見出し画像

Intrduction-2 【執筆者自己紹介】8番館を、語り継ぎたい。これからも愛されるゲイタウンのために。

はじめまして。フリーライターの牛島 彩です。
8番館の思い出話を楽しみにしてくださっている方には少々お目汚しですが、連載に当たって、どんな人間がどんな思いで取材・執筆に当たらせていただくかをお伝えする必要があると、当連載ディレクターのクロさんより自己紹介の命を受けました。お付き合いいただければ幸いです。

私は元々、雑誌編集部や広告制作会社に所属し、2000年に独立。その後はフリーライター、コピーライターとして福岡を中心に働いている者です。
そして2015年頃から、生業とは別にLGBT+に関する勉強会や九州レインボープライドのボランティアスタッフ、「結婚の自由をすべての人に訴訟(通称・同性婚訴訟)の民間応援団KOEの呼びかけ人など、アライ※としての活動をしています。その中で出逢った住吉のバー「ブギ」のオーナー・クロさんと、このたびnoteを立ち上げることになりました。

よろしくお願い申し上げます。


『博多ゲイバーはじめて物語』
立ち上げの経緯。

クロさんは以前、ゲイタウンのフリーペーパー『season』の編集・デザインに携わっていて、それに掲載する予定で、2012年におかあさんのインタビューを試みています(インタビュアーは、当時Love Act Fukuoka※※代表だった牧園祐也氏)。

クロさんが編集、デザインに携わっていた2007年〜2012年当時のフリーペーパー「season」。Love Act Fukuokaより季刊で発行。ゲイ関連スポットを網羅したタウンマップや、HIV啓発関連の記事、イベントの紹介などが掲載され、ゲイバーやゲイショップに設置されていました

が、発信のタイミングが合わず、そのインタビューは日の目を見ないままクロさんは『season』の制作から離れることになり、牧園氏もLove Act Fukuokaの代表を離れたことで、残念ながら、この貴重なインタビューは長くお蔵入りとなっておりました。

ところが近年、クロさんがPCデータ整理中に、約10年ぶりにこのインタビューの文字起こしデータを発掘。

改めて読み返したクロさんは、「ここに、今に伝えるべき貴重な話が詰まっている」「これは他にない、書籍化に値する価値がある内容では?」と考えたそうです。そこで、当時インタビューをしてくれた牧園氏にその想いを伝えたところ、「私もあのお話はぜひ残すべきと感じていて、データを探していました。ぜひ活用してください。印税など権利は一切要求しませんから(笑)」と、大変前向きなお返事をくださいました。

プロのデザイナー・ディレクターであるクロさんは、これを皆さんに読んでいただける形に整えるためには、やはりプロのライターの手が必要だと感じたそうです。
そこで、それができるライターはいないか?と考えた時に、はたと思い当たったのが、ありがたいことに私、牛島だった、というわけです。

クロさんとの出逢い、
Be My Friend! LGBT+立ち上げへの協力。


私とクロさんとの出会いは、2015年に遡ります。
私はそれよりかなり以前から、LGBTの方々が抱えるさまざまな問題について、自分にできることはないかと長年考え続けていました。そんな中、偶然、本業のコピーライター(その時のお仕事は、ラジオ番組の制作でした)のお仕事の現場で、チームリーダー的存在であったトランスジェンダー当事者の方と仲良くなったのです。わたしはその方を、初対面の時から大好きになり、仕事が終わると、二人で食事に行くほどの仲に。今もずっと親しくさせていただいています。

その方はクロゼット※※※トランスジェンダー女性で、表向きは戸籍と同じ男性として働いている方でした(現在はオープンリーです)が、わたしは初対面の時からなんとなく、この方は男性として働いているけれど、本当は女性なんだろうな、と感じていました。
そこで、仕事終わりに二人で食事をしていたときに、5年来あたため続けていた「LGBT当事者とアライをつなぐ企画」の話をしたところ、すぐにご自身がトランス女性であることを打ち明けてくれました。

私の考える企画は、当事者の協力なくして実現は難しいと悩んでいたので、彼女がすぐに「それいいね、やろうよ!」と言ってくれたことに、大いに背中を押されました。そこで、その方と二人で「Be My Friend! LGBT+」というイベントを立ち上げる運びとなったのです。
主にゲイムービーなどの性的マイノリティを知ることができる映画の上映会をし、観賞後にはジェンダー・セクシュアリティの分け隔てなく会話をする交流会を持つ、というシンプルなイベントです。

しかし問題は、その会場でした。トイレや、スタッフ対応の問題をクリアできるお店。誰もが心の性を隠すことなく参加し、楽しく過ごせる場を探し始めると、意外とハードルが高かったのです。
行きつけだったお店に相談すると「他のお客さんの目があるから…」とか、「だって女装したおじさんとか来るんでしょ?」という、多分に誤解や偏見を含んだ冷たい対応に、がっかりすることもありました。

