承認欲求のワクチン・本研究

 今回はほぼ昨年から本年にかけての研究結果、承認欲求に関する最新の総括である。よろしければお付き合い頂きたい。

 わたしがこの研究に取り組もうと考えた、最初の動機としては以前、承認欲求が満たされない事で悩んでいる(ように見える)人の相談に乗る際に相手から「あなたにはわからないよ」という風に何度か言われた事である。そこで、承認欲求というものを識り、対処方法を探るには、自分自身が先ずそれを経験しなければならない、向き合わねばならないと考えた。
だから経験する為に、様々な手段を試した。それはおそらく成功し、呼び起こしたのか、或いは新たに芽生えたのかはわからないが、少なくともそれまでとは違う方向性の感情として、承認欲求活性化させる所までは、うまくいったはずである。問題はそこからだ、途中、様々な不確定要素が重なったとは言え、明らかに制御不能に陥った。制御する為の準備が不十分であったし、己の無知が顕在化したとも言うべき状況であった。
自ら作り出した状況に苦しむのは自分の所為、自業自得、身から出た錆なのでそれは構わない。だから自分自身を実験台にすれば影響を受けるのは自分だけで、人に迷惑はかからないだろうと考えていた。
しかしそれは大きな間違いであった。感情はまさに核分裂連鎖反応で、わたしは実験中に臨界事故を起こしたという事である。
自己中な考えや身勝手な行動は、最後まで自分が責任を負わねばならない。研究や実験であれば猶更の事、周辺に迷惑をかけないようにするのは当然だ。わたしがくっつけたデーモンコアは、自分の手で払いのけなければならない。命に代えても。それは研究を行った者の責任であり、義務だ。
それでもし、事故の被害を受けて、辛い思いをしたり、傷付けてしまった人が居られるのであれば、本当に申し訳ないし、もしわたしを批判したり、侮辱する事で償えるのであれば、喜んで受けたい。いえ、どうかそのようにして頂きたい。

さて、研究を進める以前、わたしは反応や評価といったものを酸っぱい葡萄だと考えていたのだが、わたしにとっては承認欲求とそのシステム自体が、葡萄の実であった。いや、それは実は葡萄ではないのかもしれないし、酸っぱいとも限らない。それは時に毒となるが、場合によっては薬にもなるようだ。あの時「あなたにはわからない」という風に言われた理由が、漸くわかったかもしれない。そう、以前のわたしには承認欲求が無かったなんて事はなく、よく知らなかった、或いは知ろうとしなかった。見ようとせず、無視していただけだったのだ。欲求だとか負の感情が面倒くさいからと言って、無視したり誤魔化すだけでは、克服する事はできない。
それは心の免疫とでも言うべきもので、普段の免疫力が高ければ高い程、破られた時(または意図的にウィルスを入れたような場合)には後手後手に回ってしまうという事でもある。そう考えると、結果的にわたしの研究はワクチン(の治験)のようなものであったのかもしれない。
つまりは承認欲求に苦しんでいる状態というのは、免疫を獲得している真っ最中なのだ。それで恥じる事はないが、精神的な迎撃態勢を整えるに越した事はない。それは心構え、覚悟である。敵を知り己を知れば百戦危うからず。結論を申し上げれば、このワクチンは副反応もかなり大きい分、よく効くと言えるのではないだろうか。
また、先日掲載した通り、承認欲求のシステムを研究する中でマイナスの承認欲求への気付きがあったし、何より、それを経験した事で承認欲求が満たされない場合の具体的な解決策(言わば抗体)ができた。それはまさに、ただただ努力をしようとし続け、フローに至ろうとする事である。それをある程度能動的に発生させられるようになった事は大きな成果であったと思料する次第である。
他方、劣等感や受けた屈辱をエネルギーに変換するという考え方もあるようだが、自分の場合は少しアプローチが違うように感じられた。他者との比較は飽くまでも結果の分析に過ぎず、傲慢になり過ぎないよう自己肯定感にブレーキをかけ、過信を防止し謙虚さを失わない為のものであり、そもそも己を満足させ(欲求を満たし)得るものではない。況してやそれで消耗していては元も子もないのだ。努力と結果は切り離して考えつつも全て次へのとする。その心掛けと日々の覚悟、そして感謝を以てすれば、如何なる状況にも動じず、逆境をも楽しめる強靭な精神的筋肉(メンタル・マッスル)を我が物とする事ができるはずだと考える。

 SNS全盛のこの時代、コミュニケーションの中で肯定される事によって、承認欲求を満たそうとする人々が溢れ返っている。一度囚われれば容易には抜け出す事ができない、とても正気ではいられない、底無しの欲求は苦悩の無間地獄だ。そんな中で己の欲求と心の声に向き合うという事は、まさに精神的ワクチン接種と言えるのではないだろうか。
この研究がほんの少しでも、承認欲求や劣等感に苦しむ方々の助けや参考になれば幸甚である。

ここまで読んで頂き感謝。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?