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vol.10イタリア買い付け旅行記「伝説のグラッパ職人を訪ねる」


2001年10月27日(土) 10日目

本日のハイライト
1.「グラッパ作りの神様」ロマーノ・レヴィ(故人)の工房を訪ねる
2.山の中の3星レストラン「グイド」でピエモンテ料理の真髄を味わう

伝説のグラッパ ROMANO LEVI (ロマーノ・レヴィ)

ロマーノ・レビ氏8


昨夜は胃薬のお世話になるほど食べたせいか、今朝はさすがに食欲がない。8時半頃からゆっくりと紅茶とヨーグルト、フルーツだけで軽く済ませた。今日は知るひとぞ知る伝説のグラッパを作る神様に会いに行く。「エスカイヤ日本版」で特集を組まれた人物だ。グラッパ作りに熱心で、ほとんど人前には姿を見せない。

ロマーノ・レビ取材2

そんな「幻のグラッパ」を求めて、イタリア国内のみならず日本からもエノテカ(酒店)のバイヤーが訪れるのだが、そう簡単には販売してくれないのだ。それもそのはず、1本1本丁寧に手書きのラベルが貼られ、いかにも「伝説」の匂いをぷんぷんさせている。

伝説の人と中山氏は大の仲良し。すでに数十回に渡り訪問を繰り返すうちに、今ではこの貴重なグラッパを毎年仕入れることが出来るようになったという。電車に乗り、ALBAの隣町NIEVEに降り立つと、徒歩数分の場所にある彼の本拠地を尋ねてみた。

NIEVEの駅舎2

ロマーノ・レビ酒蔵3


73歳になるという伝説の人物は、想像に反して満面の笑顔でサービス精神たっぷり。多少アル中気味なのは致し方ないとして、握手をかわした暖かい掌からはその人柄まで伝わってくるようだ。敷地内では試飲コーナーも用意され、早速試飲。1本1本大切に育まれたグラッパは黄金色をしていて、深い味わいだ。大量生産のグラッパとは一枚も二枚も上手を行く。アルコール度数は高いがなぜか胃袋がスッキリする清々しさがある。食後酒の定番だ。

ロマーノ・レビ酒蔵5

世界中のグラッパファンが求めてやまない。日本の酒店では、レストランなどの業務用として1本20,000円前後で取引されるという。酒屋さんの店頭では、滅多にお目にかかれないだろう。アルバの町中の酒屋にも数本展示されていたが、現地価格で10万リラ以上(5000円から10,000円)と突出したお値段。希少なグラッパなのだ。そんなスゴイ人に会うだけでも、アルバの町までついてきた価値があったというものである。私は写真を取りまくった。

グラッパ製造部屋3

アルバの町は大賑わい

伝説の人物と別れを惜しみ、アルバの町に戻るともう昼過ぎ。今日も夕食に備えてなるべく昼食は軽く済ませようということになり、地元の人で大賑わいのバール"Vincafe'(ヴィンカフェ)"へ。ここでパニーニと白ワインで、軽い昼食。ワインを飲む人のために用意されたおつまみがまた美味しくて、ついつい食べてしまった。

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とくに猪肉らしい生ハムが超うまい。周りではスパゲッティだけで昼食をとる人も多く、それもまた美味しそうだ。明日はスパゲッティを注文してみようかな。

明日の日曜日までアルバ名物「(白)トリュフ祭り」が行われるため、町は渋谷のセンター街のように混雑を極めていた。洋服屋でもなんでも、ショーウインドゥには必ずワインが一緒に飾られている。もちろんトリュフは街中の食材店には必ず見かける。まさにトリュフ一色に彩られた期間なのだ。

トリュフ独特の香りがぷんぷん匂う会場で、瓶詰めされた加工品を手に入れた。日本で買えばきっとこの数倍の値段で売られていることは間違いない。せっかく本場のきたのだからと、お土産に買い込みホテルに戻る。トリュフ入り「はちみつ」まで作られているのには少々驚いた。日本ではほぼ、みかけたことがなかったのだ。

アルバ産土産物1

"GUIDO DA COSTIGLIOLE" (グイド・ダ・コスティリオーレ)

美食続きの旅も、いよいよここでクライマックス。最後は奮発して、高級レストランで夕食だ。アルバの町から、ベンツのハイヤーに乗り、25分ほど走ったASTI(アスティ)の街に近い村の中にあるこのレストランは、ピエモンテ州ではナンバー1の名店だそうだ。

グイド店内2

イタリア国内でも10本の指に入るといわれるリストランテ。中山氏によれば、今をときめくイタリア料理界を牽引するヴィッサーニ氏の経営するリストランテや、伝説化したリストランテ「エノテカ・ピンキオーリ」に並ぶクチーナ・ヌオーヴォ(新しい料理スタイル)の旗手だそうだ。

期待に胸を膨らませ、おごそかな地下のダイニングルームへ。日本人の若者が2名修行中だというこのリストランテ。実は素晴らしいワインやグラッパをもっていることで有名である。とにかくイタリアの国内でも売られていないような、地元のいいワインが飲めるのだ。

グイドのワイン

1997年もので"GRIGNORE"という赤ワインをいただいた。アルバのワインである。これは、イタリア国内でも日本でも市販されていない。まだ熟成は少ないが飲みやすい。残りはホテルに持ち帰り飲むことにした。

グイドの料理は自分が語るには少しばかり言葉足らずになりそうなので、写真での紹介のみにとどめたい。いずれも山の幸中心(一部ツナのサルサで味付けしたものもあったが)。ジビエも。トリュフシーズンのためかトリュフがふんだんにかけられてながら、お会計はエノテカ・ピンキオーリやヴィッサーニの値段の三分の一という良心的な値段なのであった。ピエモンテーゼ(ピエモンテ州の人々)は地味だが真面目なのだ。

グイドのアンティパスト1

アンティパスト1

グイドのアンティパスト2

アンティパスト2

グイドのアンティパスト3

スープにたっぷり白トリュフ

グイドのパスタ1

タヤリンのパスタにもたっぷり白トリュフ

グイドのパスタ2

秋のピエモンテ・トリュフ最高!

グイドのセコンド1

メイン料理1

グイドのセコンド2

メイン料理2

グイドのソルベット

デザートはソルベ

グイドのロマーノ・レビ1

ロマーノ・レヴィのグラッパたち

人里しれない山中の村に、こんなに素晴らしいリストランテが存在する。恐るべしイタリア料理界。イタリア中どこを訪ねても、こんな具合なのにはただ驚くばかりである。お腹も一杯になり、満足感に浸りながらハイヤーに戻る。愛想のいいおじいちゃんの運転手は、静かに元来た道を引き返してゆく。心地よい揺れに不覚にもウトウトと浅い眠りに落ちてしまった。ピエモンテの夜はひんやりと、深い霧に包まれ神秘的な光景なのだった。

グイドへのタクシー3


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