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エヴァ留年か卒業か

まえがき

感想をまとめるはずだったのに、とうとう『シン・エヴァンゲリオン劇場版』の初回鑑賞から1年5ヶ月ほどが経過してしまった。この期間、なにかを思い出したようにオフライン上のテキストエディタで文字を打ち込んでは修正・削除・放置を繰り返し、そうして2022年8月下旬を迎えているというこのタイミング、感想記事としては遅すぎる。誰が読むのか。
というのも2022年8月現在、大量のシン・エヴァの感想記事こと卒業論文がインターネット上に存在し、考察され、各々監督やスタッフさまのいる方角へありがとうさようならが叫ばれたことだろうと思う。本編感想や考察については無数の文献を参照されたし。
しかしその中でもやはり「旧劇場版もやっぱり良かったよなあ」など、過去のエヴァに思いを馳せ=エヴァ卒業式をボイコットし続け、エヴァ留年なるものを自ら貫いている人間も存在する。自分もその一人である。
本記事は、自分がそんなエヴァ留年を続けるべきなのか、やめるべきなのか、いや別に好きにすればという内容・備忘録である。当時や今の心境を書いておきたい。

公開日

新型コロナウイルスによる猛威を受けて、「いよいよ公開するらしいぞ」というタイミングから数度延期がアナウンスされる度に「いつ観られるんだ!!!!!!」と頭を抱えていた日々が嘘かと思うくらい、いざ公開日を迎えようとする頃には「観たら終わっちゃうぞ、エヴァが」と謎の感情が生まれていたことを覚えている。観たい、観たくない、観たい、観たくない……。
自分は公開日当日=2021年3月8日に劇場へ足を運ぶ権利は得たものの、いわゆる初回上映ではなく「2回目」の上映タイミングで鑑賞することになった。そのため、初回鑑賞後の人たちとは「入れ替わり」のかたちになる。最も恐れたのはネタバレである。
エヴァは私にとってとてつもない思い入れがある作品。マナー・エチケット違反のネタバレ行為がもしされようものなら何をしでかすか分からなかった。犯罪者にはなりたくないので、ノイズキャンセリングイヤホンで外界の音をすべてシャットアウトして映画館に向かった(イヤホンは映画本編が始まる直前まではずさなかった)。

観た

本編感想はあえて省く(文字に起こせる気がしない)が、宇多田ヒカル氏の『One Last Kiss』のイントロが流れた瞬間は身体が少しだけ飛び上がった。
ああ終わる終わる!エヴァ、終わっちゃうよ本当に終わっちゃう!!!!!!!
こんな感じ。共感は得られるだろうか。

それから

スタッフキャストの舞台挨拶つきの上映イベントはすべて参加したりして、なんだかんだ合計6回ほど劇場に足を運んだ。特にそれ以上の話はないが、とある回ではTVシリーズや旧劇場版のときの思い出話なんかも出てきて、個人的にかなりテンションが上がった。

舞台挨拶付上映、現地参加は叶わずすべて中継付きで鑑賞した

考察などはどうでもいい

エヴァといえば考察、と言ってもいいくらいにあれこれ考えるということをセットで楽しむ作品なのではと個人的には思っていた。海の色……『:序』ラスト月面シーンに映る棺の数と旧劇場版のエヴァシリーズの数……などなど、これまでは新世紀版と新劇場版のつながり・関連性などはどれだけの時間考えていたか分からない(結果見当違いだったものも多かった。答え合わせが出来たという意味ではシン・エヴァは良い体験だった)。それはそれでとても楽しかったのだが、『シン・エヴァンゲリオン劇場版』を観たあとはびっくりするくらい清々しい気持ちで、「あのシーンってどういうこと?」みたいな話に一切関心を示せずにいた。
完結作が出来上がった。それを公開日初日に鑑賞出来た。
これ以上の感想・感動・喜びはない。「エヴァについて語りましょうよ〜」というお誘い、なぜかすべて断ってきた。本当にごめんなさい

それはダメだよという話

特にエヴァに限ったことではないが、グッズ売り場に並びながら映画本編の感想をでかでかと言い合う人々、あれは絶対に良くない
実際、初回を鑑賞し終わったあとにパンフレット等を購入しようと、かなりの人数で形成された列に並んでいるとき、本編内容をガッツリ話している不届き者が一組だけ目についた。周りに未見の人がいないことをひたすら祈っていた。大丈夫だっただろうか。
トラブルを起こしたくもないし巻き込まれたくもない、しかしこういった現場に遭遇しては何もできない自分にただただ落胆する。マナーに配慮する人間の方がストレスを抱えてしまうこの世、どうにかならないのかと日々悲壮感に包まれる。語りたくなる気持ちは、分かるけども。

ところで留年か卒業か

TVシリーズから旧劇場版、そして新劇場版と全作品を幾度となく観てきた。リアルタイム勢ではないことへの劣等感など捨て去り、どちらかと言えば「誰かと」ではなく「自分ひとりで」楽しんできた時間の方が多かったように思う。
じゃあ細かい描写やストーリーについて深く深く、考察本で語られているくらいに詳しいかと言われるとそうでもない。正直、これだけ回数を観ていても根本から理解していないシーンもきっとある。「その程度の知識でエヴァファンを名乗るのか」「俺はシン・エヴァを20回は観たぞ」。そうですか。名乗りますが。
ちなみに、つい先日『Air / まごころを、君に。』を観直した。やはりあの時代に創られた作品だからこその空気感はたまらないものがある。よくある、「過去をなかったことに」されなくて本当によかった。この作品を観て感じたものは、否定されない。幸せなことである。
ちらほら見かける意見として、「過去のエヴァについて語ること・考えること・囚われること自体が『シン・エヴァ』のテーマに反する」というものがある。これについてはいろいろ思うことがある人も多いと思うが、自分は結構納得している。留年か卒業か。答えは明白である。

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