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2種類のアイデア: その2 「コミュニケーションアイデア」

「コミニケーションアイデア」とは、「プロダクトアイデア」を対象顧客に伝え、独自性と便益を自分事として認知して頂き、購買意思を形成して頂いて、購買行動を起こしてもらうまでの訴求と体験提供の「アイデア」を意味します。「コミュニケーション(訴求と体験)」も、独自性と便益との組み合わせで成り立っています。

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コミュニケーションの独自性とは、広告訴求、リアルイベント、キャンペーンの仕組みなどにおけるクリエイティブの独自性を指します。理解しやすい例として広告訴求を取り上げると、そこで使用される言葉、ビジュアル、映像、ドラマ、ストーリー、タレントなどに既視感のない独自性があるかどうか、非代替であるかどうか、ということです。前項で「独自性とは注目に値すること」と述べましたが、広告訴求のクリエイティブに独自性がないと、振り向いてもらえません。
一方、コミュニケーションの便益とは、広告を受け止める対象顧客が具体的な便益を受け取れることを意味します。クリエイティブな(独自性のある)広告訴求に接触すること自体が楽しい、面白い、心地良いといったプラスの要素をもたらすか、ということです。コミュニケーション自体に独自性があり、またそれに接すると便益が得られること、この2つの条件を満たすのが、「コミュニケーションアイデア」です。
古い事例ですが、国民の多くが記憶している成功事例としてソフトバンクを取り上げると、同社は2006年にボーダフォンを買収し、広告に当時人気の高かったキャメロン・ディアスやブラッド・ピットという外国人タレントを起用し、2007年からは“犬のお父さん”が登場する「白戸家」シリーズなどのテレビCMを展開して、大きな飛躍を遂げました。
NTTドコモ、KDDIという巨大企業に、後発として「コミュニケーションアイデア」で強い独自性を訴求して成功した事例ですが、2008年7月からはiPhoneの独占販売を実現したことに注目しなければなりません。この後、2012年にKDDIでもiPhoneが発売されるまで、このiPhone独占販売が圧倒的な「プロダクトアイデア」として、ソフトバンクの成長を支えたと言えます。
しかしながら、ここで混同してはいけないのは、コミュニケーションの成功と、「プロダクトアイデア」自体の成功です。
話題になる広告訴求には独自性があり、広告自体の面白さなどが便益として伝わっています。そうした広告はソーシャルで拡散され、評価されて広告賞を受賞したりしますが、必ずしも商品やサービス自体の購買に結びついているわけではありません。ソフトバンクは、「コミュニケーションアイデア」と「プロダクトアイデア」を見事に組み合わせて大成功しましたが、ヒットしていると言われるテレビCMの多くが、広告訴求が購買に結びつかないという問題を抱えています。
「コミュニケーションアイデア」は、独自性で注目を集めたとしても、その便益がプロダクト自体の便益に結びついていないと機能しません。広告の面白さやエンタメ性だけが便益として受け止められ、プロダクトの便益にひもづかず、購買に繋がらないのです。
過去のC Mや広告大賞作品などをネットで見てみましょう。現在、残っているプロダクトやサービスが少ないことに気づかれると思います。このような賞をとった広告の多くは「コミュニケーションアイデア」である広告訴求そのものに独自性とエンタメ性やアート性という便益があったために、多数から称賛されたのです。しかしながら、その広告が対象としたプロダクトやサービスの「プロダクトアイデア」を伝えていないのです。多大な費用をかけて実行した広告が、広告自体を売っただけとも言えます。
繰り返しになりますが、「プロダクトアイデア」と「コミニケーションアイデア」には主従があり、必ず「プロダクトアイデア」を明確にすべきです。いくら「コミュニケーションアイデア」が独自性と便益ともに優れていても、「プロダクトアイデア」が脆弱である場合は、良くて一過性の売上を確保するに留まり、事業成長にインパクトを与えることは難しいです。

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「プロダクトアイデア」自体が強ければ、訴求や体験である「コミュニケーションアイデア」にクリエイティブの独自性を追求する必要はありません。プロダクト自体に注目を集める独自性も購買に値する便益もあるので、広告に携わる方々にとっては残念な話かもしれませんが、「プロダクトアイデア」の価値、つまりその独自性と便益をストレートに、できるだけ多くのターゲット顧客に伝えれば、購買行動に必ず繋がります。余計なことをする必要はないのです。「プロダクトアイデア」が際立っているのに、テレビCMのクリエイティブに妙なひねりを入れて、一体何の商品・サービスなのかわからなくなり「プロダクトアイデア」本来の強さが伝わらないケースも非常に多くあります。
逆に、「プロダクトアイデア」の独自性が弱くても便益が強い場合(図の四象限で「コモディティ」に近い場合)、「コミュニケーションアイデア」の独自性で補って商品やサービスの便益を強く印象づけられれば、良い結果を得られます。コミュニケーションの独自性で注目を集めて、商品やサービスの便益を知って体感してもらえばいいからです。
ただし、「プロダクトアイデア」の便益自体が弱ければ(四象限の「ギミック」や「資源破壊」に該当する場合)、どんなに強い「コミュニケーションアイデア」で広告しても、一過性の売上を作るだけに終わってしまいます。
また、特許などで防御できないビジネスでは、市場導入で成功した「プロダクトアイデア」には競合がたくさん現れます。この初期の成功の時点からマーケットは拡大していきますが、同時に始まる同質化、コモディティ化と戦っていく必要があります。
最も重要な、便益と繋がる独自性を維持するために、「プロダクトアイデア」を磨き続け、「コミュニケーションアイデア」を活用してコモディティ化を避け、いかに追随商品やサービスに対する「プロダクトアイデア」を継続的に強化していく必要があります。大きく言えば、「プロダクトアイデア 」自体の強さこそがブランドを創るのです。「コミュニケーションアイデア」でブランドを創るのではないのです。

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