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31歳独身男、ホストクラブのお兄さんになる①
10月27日金曜日、今日は7年ぶりの面接だ。
過去いろんな仕事の面接を受けてきたが、今回は今まで携わったことのない職種だ。といってもなんら珍しい仕事ではない。大人なら誰しも一度は訪れたことがあるであろう、BARの面接だ。
仕事で疲れた体を酒で癒す、友達とたわいもない話で盛り上がる、ちょっといいあの子と仲を深める、そんなみんなのよく知っているBARだ。
私は普段、主にウーバーイーツの配達員をして生計を立てている、札幌住み31歳独身のしがない劇団員・役者である。
北海道、札幌、ときいて何を思い浮かべるだろうか。
美味しいご飯、雄大な自然、美人が多い、などなど色々あるが、なんといっても、、、
雪だ。雪が降るのだ。雪が降れば、アスファルトの道が一夜にして、白銀の道に変わるのだ。
ちなみに札幌は、人口100万人以上の都市では世界で一番雪が積もる街。日本ではなく、世界で一位なのだ。そして、そんな街でスーパーカブ50に乗って配達をする私にとっては、雪は最大の敵なのである。
昨年度は冬道をバイクで縦横無尽に走り、何度も死にそうな思いをしながら冬を越した。郵便局員もバイクで配達しているしいけるだろう、と思っていたが、なかなかに骨の折れる仕事だった。バイクに乗りながらホワイトアウトするなんて、配達を始めた時には想像もしなかった。
「今年の冬は、もう、バイクで配達したくない!!!だって怖い!!!」
こう思った私は、何か別の仕事を探そうと思い立った。
どうせなら、普段出会うことのない人たちと出会えるような職場がいい、サラリーマンのおっちゃんとか、サラリーマンのおっちゃんとか、サラリーマンのおっちゃんとか、、、そんな人たちの話を聞いて少しでも役者の仕事の糧になれば良いと思いBARの求人に応募した。
いざ面接
そうして面接当日。役者をやっている手前、オーディションを受けに行くことはよくあるのだが、それとはまた違った緊張感がある。
どこかで正社員としてはおろか派遣社員だってやったことがない。大人気の役者というわけでもなく細々と自身の表現活動を続けている役者なんて、界隈の外の人から見たら、俗にいう夢追い人、しかも30を越えた途端世界は見る目が厳しくなってくる。もはや夢老い人なのではないか、そんな奴雇いたくないから適当に返されてしまうのではないか、いつまでもうだつの上がらない奴め、だらしないよ真っ当に生きなよとか言われてしまうんじゃないか、、などと考えながらも、いやいや、冬道バイクで事故って怪我したり死んでしまう方がもっと嫌だ、と自分を奮い立たせて、面接へ会場へ足を踏み入れた。
そしたらだ。
僕はしっぽりとしたバーを想像していたんだ。
ゴリッゴリのギラッギラのバーだった。
異世界だ!!!
面接会場間違えたのかもしれない。
いや、正しかった。
KOEEEEEEEEEEEEEEEE~~~~~~YO~~~~~~~~~~!
😇😇😇😇😇😇😇😇😇
完全にパリピって感じの店だ!アゲしてバイブスアゲしてウェイウェイヤーッ!!!だ!これは!!!井上には縁もゆかりもないやつDA!!!!!
しかし、事故を起こすよりはマシだと、「イケマス、ダイジョウブデス」と果敢に食らいついてゆく。
こえーと言いつつも、面接をしてくださった人は、とても紳士的で、井上の演劇その他の活動を理解し、色々配慮してくれた。BARで働くと井上の役者活動に支障きたすと思うとあらかじめ伝えていただけたのだ。なのでそこのBARは結果的に断念という形になった。
しかしお酒を介して人とお話しする職業をしてみたかったので、色々話した結果ホストクラブの体入行ってみたら?ということになった。
ということで、ホストクラブの体験入店をすることになった。
HA?
待って、そっちの方がよっぽど怖くない?
と思うのが普通。
けど、井上は、簡単におだてられるし、簡単に信じてしまう。
大丈夫30歳越えててもおじさんなんかじゃない、全然いけるよ、と言われたのだ。
「そりゃ、やるしかないね。」
心の中でそうつぶやいて、井上は、ホストクラブの体入の日取りを決めた。
②へ続く。
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