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AI問診を導入する話 シリーズ3 医療DXで必要なのはPatient Journey

「これは、年間5000台以上救急車を受け入れる二次救急病院で、
AI問診を導入する話」

前回、AI問診の方向性と、2社の比較を説明しました。

U社で決めた!と院内の稟議を通します。
僕は救急医ですが、今回AI問診を導入するのは救急外来と発熱隔離外来の2箇所

何を基準にDX化をするのか、
どれくらいの値段感なら通りやすいかを考えます。


AI問診を導入することで、得られるメリットを考える。

AI問診の効果を人に説明するとき、どうしたらいいでしょうか?

医療DXを進める上で、重要なことは

「費用対効果」

です。

医療機器を購入するときは、
「これがないと、〇〇できない」
「これを1回使うと、診療報酬が◯点」
など、できるできないや、直接診療報酬に関わるものなので、償還期間などを考えてその価値を測ることができます。

働き方自体を変える医療DXソリューションは、購入する病院に一体どのような価値を与えるのでしょうか?
それは

「人件費」

です。


この医療DX(今回はAI問診)を取り入れたときに、どの職種の人の仕事がどれくらい変わるのか、それをしっかり考えて稟議に出します。

病院では(少なくとも僕が勤めたことある病院では)人の仕事量を評価することが非常に苦手です。
困ったらすぐ人海戦術を使うのは、医療従事者あるあるですね。
しかし、ここを切り込んでいかなければ、医療DXは不可能です。

費用対効果、今回は救急外来の看護師の給料をベースに考えてみた。

今回大きく仕事が改善するのは、看護師と医師です。

看護師の人件費とU社のソリューションを比較してプレゼンすることにしました。

一般的な看護師の年収と比較し、U社のソリューションの年間費用は看護師一人以下の価格になります。
この導入により、看護師1名以上の仕事をすればいいのです。

今回のAI問診を入れることで、ワークフローが変わることによって得られるメリットは

記録」「トリアージ」「紙の削減」「医師との連携のストレス」

定性的に改善する部分を、うまく病院の首脳陣に説明し、稟議書を通すことができました。

結局一年待たされた><

それなりのお値段が年間かかるため、院内稟議を通した後、法人の稟議が必要になりした。
法人などの規模が大きくなると、稟議の回数が増えたりその結果が返ってくるのに、時間がかかるのはよくあることです。

よくあることです。

よくあることです。

結局1年待たされた上に、(おそらく)忘れられてた。

あまりに返答が遅いので、こちらから突っついて聞いてみて初めて動きました。
このあたりの動きの遅さが、病院で働き方改革にITを導入しようとしたときに、頻回に起こります。
医療DXの重要性に対する、経営側の意識の低さが見えるなと思うところです。

DXに無理解な経営陣の対する反応はこのようなことが非常に多いです。
覚悟して準備しましょう(具体的な対策はない…)。

Patient Journeyで業務を考え、DXに置き換える

Patient journeyという考え方があります。
「患者さんの体験」という意味です。
仕事を考える時に、それぞれの職種にある仕事を中心にするのではなく、この「Patinet journey:患者体験」に沿って分解することが一つの鍵となります。

医療DXは多職種にまたがる仕事をITに置き換える作業です。タスク全体を俯瞰するためには、職種毎の仕事ではなく、そのタスク全体を見渡すことが必要です。
そのためには「Patinet journey:患者体験」に沿った仕事の分担を再度考えてみる必要があります。

救急外来にやってくる患者の体験を図に示してみましょう。


患者体験にどのような職種が関わっているか、再度見直してみましょう。
この中でAI問診が代わりにできるところはどこでしょうか?

こういった、職種を横断した働き方の解釈こそが医療DXの肝です。

皆さんも、今の働き方のままではダメだということは、気づいているでしょう。
改革の痛みを超えた先にしか、業務改善して働きやすくなった未来はないのです!

「ラーメン発見伝」の芹沢達也に学ぶ


ラーメンハゲで有名な芹沢さん。
病院の業界のIT化にも通じる示唆を投げかけています。

経営の傾くラーメン屋に、券売機の導入などの、業務効率化を進めた時の、ラーメン店主の言葉

「ふざけんじゃねえよ、べらぼうめ!!」
「券売機だぁ!!代金ていうのは、お客様から直接感謝しながらいただくものだっ!」
「ていうのが、先代の親父さんの教えなんだよっ!!」

経営が悪化しても、仕事のやり方を変えたくない人、その責任を自己に向けない人、あなたの病院にもいませんか?

きっとそういう人たちは

「高齢者でタブレットが使えない人がいる!」
「停電になったら使えない!」
「患者に寄り添う姿勢が大事!」
「手書きの温かみが・・・」

色々言いようがありますね。やりたくない人の理由はいくらでも上がります。


ラーメン発見伝17巻第148杯
ここだけでも読む価値あり!

「何かあったらどうするんだマン」は「何があっても変わりたくないマン」

であることが多いです。

芹沢さんは、どう解釈してどう解決するのでしょうか?
17巻に載っています。
僕はこの話が読みたくて、買っちゃいました。

ラーメン関係ありませんが、経営や働き方に、すごく示唆のあるセリフの多い「ラーメン発見伝」
ぜひ、この回だけでも読んでみてはいかがでしょうか。




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