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鍼灸における「メディア戦略」を考える

 以前よりテレビや雑誌、新聞などの媒介で鍼灸が多く取り扱われるようになったと思いませんか?
 現代において教育プログラムやマスメディアを通して、物事に対するイメージというものは、以前より容易に変わり得る可能性が指摘されています。

 中田氏の報告によると、「日本の5大新聞(朝日、毎日、読売、産経、日本経済)とNHKテレビが伝えた『鍼灸』を含む記事の数は1980年代から2000年代にかけて15倍に増加した」と言います。しかし、2009年の1年間の記事・報道の内訳は以下の通りでした。

「商品・学校・イベント」が38%と最も多く、「事件・事故」の23.9%がこれに続き、「臨床での鍼治療の活用・応用」が18.5%で3位であった。「科学的根拠」に至っては3.3%に過ぎなかった。

中田健吾. 医道の日本. 2010; 800号記念特集号: 76-8.

 一方、米英メディアにおける鍼灸関連記事の内訳についても報告しています。

「臨床での鍼治療の活用・応用」が85.8%で最も高く、次いで「科学的根拠」が76.1%であった。

中田健吾. 医道の日本. 2010; 800号記念特集号: 76-8.

 日本と米英の違いは歴然であり、日本のメディアは鍼灸のエビデンスに関する情報をほとんど伝えてこなかったことが分かります。しかし、ここ数年、NHKをはじめとして鍼灸の「臨床での鍼治療の活用・応用」、「科学的根拠」についても取り扱うケースが増えてきており、今まで鍼灸を認知していなかった、あるいは認知はしているもののどういったケースで鍼灸を活用・応用すればいいのか分からなかった層に対して効果的に作用している印象があります。つまり、鍼灸の本当の姿と社会が抱いているイメージとのギャップを埋める架け橋となってくれるのがメディアの役割だと考えられます。

 以下はNHKが取り扱った内容を一部掲載させていただきます。

 ここ最近では、NHKの山本高穂氏(NHKメディア総局 第2制作センター チーフ・ディレクター)が『東洋医学はなぜ効くのか ツボ・鍼灸・漢方薬、西洋医学で見る驚きのメカニズム(ブルーバックス)』を発刊しました。こうした事実を鍼灸師でない影響力のある非専門家の方が情報発信してくれることに本書の本当の価値と意義を感じました。

 9月27日(金)からAudibleにブルーバックス「東洋医学はなぜ効くのか」がリリースされます。

 また、お天気ニュースなどのテロップや記事、ドラマや漫画の監修なども鍼灸師が担当するなど、今まさに鍼灸におけるメディア戦略が活発化しています。

 当院も参加予定のこれから始まる筋骨格痛を対象とした鍼灸治療の多施設共同研究の情報も毎日新聞が掲載してくれています。

 メディア戦略を通して、鍼灸の未来が変化し始めています。

 ちなみに私も小学館をはじめとする雑誌の監修をやらせていただいてます。

すこしだけ生き返る

 私の兄もNHKに何度か出演して、精神疾患に対する鍼治療の研究成果を発信しています。

東洋医学ホントのチカラ
FRONTIERS
あしたが変わるトリセツショー

最後に

 メディアを通して鍼灸が伝わると、事実と異なるイメージを修正することができるだけでなく、鍼灸受療の動機や受療時の気構えも大きく変わってくるはずです。イメージは、心理的メカニズムを介して実際の治療効果に影響も与えるので、鍼灸臨床の観点からも重要なものと考えられます。鍼灸師側も社会に対して積極的に情報を発信することが求められていると感じます。
 大切なことはとにかく情報を発信して鍼灸の認知度を向上させることなんだと思います。その情報発信は短期・長期的にも作用します。次世代の鍼灸師が今よりももっと輝ける時代になれるように、情報を発信する側も「利己的なものではないか?」や「情報を発信することで悪影響を及ぼさないか?」など道徳的な観点やネットリテラシーの高さも求められていると思います。

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