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私を忘れたおばあちゃんへ

拝啓

爽やかな風が心地よく、初夏を感じさせる日差しが降り注ぐ今日この頃。おばあちゃん、元気にしていますか?

二年ほど前に認知症の影響で施設へ移り住んだおばあちゃんは、一年ほど前には社会人5年目の私のことを学生だと思っていて、数ヶ月前に会いに行ったら、とうとう私が誰だか分からなくなっていましたね。

会いに行く度に私を孫と認識してもらえない辛さに耐えられず、帰り道はどうしても涙がこぼれてしまいます。

共働きの両親に代わって私の面倒を見てくれたことも忘れてしまったのでしょうか。私は、鮮明に覚えていますよ。

おばあちゃんが作るチャーハンにはピーマンと焼豚が入っていたこと、スーパーに行くといつもポケモンパンを買ってくれたこと、たまにミスドでお昼を食べたこと、一緒にお散歩やお絵描きを沢山、本当に沢山してくれたこと、お昼寝で子守唄を歌ってくれたこと。そして、私のことを沢山可愛がってくれたこと。

これだけ愛情をもらったのに、私は何もお返しができていない。孫として孝行をしたかったのに、おばあちゃんの瞳に、私はもう孫として映っていない。「あの時こうしていれば……」と後悔の気持ちで胸が詰まるような思いです。

ですが、おばあちゃんは私と会話している時、満面の笑みを向けてくれますね。
昔のようにお花が好きで、最近はお花の塗り絵をしているんだと作品を見せてくれた。ご飯を沢山食べて、施設の友だちと沢山お話をしていると聞かせてくれる。それだけで私は救われるのです。嬉しくなるのです。
あなたが元気に生きているだけで、それだけでいいのです。

今度会いに行く時は、季節のお花を持っていきます。お花の話をしましょう。ご飯の話をしましょう。私と、友だちになってくれますか?

また会いに行く日まで、どうかお元気で。

敬具


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