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熱風に揺れる想い

毎日毎日強い日差し、そして熱風が吹いている

その熱風にタチアオイが揺れている

真夏の花だ

地元岩手でも、東京で暮らしていたときも、ここ関西に越してきてもどこかしらで咲いている

繁殖力の強い植物なんだろう
だから街路樹の植え込みからも、アスファルトの割れ目からも生えるんだろうな、と思う

夏になりこの花が咲きだすと複雑な気持ちでこの花を眺める

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わたしが通っていた小学校の校舎は古くてボロボロだった

昭和レトロ、なんてシャレたもんじゃなく、ただただ単に古くてボロいだけ、トイレは汲み取り式、いわゆるぼっとん便所だった
(わからない方はお調べくださいませ)

バリバリ昭和の小学生でもこのぼっとん便所は恐怖だったし、夏になるとやっぱりニオイがきつかった

その残念無念のトイレの窓から汲み取り口が見えた

そしてそこに夏になると大量のタチアオイが咲いていた

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わたしが生まれ育った岩手は北国ということで光はぼんやりと弱く、植物も淡い色合いのものが多かった

そんな北国でタチアオイの花は強い鮮やかな色を放っていて、北国生まれ育ちアホ山ザルのわたしの目には毒々しい色に映った

葉のつき方も花のつき方もジャッキリ立つ姿もとにかくすべてが気持ち悪くく思えたし、咲いてる場所も場所だったので、大嫌い、大大だいきらいだった

…大嫌いなクセにトイレに行くたび窓からタチアオイをジロジロ見ては

「キライ、嫌い、大っキライ!」と思い、ココロの中で密かに『ベンジョバナ』と命名し小学6年間嫌い続けた


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中学生になり、あるとき祖母と父が近所に咲いている花の話をしていて「あそこに咲いてるムクゲなんだけど」というのを小耳にはさみ衝撃を受けた
(祖母と父はタチアオイとムクゲを混同していた)

「あれって、ベンジョバナじゃないんだっ!」(…当たり前デス)


時は流れ子供時代にはお目にかかったことがなかったハイビスカスなんてのがポピュラーになり、鉢植えなんかをホームセンターで見ては「かわいいな、キレイだな」なんて思っていた

思ったりなんかしちゃってたんだけど、はた!と気づいた

「おぬし、あのベンジョバナの仲間ではござらぬか?」

ぺんぽんでした

更にでござる

「この紋どころが目に入らぬくわぁ!」の≪アオイノゴモン≫なんちゅう天下の徳川家の家紋の元、フタバアオイの大きくくくればお仲間だったりする

そんな高貴な植物を『ベンジョバナ』などと命名し嫌い続けたワタス

ハイビスカスは触ることができてもベンジョバナ、じゃないタチアオイは触ることができない

三つ子の魂百まで

じゃないけど、幼い頃の刷り込みは凄いものがあるなぁ、としみじみ


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強い日差しの中、タチアオイが熱風に揺れている

それを見るたび、やっぱり小学校の汲み取り口の景色が蘇り

「うっ」となってしまう

なんだかほろ苦い想いで熱風に揺れる花を眺めるのだ


因みにだけどタチアオイの花言葉は「野望」「豊かな実り」なんだってさ



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