静岡ブルーレヴズ観戦記☆9/19☆vs 豊田自動織機シャトルズ愛知〜初陣、ほろ苦く〜
1、船出
台風一過
東京は、抜けるような雲ひとつない青空が広がっていた。
思いの外強い日差しが照りつける。最高気温27度の予報が出ていた。木陰に彼岸花が咲いていた。
前日の雨風は、いつの間にか色づいたどんぐりをバラバラと地に落としていた。
静岡はもっと暑いだろうか。最高気温29度と予報は示されていたが。
この日、記念すべき一つの試合が『無観客』で行われようとしていた。
ジャパンラグビーリーグワン・ディビジョン1所属
静岡ブルーレヴズ
旧ヤマハ発動機ジュビロは、プロラグビーチームに生まれ変わり、ホストエリアを静岡県全域と発表していた。スローガンは
ALL for SHIZUOKA
とはいえ、この県民は手強い。
『キャプテン翼』のヒット以前からサッカー⚽️⚽️に熱狂していた県民だ🌟🌟🌟
言わずと知れた『サッカー王国⚽️静岡』
スポーツ観戦にも目の肥えた県民361万人の心を掴むことはできるのか。
この日はレヴズの『初陣』にあたる。
たとえ、『若手主体』のプレシーズンマッチとはいえ、
たとえ、正式ユニフォームでないとはいえ、
この日がレヴズの『お披露目試合』であることに変わりはない。
対戦相手は、ディビジョン3所属
豊田自動織機シャトルズ愛知
いうまでもないが、このチームは昨季のトップチャレンジリーグ(現ディビジョン2)優勝チームであり、にも関わらず『ディビジョン3』という裁定は大きな波紋を呼んだ。
この発表後、憤りを抑えきれないチームの公式声明に心を痛めたファンは多い。
シャトルズは強い❗️
あの『なんでトップチャレンジかわからない』強さを誇る近鉄ライナーズにも昨季勝っている。
その意味で、レヴズの初陣が
『有観客のエコパスタジアムで、シャトルズと対戦』というのは、試合の中身も期待できる一大イベントだったのだが🥲
無観客試合となったこの試合は、レヴズ主催のYouTube配信で観戦できることになっていた。
この試合は、ラグビージャーナリスト村上晃一さんをゲスト解説者に迎え、ベテランの日野、伊東両選手の3人で進行した。
(一番左が村上さん、中央が日野選手、右が伊東選手)
静岡ブルーレヴズという名前に慣れましたか
村上さんの質問に、両選手は私が想像する以上に戸惑いを隠せない様子を見せた。
これにはいくつか理由があるだろうが、なにより、
ヤマハ*スタイル
スクラムに重きを置いた独特のプレースタイルは、選手スタッフのみならずファンの誇りでもあった。あの『日本選手権優勝🌟🌟』から、『ヤマハ』は常に優勝争いに絡む強豪であり続けたのだから。
彼らにとって、やはりここはまだ『ヤマハ発動機ジュビロ』なのだ。多くの選手が未だ同社社員として勤務している現状も関係するかもしれないが。
村上さんと両選手の会話は続く。両選手曰く、
チーム練習は8月から始まり、今日までかなりキツイ練習を積んできました。
との事。
この試合をターゲットに練習を調整する気はない、
という大久保直弥HCの言葉も紹介していた。
私は勝手に『ナオさん』とよんでいるが、このナオさんの言葉も納得できる。
相手とのコンタクトが多いラグビー。
『1週間に一度』の試合が限界のラグビーは、リーグ戦の試合数が極端に少ない。開幕したら若手の育成を試みる場がなくなる。要するに、
『本番で使いながら育てる』事がしにくい。
そこが、連戦を組める野球やバスケと決定的に違い、だからこそ
採算の取れないスポーツ
とも言われてきた。
もちろん、ナオさんは
『負けてもいい』と言っているわけではない。
万全のコンディションでないのは事実だろう。しかし、レヴズは『プロスポーツチーム』である以上これは言い訳にならない。結果はともかく内容が伴わなければ。
この記念すべき『初陣』をどう戦うのか。どんな結果を出せるのか。
試合が始まった。
2、洗礼〜前半〜
試合序盤はテンポ良く進んだ。レヴズのペースだった。
レヴズはスムーズにボールを前へ進めていく。大きく右に動いたボールは、グリーン選手から大外で待つ中井選手へ❗️
トライか⁉️しかし、
審判の判定はスローフォワード😔😔
グリーン選手と中井選手のタイミングが合わなかったようだ。
前半早々の『このトライ』が決まっていれば😢😢
と思う反面、このプレーが
レヴズの攻撃精度が未だ途上にある
事を如実に示していたかもしれない。
その後まもなく、シャトルズの怒涛の攻撃が始まる。
さて、
ヤマハといえばスクラムが代名詞
下記画像がレヴズのファーストスクラムだ。
この日のスクラムは手堅く、要所要所に美しいスタイルを見せ攻撃の起点を作った。
しかし、
ラインアウトのミス、ハンドリングエラー、その他自陣でのペナルティーがこの後頻発する。シャトルズも大分お付き合いしていたが、この日は攻守にわたりシャトルズの強度と精度が優っていた。
天理優勝メンバー松岡大和選手など選手達の雄叫びもまた、シャトルズ戦士にエナジーを与えていた。
