覚に
あ、恋ってこういうもんなんだ
と思った

「まあ恋って認めてないけどね?憧れ以上恋未満」
「何それ笑 初めて聞いた笑笑」
そんな照れ隠しをした
もう手遅れだよね、だって体あっついもん


そのまま思い出話もして閉店と同時に店を出た
友達を見送り電車に乗る

DMに写真を送るのと同時に連絡をする
赤裸々に話してごめん とか
割とどうかしてた とか
全然引いてくれて構わない とか
あなただから言えた とか
でも嫌な気持ちさせてたらごめん とか

そしたら彼女は
聞きすぎて反省してる とか
珍しいことじゃないし同じ気持ちになったことあるから共感できた とか
また語ろうね とか
でも話してくれて嬉しかった とか
水和ちゃんの乙女な一面が見れたと言ってくれたのが何より嬉しかった

あの悶える私もこの世にいる恋する乙女のひとりなんだって嬉しくなった


本当は多分どこか聞いてほしかった

本人にも言ったけどこの子に話したらまずいと思ってたら「好きな人がいた」なんて言わなかった
言ってしまった時点で嘘はつかないつもりだった
どうせ、この手の嘘は苦手だし

私はこの恋が朽ちていくことが多分どこか怖かった
自分の恋を誰かに認めて欲しかったのだろう

誇れる気持ちではないかもしれない
禁忌だと言う人もいるのかもしれない

性別に関係なく、友人だと思っていた人から恋愛的な好意を向けられることに不快感情を示す人の気持ちはよく分かる、私もそのひとりだから

だから本人に伝えればきっと負担をかけてしまう
彼女の幸せを願うからこそ本人に伝える気はないけれど
どこかでこの恋を存在させてほしかった

誰かを愛するというその素敵であるはずの感情を私も誰かに受け入れてほしかった
その気持ちがきっと溢れてしまった

「言ってくれたらよかったのに」
というその言葉に
あの時気づいていたかったな
と思えるのは攻めてもの救いなのかもしれない

もうあの子のことは忘れたいのに、
忘れようとして“普通”に焦がれて異性とデートをする度に抱く違和感が苦しかった
ここ最近そんな日々が続いていた

逃れたかった
彼氏いないの?
とか
1回付き合ってみれば?
とか
そういうしがらみの全てから

溢れてしまった

もう、偽れなかった

引かれるかもしれない
他の人に対しては何も思わないのに
自分に対してだけは気持ち悪いと思う

それでも、自分は残念ながらそんな人間だった

それを吐き出してしまった



こうして誰かにだけ寄りかかるのって自分がいちばん嫌いな人の形なのに

「あなたにしか言えないの」
って呪いだから

私は身勝手にまた人を傷つけてしまったかもしれない
あの子の心にモヤをかけてしまったかもしれない

私はずるい
自分だけ楽になろうとしている

この恋を存在させてほしい

なんてとんだわがままだ


ぐるぐるぐるぐる考えて
これが異性間の話ならこうはならないのかと思うと
やっぱり私は普通になりたかった

たったひとつのこの小さな恋慕が、堂々と存在できる日は来るのだろうか


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