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『未来のミライ』を観て『キングダム』に思いを馳せる 2021/7/19の日記

・『未来のミライ』(2018,細田守)を観た。そして、その感想と考察である!

・細田守監督最新作『竜とそばかすの姫』が上映されていることで、それを観る前に、唯一観ていない作品が『未来のミライ』だったので観た。という感じだ。

あらすじ

・物語は、主人公・くんちゃん(上白石萌歌)の妹・ミライ(黒木華)が誕生する場面から始まる。舞台は大きな木が中心にそびえるお家。

・くんちゃんはまだまだ甘えたい盛りの男の子。世話を焼かれる妹に嫉妬をして、ミライのことを「好きくない」と感じるように。

・そんなくんちゃんが、庭にそびえる大きな木を媒介にして、過去、そして未来の家族と遭遇することで、「兄」としての自覚を含めて成長していく。

映画の主題を考える

・以上が物語の筋だ。話を動かすのはくんちゃんの「成長」である。僕にはまだ子供がいないから分からないが、子を持つ親ならきっと共感して涙を流すのかもしれない。

・それに加えて、公式HPには《「家族」と「命」の物語》と記載がある。たしかに、両方とも欠かすことができない主題だ。

・特に「家族」について、それは私たちが一般的に「家族」と考えるものを超えて、より広い意味でそれを捉えているように感じた。

・家系の「インデックス」としての大きな木。それはくんちゃんを生み出す長い繋がりを表現していた。私たちが一般的に想起する「家族」は、祖父母から孫くらいのものだろうが、本作はそれを超えた「家族」の存在を提示して、「彼らがいなかったらくんちゃんはいない」とまで言い切るのだ。

『キングダム』との類似性

・どこかで似たようなものを読んだ気がして思い浮かんだのが、『キングダム』だった。一見すると真逆に位置する作品のようだ。しかし、『キングダム』の「蕞」の攻防戦を思い起こすと、政が民衆に対してこう言い放つ台詞がある。

最後まで戦うぞ秦の子らよ

政は先祖代々で作り上げた秦という国、そしてその中で生きる民は皆「家族」であるという意味を込め、大王自ら「秦の子」と呼びかけることで民衆を奮起させるのだ。どこか危険な匂いがするこの演説は戦国時代ならでは、だ。

・『キングダム』の政が作中で伝えようとしたメッセージが、『未来のミライ』では現代的に優しく込められている。そういう意味で、僕は本作にナショナリズム的な要素をすごく感じた。それが道徳的に、分かりやすく、そして優しく伝えられている。

・現代人が忘れていることだ。国、そして平和を甘受する私たちは、とてつもなく大事なモノを失おうとしている。真っ直ぐに伝えられると重苦しくて、危険な香りがプンプンするメッセージをこうした形で伝えた本作は、とても良い作品だと思った。

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