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日記5 美容室の夫婦に説得された。

僕は大学2年生。退学を考えている。

大学近くの美容室に行った。夫婦で営んでいて、主におじさんがこなし、嫁さんが補助をしている。もうはじめて30年くらい経つらしく、慣れた風で大学生向けの話をしてくれる。
学部や研究室のこと、授業や卒業後のこと・・・

そうなったもんだから、僕が中退を考えていることも言ってしまった。すると、おじさんが冷静にわけを尋ねて、ああだよこうだよと自分の見聞を交えて話してくれた。シャンプーされながら嫁さんにたしなめられたりもした。
おじさんと会話を続けるために始めた話題だったが、なんだか終わりそうにないまま、気づいたら説得のような形をとって、客がいないため散髪が終わっても続いていた。

「退学ではなく、休学が良い。なぜなら社会における大学の重要さを体感できるからだ。」
おじさんの主張はこんな感じ。

夫婦二人とも、店員じゃなくてある父母として接してくれているみたいだった。距離は近くとも対等ではない立場から、利害じゃなく僕が見られている感覚があった。

話し続けて頭が疲れてきたころ(緊張感のある会話はすごい疲れる)
嫁さんが、「最近うちの長男が退学するとか言って、すごい心配だからだめだよって止めてたんだけど、起業する、今じゃなきゃダメなんだって揉めて、結局いまは休学にさせているの。そんな時にうちに来たから、なんか長男と重なる」
みたいなことを言った。こんなに熱くなったり、おじさんの考えが整理されていたりしたのは、彼らの息子のせいらしい。

僕は結局1時間以上話をした。その最中たびたび「気持ちは変わりそうにないなあ」と思っていた。むしろ、批判されるほど強固になっていく感じがあった。不安が増していきそうなのに、不思議である。

あんなに熱心に親身になってくれた夫婦に申し訳ないが、退学への意思は変わらない。
しかし、おかげで解決しなければいけない質問ができた。
「人生はまだ長いのだから、卒業まで待てば良いじゃないか」
「なぜ休学ではいけないのか」

今はこう答えておこうと思う。
もう大学にやり残したことは無い。ここにいる理由がないから行くのだ。



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