眠れない夜に
5人目の子どもを産んで退院したその日から、住んでいるこの場所は、海と山に囲まれた、自然豊かな場所。
車で10分ほど走ると、そこには海水浴場や波止場がある。
生まれたての赤ちゃんのお世話は慣れているが、睡眠不足には陥りやすく、世間とは少しばかり距離を感じ、外出を控える日常はストレスを溜めやすい。
私は、赤ちゃんをチャイルドシートから降ろすと、まだ小さなその体を横抱きにして、駐車場を後にした。
向かうは波止場。真っ暗な闇に包まれた海が、波の音を鳴らし、潮風が私と腕の中の赤ん坊をそっとなでる。
普段、漁などで使われている船が優しく波に揺れながら、のんびりと過ごしていた。外套がちらほらと海岸を照らしている。
まだ4月が始まったばかり。少し寒いが、この景色を見るとなぜか安心した。赤ん坊も腕に抱かれ、眠ってくれている。
空には無数の星が瞬いている。真夜中のこの時間帯は人が誰もいない。嫌なことがあって涙が溢れようとも、気にするものはない。
ただそっと、海と船だけが私たちを見守っている。
あの光景は、いつまでも忘れない。
あれから3年。隣でだだをこねるのは当時、赤ん坊だった子。またあの海に連れて行こうかな。今度は明るい昼間に。
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