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コーヒーブレイクのお供に聴きたい、小室哲哉


 缶コーヒーで昔からメジャーな存在といえば、やはりジョージア。移動中に駅や偶然見つけた路上の自動販売機でちょっと一杯ということも多いだろう。田舎暮らしの経験があったり、ドライブで遠出するのが趣味という方なら共感していただけるかもしれないが、ジョージア・シリーズを販売しているコカコーラ・ボトラーズの自動販売機は、結構な過疎地にも設置してあり、他社より販路が広い印象がある。

 そんな、日本のどこでも大抵は手に入る、と僕が勝手に思い込んでいるジョージアの缶コーヒーから、お気に入りをひとつ挙げるなら、TASTYだ。エメラルドマウンテンやジョージアグラン微糖は、それこそどこでも漏れなく売っている印象だが、味はちょっと無難過ぎる。TASTYの方がおいしい。でもTASTYは売ってない所も時々あるんだよね。たまには牛乳入りのTHE BLENDが飲みたくなることもあるが、普段使いはやはりTASTYだ。

 今回は音楽ブログの立場から、コーヒーブレイクのお供に聴きたい楽曲を、小室哲哉のプロデュース作品から選んでみた。

 90年代にヒットチャートを賑わせていた、ダンス・ミュージックの印象が強い方には、「コーヒーブレイクに小室哲哉!?騒がしくて落ち着かないじゃないか。もっと気が静まる音楽があるだろう。」と思うかも知れない。しかし、大々的に表立っては出ていないものの、渋い音楽もちゃんと発表されている。シングルのヒット・チャートやTV番組での露出とは縁の遠かった部分に光を当ててみた。それでは、小室哲哉自身がメンバーとして加わるグループの音楽で、安らぎのひとときを過ごすことにしよう。


TM NETWORK「君がいる朝」

 まずはキーボード・小室哲哉、ボーカル・宇都宮隆、ギター・木根尚登の3人組・TM NETWORKの楽曲から。多くの方にとってはTVアニメの主題歌の印象が強いだろう。彼らからイメージするのは新宿の夜のチカチカしたネオン街で、コーヒーとともにゆったりという気分とは程遠いと思われるかもしれない。

 しかしながら、TM NETWORKは作曲家2人体制で活動しているユニットだ。一連のシングル・ヒットは小室哲哉が作曲しているが、それ以外に木根尚登が作曲したものも多数ある。コーヒーのお供に聴きたい、リスナーをそっと優しく包み込むような心温まるメロディーを生み出すことについては、小室哲哉よりも木根尚登の方が得意とする分野だ。この「君がいる朝」も木根尚登の作曲である。サングラスをかけたいぶし銀の見た目も、メンバー中で最もコーヒーが似合いそうではないか。

 曲中に登場する女性コーラスは、「Get Wild」などヒット曲の作詞を手掛けた、小室みつ子である。彼女の歌詞は広く知れ渡っているとは思うが、この曲ではそれだけではなく、歌声にも触れることができる。

 鑑賞するシチュエーションは休日の朝がピッタリ。たとえばコンサートで宿泊を伴うような遠出をする場合、前夜の余韻に浸りつつ、ぼんやりとトーストをかじりながら、眠気が抜けるのを待つ間に流れていると心地良い。もっとも、今はそんなおいそれと不要不急の遠出なんてしにくくなってしまったけど。

 出先に限らず、自宅で迎える休日の朝でもOKだ。ぜひ、この曲とともにリラックスしてモーニングコーヒーをお召し上がりいただきたい。

【シングル・CASTLE IN THE CLOUDSのカップリングに収録(2001年発売)】


globe「RUNAWAY FROM THE NIGHT」

 続いてはキーボード・小室哲哉、ボーカル・KEIKO、ラップ・マーク・パンサーの3人組・globeの楽曲。90年代のヒットチャートを席巻した、小室ファミリーの中心的存在だ。小室哲哉をキーボードと紹介したものの、この頃の彼はTV出演の際だとギターを抱えていることの方が多かった。ファンの僕がひいき目に見ても、ギターを抱える姿はあんまり似合ってないなと思っていたものだが、売上の方は絶好調だったね。

 globeはコーヒーとは深い縁はなかったかもしれないが、コカコーラ・ボトラーズ社とは、炭酸飲料でタイアップがあった。製品のキャップにglobeの曲名が刻印されたピンバッジがついていたのを思い出す。

 この曲はイントロのピアノの旋律が秀逸で涙を誘う。初めて聴いたとき、開始からものの2~3秒の速攻で心を掴まれ、聴き終える頃にはすっかりその音の虜になってしまった。コーヒー片手に机に肘をついてジッと聴いていたくなる、せつないバラードだ。

 鑑賞するシチュエーションとしては、先の「君がいる朝」のときよりはもう少し時間が経過して、ひとまず目は覚めているあたりがフィットするだろう。前半だけ聴いていると「君がいる朝」同様の、落ち着いたバラードに聞こえるが、終盤から主旋律に絡むラップが聴きどころだ。これがなかなか、静かにアツイ!ここはまどろみながら聴くよりは、ちゃんと目を覚ました状態で、このラップと歌のコンビネーションに心躍らせたいものだ。

 マーク・パンサーは今月、spotifyでglobe radioをスタートさせたばかり。こちらでメンバー自らが語るエピソードとともに、globeの楽曲を改めて聴き直してみてはいかがだろうか。

【収録アルバム:CRUISE RECORD 1995-2000(1999年発売)】


Kiss Destination「I CAN...」

 最後はキーボード・小室哲哉とボーカル・asamiの2人組・Kiss Destinationの楽曲。ヒットチャートで猛威を奮っていた頃の曲調からはいくぶん落ち着いて、アタックの強い煌びやかな音色の細かい音符でビッシリ詰まった伴奏ではなくなっている。もっとメロディーそのものの良さを前面に出した、余韻を味わうサウンドだ。まさにコーヒーのお供にピッタリ。

 鑑賞するシチュエーションとしては、夜も更けてからが一番だ。月を見上げながら聴いていて、間奏のディストーション・ギターの見せどころで、風に流れる雲がたまたま月をゆっくりと横切ってくれたら、映像的には申し分ないね。女性の一人暮らしで、この曲をかけながらコーヒーを煎れようものなら、泣いてしまうかも知れない。

 これも派手さはないけれど、先の「RUNAWAY FROM THE NIGHT」同様に歌いだしの瞬間から一気に引き込まれて、最後まで聴き終えたころには胸がいっぱいになった。コーヒーブレイクに派手さは必要ないんだよね。それよりも安らぎや落ち着きを感じさせて欲しい。

 こういうタイプの曲は繰り返し聴くうちに、徐々に良さが浸み込んでいきそうなもの。これもコーヒーを煎れる過程となんとなく相通じるものがある。ところが、globeにしろKiss Destinationにしろ、初めて聴いたそのときから、即、僕のお気に入りになった。まるで炭酸飲料のようなのど越しだから、不思議なものだ。

 そういえば最近、炭酸入りのコーヒーをどこかで見かけたな。こわくて手を出してないけど。

【収録アルバム:AMARETTO(2001年発売)】




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