時間が経つにつれてシャトルズは攻勢の度合いを深め、遂に前半終盤、終了間際に2トライを決める。
0ー10
前半終了
『スタメンを若手で揃える』その挑戦は、オープン戦で若手ピッチャーが打ち込まれるが如く、実に苦い40分となった。
この試合通じて感じたものがある。
最短でも2年はかかるディビジョン1への昇格。シャトルズの選手達から滲み出る気迫に、どこか圧倒される自分がいた。
3.爪痕〜後半〜
プレシーズンマッチは、選手を自由に入れ替えることができる。レヴズはBK陣をほぼ全員入れ替えたようだ。
しかし、
後半早々、スピードに勝るシャトルズに押し込まれ1トライを献上したレヴズ😔😔
映像は、サントリーサンゴリアスから加入した有賀剛アシスタントコーチの姿を映し出した。村上さんは語る。
世界を知る人ですから
日本代表でもあった有賀さんは、『常勝』チームサントリーサンゴリアスで現役生活を全うし、そのままコーチとして昨季まで在籍されていた。
レヴズ選手達は大きな刺激を受けています。
日野、伊東両選手は口々に有賀さんのもたらした刺激について語った。
画面に映る有賀さんの表情は終始険しかった。
こういう苦しい局面を打開するのは、サッカー同様『個の力』だ。
レヴズのツイタマ選手、40メートル以上の独走トライ‼️‼️
さすが昨季トライ王🌟🌟🌟
(右下の写真が、ツイタマ戦手トライのシーン)
日野選手の解説によると、このトライ、正確にはツイタマ選手の力だけで成し遂げたものではないらしい。
ラインアウト後、モールを組むと見せかけて、その際シャトルズにできた防御の穴をツイタマ選手が突き、すぐ篭島選手がそのサポートについていた、との事。ツイタマ選手が独走中数人のシャトルズ選手を振り切れたのも、ここまでの連携の賜物らしい。
解説、って大事だ😳😳😳😳
この試合、村上さんが、日野さん伊藤さんの言葉を綺麗にまとめて繰り返してくれるのもありがたかった🌟🌟🌟
さて、ここからレヴズ挽回👊👊👊
といかないのがこの日のレヴズだった。
たしかに、この試合をターゲットに心身を調整していたわけではないらしい。レヴズ選手は目に見えて体が重くなっていた。頭に手をやる選手が増えてきた、
対するシャトルズもミスは増えていたが、最後までエネルギッシュに動いた。
この後シャトルズはトライを重ねた。レヴズは自陣に釘付けになり、時間が経つほど防御も精彩を欠いた。
解説の日野、伊藤両選手の口は次第に重くなった。
プレシーズンマッチ初戦とはいえ、シャトルズ相手にこの様相は予想外だっただろう。その思いをどう言葉にして良いかわからない、と言った様子だった。
村上さんは言葉を選びながら、時にシャトルズを讃え、レヴズの好プレーを褒めつつ激励した。
結局、後半はシャトルズが3トライを決めてレヴズを突き放した。
それは試合終盤のことだった。
レヴズは久々に敵陣に押し寄せた。
SO清原選手は、鋭いステップで敵を抜き去りゴールラインに迫る🌟🌟そして左へ長くボールを投げた。
しかし、
そのボールは、パスを待つ選手から大きく逸れていった😔😔
最後まで、レヴズの歯車は噛み合わないままだった。
ノーサイド
5-31
シャトルズは5トライ2ゴール、対するレヴズは、あのツイタマ選手の1トライのみに終わった。
試合後選手達は長く円陣を組んだ。
あまりにもほろ苦い初陣。
ほぼ無人のエコパスタジアムは、スタッフの拍手の音以外、深い静寂がグラウンドを覆っていた。
この日レヴズがここに残せたものは、反省以外何があっただろうか。
〜あとがき〜
あまりにも苦い初陣に言葉もない、というのが試合直後の印象でした。
ふと、ある小説を思い出しました。
井上靖『天平の甍』
遠く奈良時代、聖武天皇の命により第9次遣唐使が派遣されたのは八世紀初頭。
大阪・難波津の港をでてから、瀬戸内海の港に何度も寄港しつつ、外海への窓口筑紫国(現在の福岡県)に達するまで約半月、唐への順風を待ち、一気に東シナ海を渡り始めるまで、さらに半月かかりました。荒れる海、もちろんここからは死を覚悟する旅でした。
今日の船出は、出港早々荒波にあったようなもの。日々の練習、今後も続くプレシーズンマッチという港に泊まり、英気を養いながら、年明け開幕の『新リーグ』という外海へ乗り出すのです。
そこはまさに荒海。今は無事渡り切るため試行錯誤の時期なのでしょう。
さて、『ブルーレヴズ』の呼称に選手達が慣れない理由は本文以外にも理由がある、と常々感じていました。
音の並びの関係上、呼びづらいのです。
やはり略称が必要ではないか、と感じています。
でも『ブルーズ』は使えません。すでにリーグワンには、宗像サニックスブルーズが存在しています。
ということで、私個人は『レヴズ』と呼んでいます。もちろん、
時が経てば、J1『浦和』『清水』のように、『静岡』と普通に呼ばれるかもしれません。
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