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乾杯

松本さんとこの人志君がやってはる「酒のつまみになる話」って番組が好きで酒を呑みながらよく観る。自分も参加して色々を考えるのが楽しい。今度友達にこれ質問してみようってテーマを思い浮かべる。今まで知り合いや友達、出会った人の中で1番多い名前は何ですか?とか聞きたい。そこから派生して1番変わった名前は何ですか?も聞きたい。

私の中で1番変わってる名前は真育と書いてマイク。彼を苗字で呼ぶ人を私は知らない。小学校の同級生でサッカーチームも一緒。槇原敬之似の彼は日本人で両親も日本人だが母親が家でECCの教室を開いており、きっとマミー(マイクがそう呼んでいた)がアメリカのフレイバーを名前に落とし込んだんだと思われる。

マイクがそう呼んでいたと書いたけれどマミーがマイクにそう呼ばせていた可能性が高い。マイクはキーパーだったけれどアンミカ似の派手エネルギッシュなマミーは試合中にラインズマンよりも縦に走ったし監督よりも声を出していた。最後の砦キーパーを応援しまくるスタイルは画期的であり溺愛の証だった。

マミーは愛に溢れており私の事を「直ちゃん」と親しみを込めて呼んでくれていた。私がシュートを決めたりすると大きな声で「直ちゃん凄い!」と叫んでくれた。シュートを決められる側のキーパーマイクの責任やプレッシャーが軽減される喜びも含まれていたかもしれないがマミーは少女の様に無邪気で明るかった。

そんなマミーだから小5の時にチームメイト達を誘ってマイクの誕生日会が開催された。ケーキやチキンが乗った豪華な机へに辿り着く前に各々が入場料みたく玄関でプレゼントを渡してから各々がマミーからお返しを頂くスタイルだった。横浜フリューゲルスのトランプだった。ガンバかヴェルディが良かった。

当時、チームに新加入したヒデ。彼は山口県の田舎から大都会高槻市にやってきた。ヒデはいつもヘラヘラとにゅるにゅるとしており純粋なのか野暮なのか照れてるのかアホなのかボケなのかカスなのか僕達もまだ実態をまだ掴めきれていなかった。いつも通りの様子で現れたヒデはプレンゼントを持ってこなかった。

「えヒデ?プレゼントは!?」と玄関でマミーに詰められた彼はニコニコと「気持ちだけ持ってきました」とニヤニヤ答えた。マミーは「考えられへん!帰れ!いやそれ山口県でウケるやつか知らんけど!」とは言わなかったが顎を玄関のスリッパに落としていたし両目にはっきりアンビリバボーと書いてあった。

子供には見せてはいけない血管で、臭いトイレから臭い風呂場のカビをじっと見つめる様な地獄の沈黙で、マミーは呆れながらも仕方なく「大人ですから」といった溜息を奥歯で砕きながらお返しを渡していたがヒデはアンタッチャブル山崎の様にあざすあざすと嬉々がスキップしていた。マミーが「ヒデはベルマーレ平塚やね」と選ぶ余裕は無かっただろう。

そういえば小2。愛がねじれたマミーが私の母親に噛み付いた事があった。「自分の息子の事『直ちゃん』て呼んでるのにウチの息子だけ『マイク』って呼び捨てにするのはおかしい!差別や!」的な。母親に同情する。マイクはマイク。ちゃん付けしたらマイクの威力が落ちる。マイケルジャクソンにさん付けしないのと一緒な訳で。

そういえば小2。馬場と田中とターボーは近所のトリシマポンプという工場横の大きな空き地に集合した。誰かが拾ったライターに興奮しては秘密基地のダンボールを引きちぎって火遊びを速攻した。後から合流したマイクの遠くから聞こえてくる「ポテトチップス持って来たでー!」の声に3人のボルテージは湧き上がった。

マイクが持ってきたのはハニーバターとかいうオカマ味だった。それは崖メタルクウラ100体の絶望。いやポテトチップス言うたらうすしおかコンソメやねん!なんやハニーバターて!遊園地で小さいお子様が乗る様のひたすら緩やかに上下するだけのハチのアトラクションか!いや知らんけど!ちゃうねん!ポテトチップス持って来たでー!ちゃうねん。ハニーバター持って来たでー!や。絶叫マシン乗れると思ってたのにメリーゴーランドや!何がハニーバターじゃ!このアメリカかぶれのオカマ野郎が黙れ! やはりうまないわぁ〜と渋々それを摘んでは夕方が夜になり炎は消滅した。

そういえば小6。全国からちらほら強豪集る大会、GTSカップという大会で我が弱小チーム北摂スカーレットが奇跡的に3位決定戦にもつれこんだ。宮山コーチ(アル中の阪神ファン)仕込みの気合いと根性しかないチームがセンスと技術しかないチームに立ち向かう大一番。ピッチに立つ前にマイクのマミーが写真撮影を行った。「もっと皆んな笑って」とピアニカぐらい大きな歯茎で僕達を促しながらシャッターを切りまくった。

僕達がヘラヘラと肩を組んでピースをしていた所へ谷口監督が現れ「そういうのは試合後にして下さい。皆んなの緊張感が薄れてしまうので」ピシャリと注意した。マミーは「ワッツ⁉︎」その思想全く理解でけへんわと大きく目を見開き憤慨。谷口監督の視点の渋さに感銘を受けながら僕達はきちんと4位になった。

