娘の頭の中の本棚
「もう〜本棚がぐちゃぐちゃになっちゃったじゃん!」
ベッドに転がったまま、不機嫌そうに言う娘。
「本棚」と聞いて最初に見たところは綺麗に本が並んでいる。部屋にある本棚のことではなさそう。
「本棚って何のこと?」
「頭の中の本棚だよ」
頭の中の本棚…童話が絵本のように並んでいることを指すのか、それとも思い出をアルバムにしてしまってあるのか、よく分からなかった。
「本棚には何が入っているの?」
「考えてることが入ってるの」
娘の考えているこのを上書きしないように、最低限の言葉を選んだ。
「考えてることってどんなこと?」
「保育園のこととか、テレビのこととか…それがぐちゃぐちゃになっちゃったの!」
抽象的だと思っていたが、意外と分かりやすかった。
「そっかぁ…。なんでぐちゃぐちゃになったの?」
「頭の中の人がぐちゃぐちゃにしたの」
「どうしたらぐちゃぐちゃじゃなくなるの?」
「綺麗に本棚に並べるの、こっちに保育園のこと、こっちにテレビのこと…」
と左右でニ等分するように、頭の前で手の平を立てた。
「どうやって綺麗に並べるの?」
「明日の朝になったら綺麗になってるかな!」
これはチャンスだと確信して、なかなか目を閉じない娘に寝るよう促した。それでもまだ眠らなかった。眠れない夜の恒例になっているアニメのクイズを出して、「答え終わったら眠る」と言う。
クイズが出題されるまで、娘は横になってブツブツ言っていた。私がクイズを考えていると、また突然言った。
「本棚が綺麗になったよ!」
「もうぐちゃぐちゃじゃないの?」
「うん、頭の中の人たちが本棚を綺麗にした。だからクイズ出して!」
5歳の娘の頭の中には、本棚を管理している人もいるようだった。その人たちが考えていることを整理してくれる、頼もしい存在だなと羨ましくなった。
私も考えを整理してくれる、頭の中の人が欲しい。
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