困り果てていた時に、仲の良い友人が「良さそうなお店を見つけたよ。プロジェクターがあって、小さすぎず大きすぎない規模のバーで、10名以上なら貸切もできるそうだよ」というありがたい情報をくれました。
まさにそのお店が、クロさんの経営するバー「ブギ」だったのです。私は当時、ブギのある住吉がゲイタウンだということすら知らずブギを訪れて、クロさんに、イベント会場としてこのお店を使わせてくれないか、と相談を持ちかけました。

住吉という土地柄のことも、クロさんのことも何も知らず、のこのこ出かけて行ったわたしは、おずおずと「あのぅ、ご相談があるんですが……LGBTってご存じですか?」と切り出しました。当時はこの言葉すら知らない人が、たくさんいたのです。
いま思うと、釈迦に説法も良いところですが、クロさんは「はい、もちろん」と笑顔で即答されました。

そして、企画の趣旨をお伝えし、会場としてこのブギを使わせていただけないかとお願いしたところ、二つ返事で「良い企画ですね」とおっしゃってくださいました。
それからずっと(最近はコロナ禍でなかなか開催がままならない状況ですが)、Be My Friend! LGBT+のメイン会場は、ブギです。素晴らしい音響で映画を上映してくださり、その後のお食事も、丁寧な手作りのバイキング形式で、参加者の皆さんを、毎回あたたかくもてなしてくださいます。

住吉交差点にあるブギ。週末にはライブやDJイベントが行われるミュージックバーです

今やBe My Friend! LGBT+常連さんは「次回はこの日にやります!」と言うと、皆さん当たり前のように「その日にブギに行けばいいのね?」と言ってくれるほど。Be My Friend! LGBT+はイコール「ブギだ!」と思ってくださるくらい、もうセットになっているんです。今ではJRを乗り継いで遠方から来てくださる常連さんも、たくさんいらっしゃいます。本当にありがたいです。

おかあさんに、逢いたい。
インタビューという追体験で、温もりを感じています。

そんなご縁から、このたび8番館を語る『博多ゲイバーはじめて物語』のご相談をいただきました。かねがねお世話になっているクロさんの、熱い想いを実現する一助になればと、喜んでお引き受けした次第です。
ゲイバーに立ち入れる属性を持たない、そして博多のゲイバー史に関する知識もまるでないわたしが、本当にお役に立てるだろうかとの不安を抱きながらの出航でしたが、牧園氏の(2012年に行われた)丁寧なインタビューを読み、おかあさんゆかりの方々のインタビューをさせていただく中で、聴いたこともないおかあさんの声が脳内で自動再生され、お逢いしたこともないおかあさんの魅力に取り憑かれる、あたたかい感覚を味わっております。

素敵なお仕事をご依頼いただいたと、いま改めて感謝しております。
これは、アライのわたしにだからこそできる仕事だと信じて、まごころを込めて、進めて参りたい所存です。


クロさんの熱いディレクションをいただきながら、真摯に進めて参りますが、私の無知ゆえの失礼がありましたら、申し訳ございません。お気づきの点は、どうぞ何なりとご指摘くださいませ。
皆さまのお力をいただきながら、このnoteを完成させることができますことを、心より願っております。

どうか応援を、よろしくお願い申し上げます。
8番館を、おかあさんを知る方の取材協力も大募集中です。ご連絡いただけますれば幸甚です。もちろん秘密厳守、顔出し・本名NGなど何なりとお申しつけくださいませ。


※アライ=ally。「アライアンス=味方・仲間・同盟」の略。社会的マイノリティ、主にLGBTを理解・支援する人、寄り添いたいと願い、男女二元論に基づかない考えを持ち行動する人を指します。本人が性的マイノリティかどうかは問わない語です。

※※Love Act Fukuoka=性的少数者によるHIV予防啓発を目的とした非営利団体。

※※※クロゼット=自分が性的マイノリティであることを、表向きには隠している人を指し「クロゼットゲイ」「クロゼットトランス」などと表現します。周囲にカミングアウトしている人を意味する対義語は「オープンリー」ですが、それがイコールすべての人に公表していることを意味するわけではなく、ごく親しい間柄の人にだけ打ち明けている場合が圧倒的に多い。ある人のセクシュアリティを本人から知らされたからと言って、勝手にそのことを第三者に伝えることは「アウティング(=言いふらし)」と言い、決してしてはならないことです。カミングアウトをされた際は「他に知っている人はいる?」「隠しておきたい人はいる?」と、ぜひご本人にご確認いただきたいと思います。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?