上記のエッセイは私が去年の9月頃にtwitterで書いたものである。

「俺は同じ事は2回言わない!俺は同じ事は2回言わない!」

松本のひーちゃんの魂を胸に刻み、「俺は同じ事を2回書かない!」と誓った。色んな場所で違うものを書いてきたと自負している。誰にも評価されていないけれど。誰かに評価されてたまるかと思っている。俺が俺を評価する。俺しか俺を評価できない。問題を作るのも自分。答えを出すのも自分。昔あんなにも嫌いだった宿題を自分で作って悪戦苦闘しながらも少し楽しんでいるのだから生きてみるもんだなあと思う。

そしてこの度、鉄の掟、鬼の志、「俺は同じ事を2回書かない!」を破った理由は、上記のエッセイにも登場した「ヒデ」と14年振りぐらいに居酒屋(富田の満マル)で偶然再開できた嬉しさからである。嬉し過ぎたからである。

誰しもの中に、「あいつ今頃何してるんやろ、生きてるんかな」と、いつの間にか消えていった消息不明キャラが1人は存在すると思う。現実にもSNSにも居ない人。それが私にとってのヒデであり、なんとなく2度と会う事は無いだろうと予想していただけにその驚きを超える喜びはひとしおだった。

ヒデは相変わらずヘラヘラと楽しくただただ優しい奴で嬉しかった。ヒデも嬉しがってくれた様で「今馬場君と呑んでんねん!」と八重歯が突き出ためちゃくちゃな笑顔で母親ににゅるにゅると電話をしていた。「お母ちゃんも呼ぼうや!」と言った私の提案にヒデは「いいの?邪魔じゃない?」と優しく遠慮がちだったが「ええよええよ絶対来て欲しい!」とゴリ押しした。

私がトイレに行ってる隙に一瞬だけ居酒屋に現れたらしいお母ちゃんは挨拶も無しに1万円札を2枚テーブルに残して去って行ったらしい。

「いやなんでなんで!?そんな渋すぎる事されたら困るんやけど」 「いやオカンが馬場君と呑むなら存分に食べて呑みなさいやって笑」 「いやいやありがたいけどせっかく来てくれたのになんで帰るんよお礼言えてへんやん!」 「痩せてから会いたいって笑」 「へ?」 「最近太ったから馬場君には痩せてから会いたいねんて笑」 「乙女!可愛すぎるやろあの糞ババア!好き!好き!好き!」

最高の呑み会になって嬉し過ぎた。大好きだった今は亡き我らが宮山コーチの話にも花を咲かせて乾杯に乾杯を重ねて偲びに偲んだ。 14年振りにヒデと出会ってから2時間後の14時に、その日22時から出勤である私は「ちょっと熱が出てしまって…」早々と仕事先にズル休みの電話をかけた。 ズル休みなんて14年以上振りだった。ある意味熱が出たのは本当だから嘘はついていないし気にする事は全く無いでやんすよと自分に言い聞かせている私は器用に汚れてしまった大人かもしれない。 しかし今日は呑みたい。結局お昼の12時から深夜2時頃までぶっ通しで呑み続けては久しぶりにゲロを吐くぐらい幸せだった。

楽し過ぎて呑み過ぎて所々、記憶が断片的にしか思い出せないけれど、「馬場君いつが休みなん?」「確定は金曜日」「えっまじで?俺も金曜日確定で休みやねん!」「最高やん!じゃあ金曜日ならいつでもいけるしまた呑もうや!」「うん呑も呑も!」と約束を交わした事はハッキリと覚えている。 でもこの『また』ってなぁ〜永遠と似てるよなぁ〜こういう酔っ払っいの約束ってな〜その場のノリだけで中々実現する事ないんよなぁ〜と内心思ってしまっていた事も。

おわりに。 以下の文章は1月21日(土)に素面でノートにペンで書いたものである。

1月18日(水)、お昼の12時から居酒屋で呑んでいたら偶然懐かしい顔を見つけて時が止まった。彼と会うのは14年振りで、なんとなくもう2度と会わないんじゃないだろうかと思っていた消息不明キャラだった。嬉し過ぎて速攻で仕事をズル休みする事を決断し深夜の2時まで14時間呑んだ。お互い金曜日が休みで「えっまじで?じゃあまた呑みに行こ!」と約束を交わした。

ベロッベロで肩を組みながら歩き、コンビニでいらんもんを大量に買い、最高の夜という毛布に包まれながら私の臭い布団で一緒に眠った。彼が居なくなっていた翌朝の1月19日(木)、「明日どうする?」とLINEが届いていた。「また金曜日」とは言ったけど、こんなにも近々な金曜日の話やったんや。『いいね』と1人で呟いた。

追伸 時々酔っ払い過ぎて夢か現実かわからなくなる事があるけど。小3の時に試合前、宮山コーチがベンチでタカラの缶チューハイを呑みながら「気合いじゃ!根性じゃ!声出していけ!」と叫んでたのはどっちなんやろう。それも現実だったらいいなあ。 「直人!死んでも気持ちで負けんな!」って声が聴こえる。

乾杯。

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