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読書感想文:宗教改革の物語−近代、民族、国家の起源

あるいはキリスト教と聖書の入門という言葉も付け加えられると、まず思いました。また、現代につながる近代を知るための重要な情報がまとめられた貴重な一冊ではないかとも思いました。

さて、世界史の中で、宗教改革という単語を目にしたことはあると思いますが、実のところ何が起こって何が変わったのかを詳しく知る機会はほとんどないかと思います。神学部にでも行かない限り。

そして何を隠そう、作者は同志社大学大学院神学研究科を修了したプロテスタントの佐藤優という人物です。この方については、私よりも存じている方が多くいると思いますのでこれ以上の紹介は割愛させていただきます。
初めて目にした方のためにもう少し紹介しますと、元外務省職員で、北方領土問題も担当した事があり、鈴木宗男氏と連座で逮捕された事がある、ロシア語が堪能な作家さんです。

本書はとにかく情報量に圧倒されます。副題にもあるように、宗教改革の一連の流れの中から近代に連なる概念や思想が誕生していく様子が克明に描かれていて、まえがきと第一部だけでもこれ以上どんな情報があるのだろうと思わずにはいられませんでした。

なにせ宗教改革に至る経緯を16世紀からではなく、14世紀後半から始めているのですから。なぜそこまで遡る必要があるのか。それは宗教改革の中心となる人物の思想に影響を与えた人物がおり、その人物はまた別の人物に影響を与えて、、、という人と人の流れの一連の中から宗教改革が起こったと捉えているからです。この辺りは是非とも本書を読んでいただきたいです。

冒頭で作者をプロテスタントと紹介しましたが、では、プロテスタントとカトリックは何が違うのか?プロテスタントは何に抗議したのか?

なぜ分裂したのか?どうして分裂は避けられなかったのか?

この疑問についても、現代日本からは見えない、当時のヨーロッパ社会の情勢が丁寧に描写されている事で、必然の抗議、避けられない分裂だったのだと納得させられました。

本書は教会が分裂に至るまでの教会史を辿ることができるので、キリスト教の入門書と言えます。また、宗教改革者たちが抗議の際に根拠とした聖書箇所を引用し、それが当時どのよう解釈されたかを解説していることで、聖書に何が書かれているのかと少し触れる事ができます。この点で聖書の入門書と言えます。

いずれにしても、現代日本で生活していると知る機会は殆どないのではと思われる情報がギュッと詰まった一冊です。


最後までお読みいただきありがとうございます。

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