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幼稚園バス置き去り事故で思うこと

牧之原市の川崎幼稚園で、通園バスに園児が取り残され、熱中症で亡くなるという事件が発生しました。こうした事件は過去も度々繰り返されてきました。
過去の事件もショッキングではありましたが、今回は私の母校のすぐ近所で、事件のあった駐車場もよく知っている場所だったこと、亡くなったお子さんがうちの下の子と同い年だったこと、また、川崎幼稚園は古くからある幼稚園で、地元ではそれなりに信頼のある幼稚園だったことでとりわけ大きな衝撃を受けています。

ミスの連鎖

マスコミの報道内容によれば、普段送迎業務を行なっていない園長が欠勤した運転手に代わってバスの運転を行なっていたこと、降車時の確認を怠っていたこと、園でも出席の点呼を怠っていたこと、出席管理システムはあったものの、職員が正しくない操作を行なってしまったことなど、幾つものミスが重なって起きた事件であると類推できます。事件や事故というのは一つのミスが致命的な結果をもたらすわけではなく、幾つもの要因が不運にも重なって起こるものです。
例えば、1994年に名古屋空港で発生した中華航空140便の墜落事故では12の要因が背景にあると、当時の航空事故調査委員会が報告書の中で指摘しています。また、この事故機の操縦士も墜落前の2分半の間に17の操縦ミスを立て続けに犯してしまい、どれか一つのミスでも回避できていれば事故には至らなかったとされています。

システムで防げるか

小さいお子さんが亡くなったということ、さらには持っていた水筒が空になっていた、暑さで服を脱いだ状態だったなど、ニュースを聞く人の感情に刺さるような事柄が伝えられたことにより、感情に走った報道が先行しているような状態でした。1週間が過ぎてやや冷静になってきたこともあり、再発防止のためにシステムが有効ではないかという声が出てきました。
しかしながら、システムを入れただけで100%事件は防げるかといえば、やはりシステムの盲点を突いた事件が起こったり、別の問題が発生したりということは十分考えられます。
今回の事件でも出欠管理はコンピューターシステムで管理していたものの、誤った操作が行われたり、システムの情報がうまく活用できていなかったりという問題があったようです。
過去の事件、事故でも、アラームが鳴っていたにも関わらず、スムーズな業務の妨げになるということで、状況を確認せずにアラームを止めてしまうなど、人間の判断を介してしまうとシステムが無効化されてしまうことがじばしば起こっています。
対策のひとつとしては有効ですが、システムを入れれば万事解決とは考えるべきではなく、特に「安心」という観点で物事を考えるのは厳に慎むべきです。

さらに本質的なことから

うちの子供を見ているだけでも“ヒヤリハット”はいっぱい経験しています。
少し目を話した隙に危ないことをしていたりとか、側にはいたけど考え事をしていて漫然としか見ていなかったということはよくあります。特に園児の年齢の子はまずじっとしていることなどなく、じっとしているようだったら体温を測った方がいいくらいです。
幼稚園や保育園のスタッフは一人で何十人の子もいっぺんに見なければならない上に、行事の準備や書類を書いたりとどう考えてもかなりの負担を強いられる仕事であることは間違いありません。
子供を幼稚園に入れた時に衝撃だったというか、感激だったのは、園の門を開けて入ったら、こちらが全く名乗りもしないのに先生が子供を呼んで連れてきてくれたことで、あまり園に行く機会がない父親の顔まで覚えていてくれたのは嬉しいと共に私なんかとても無理と思いました。
また、幼稚園では朝、登園してくる子の交通整理が当番制になっていて半年に一度くらい回ってくるのですが、送迎バスが着いて子供をおろした後同乗の先生と運転手の方が車内をチェックしているのを私自身が見ています。保護者の目があれば園のスタッフの方も手は抜けないでしょうし、見落としがあった場合のもう一つの目にもなり得ます。ミスを防ぐためにはたくさんの視点で、しかもいろんなポジションから観察することが有効な手立てのひとつと言われていますので、保護者も園に任せきりにしないということも、事件を防ぐための有効な手段の一つだと思います。

同じ悲劇が繰り返されないため、当事者を批判することだけではなく、この際、多くの人が“私にできること“を考えていただければと思います。

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